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アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第一章 紅月の封印

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第13話:太陽の紋章

 闇が完全に消えた森は、まだ息をひそめたままだった。


 アーヤは、ミラを抱き寄せたまましばらく動けずにいた。


 「アーヤ、ミラの具合はどうだ……」

 

 グレイの起こした火の灯りと温もりがあたりを包む。


 アーヤは震える指先でミラの頬に触れた。指先の感触は、まだ冷たい。

 ミラの呼吸はかすかに安定してきたが、まだ顔色は青白く、唇の色も戻らない。


 「……温かさが、足りない……何かもっと温めるものが必要だわ」


 アーヤは辺りを見回したが、夜の森の真ん中で、人肌を温めるようなものは見当たらない。


 「ミラ、ちょっと待ってて。」


 アーヤは自分が着ていた服を脱いで、やさしくミラを包んだ。


 「ミラ……頑張って……」


 アーヤの白い肌が月の灯りで輝く。

 ミラのことを思うと、恥ずかしさなど気にしてはいられない。

 アーヤの細身の体は、乳房を覆うもの以外があらわになっていた。


 「アーヤ、その肩の紋章は……」


 グレイは、目のやり場に困る中、アーヤの右肩に紋章が刻まれていることに気づいた。


 「あっ、これは生まれた時からある痣です。痣にしては模様みたいになっているので、実は気に入ってます」


 グレイはアーヤが痣という模様に見覚えがあった。


 「アーヤ、もしかしたらその痣の形……昔からアルディナに伝わる太陽の紋章に似てるな……」


 「太陽の紋章……?」


 アーヤは驚いたような顔でグレイを見つめ、返す言葉がみつからない。


 「あぁ、『太陽の神子は魔を封じる力が宿る』という伝説がある。もしかしておまえがその……」


 アーヤはグレイの言葉を受けて、自分が伝説に関わるようなものだとは、まったく信じることができなかったが、何かが繋がったような感覚に襲われた。

 

 「そういえば、昔、わたしのおじいちゃんが言ってた」


 「何と言ってたんだ?」


 「『太陽に仕えるものがアルディナを守る』んだって」


 「!?」


 グレイは驚いたような顔を見せた。


 「何か関係あるのかしら」


 「さっきの精霊のペンダント、そしてその紋章、もしかしたらアーヤ、お前は"封印の鍵"に関係があるのかもしれん……」


 「そんな……」


 アーヤは少し下を向いて黙り込んだ。


 「……まぁ、この先を進めばわかることさ」


 ミラはアーヤの施しにより、体の状態がよくなってきていた。


 「よかった。顔色がよくなってきてる……」


 「アーヤの気持ちが伝わったな……」


 「ミラの強い意志が勝ったんです」


 アーヤの胸の奥で、まだ熱が残るペンダントが微かな光とともに小さく脈打っている。


 「リューネ……もう少し、もう少しだけ力をちょうだい」


 ペンダントにぶらさがった緑色をした石を握りしめると、その温もりがゆるやかに広がった。


 ――すると、耳元でかすかな囁き声が響いた。


 「……アーヤ……まだ、終わってないよ……」


 その声は、確かにリューネのものだった。か細い響きの中に、微かな不安が混じっている。


 「リューネ……? あなた、まだそこにいるの?……」


 だが声はそれ以上続かず、ペンダントの鼓動もゆっくりと静まっていった。


 風もなく、葉の擦れる音すらしない。雲一つない満月の夜は、その甘いようで神秘的な匂いだけが、濃く漂っている。



「アルディナの魔力 第一章 紅月の封印」お読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けております。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしております。

                   Z.P.ILY

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