第22話《優先》
《時計》の数字を睨みながら、ナユは思考を巡らせていた。
一日一回の《願い》。
昨日は桶を軽くして母を助けた。
だが、これで良かったのだろうか。
――いや、違う。
両親の健康。
村の食糧事情。
怪我人や病人への施し。
自分の将来に必要なスキル。
どれも大事だ。
けど一日に一回しか使えないなら、優先順位を決めるべきだ。
脳内に浮かぶ《メモ》のページを開く。
三つのフォルダに、それぞれの優先事項をメモしていく。
《家庭》
・両親の体調を最優先。
・過労や怪我は即対応する事。
《村》
・食料の確保と分配ルール。
・見張り番の強化。
《自分》
・スキル候補を整理。
・学べる環境を整える。
――これで三分野。
でも毎日全部に願う訳にはいかない。
だから今日の願いは「一番緊急度が高いもの」に使う。
サラリーマン時代に叩き込まれた段取りが蘇る。
緊急度と重要度で分け、緊急かつ重要な事を最優先。
その次に重要だけど急がない事。
あとは後回しでもいい。
――よし、これだ。
家庭・村・自分。
まずは家庭、次に村、最後に自分。
毎日チェックして、トップの優先度に願いを使う。
母の腕の中で「あー」と声を出しながら、ナユは心の中で満足げに頷いた。
サラリーマンが大切にする報連相の裏には、常に優先度があった。
それを異世界でも取り戻したのだ。
「今日の記録:《願い》の優先度を決定。家庭・村・自分に分類し、毎日トップを選ぶ。これで迷わず使える……日報完了。」




