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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第一章《TS転生しちゃいました!》

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第40話《王威》

 夜の王都。

 王城から遠く離れた屋敷街の一角で、空気が一瞬震えた。

 見えない衝撃が、闇を薙ぐように広がる。


 “それ”は音もなく、だが確実に存在を主張した。

 黒衣の私兵達は悲鳴を上げる暇もなく、全身を硬直させて地に伏した。

 呼吸が荒く、喉の奥で言葉にならない呻きが漏れる。


「っ……な、なんだ……これは……!」


 体が動かない。

 恐怖が骨にまで染み込み、思考を掻き消していく。

 目に見えぬ圧力が、魂そのものを押し潰そうとしていた。


 ――“王の前に跪け”。


 そんな幻聴が、脳裏に直接響いた気がした。

 それは威圧ではない。

 威光だった。

 絶対の格差を突きつける、“支配者の呼吸”。



 屋敷から少し離れた、王都北区。

 厚いカーテンで覆われた一室に、慌てた足音が響く。


「だ……大臣……報告を……!」


 男は額から汗を流しながら、震える声で言葉を搾り出した。


「我々の部隊が……全員、膝を折りました。攻撃された形跡はなく、ただ、恐怖だけを植え付けられ……!」


 ロスルド大臣は手元の書類を止め、ゆっくりと顔を上げた。

 炎の明かりが瞳に映り、ゆらりと揺れる。


「……“恐怖”だけ、か。見えない圧……意識を奪われるような……」


「は、はい。まるで、“王”の前に立ったような……」


 その言葉に、ロスルドの眉がわずかに動いた。

 掌の上でペンを転がしながら、低く呟く。


「……“王威”。」


 机に指を立て、トントンと軽く叩く。

 静寂が落ちる。

 男は息を呑んだ。


「あの執事か……」


 ロスルドは口角を吊り上げ、低く笑う。


「ふん……流石、元暗部の頂点。だがな――私も、ただの官僚ではないぞ」


 書類を握り潰し、蝋燭の炎を吹き消した。

 闇の中に、微かに紫の魔力が滲む。



 そこへ、背の低い学者風の男が扉を叩かずに入ってきた。

 灰色の髪に、金縁の丸眼鏡。

 フェルネ――宮廷顧問官にして、王の秘書的存在。


「ロスルド殿。お顔が怖いですぞ。また胃を痛めますよ」


「フェルネか。こんな時間に何の用だ」


「例の赤子の件です。現在の技術では取り除く事が不可能な、死灰の毒を治したという……あの子。少しばかり、私も興味がありましてね」


 その声は柔らかいが、瞳の奥には一瞬だけ鋭い光が走った。


「……貴様、まさか“調べる”気か?」


「学者の性分です。――本当に“奇跡”等という神域の力が存在するならば、学術的にも放ってはおけません」


 ロスルドは鼻を鳴らし、椅子を回して窓の外を見る。

 夜風が帳を揺らした。


「勝手にしろ。だが、深入りはするな」


「ふふ。ご忠告、ありがたく」


 フェルネは軽く頭を下げて部屋を出ていく。

 扉が閉まる瞬間、ロスルドは小さく息を吐いた。

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