表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルディナの魔力  作者: Z.P.ILY
第一章 紅月の封印

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/107

第11話:精霊の贈り物

 「ミラ!ミラっ!」


 「ダメだ……どうやっても剥がれない……」


 アーヤとグレイは、まるで生き物のように絡みついた影を、ミラからむしりとるように取り払おうとしていた。

 

 薄い月明かりが緊張感を高める。


 「っ!冷たい……」


 氷のような冷たさがアーヤの指先に染み渡る。


 「ミラ、しっかりして……絶対に助けるからね」


 アーヤの声は震えていた。

 しかし、その瞳には決して諦めない強い意志を宿していた。


 「くそ……!なんてやつだ……」


 グレイは何もできずその場に佇む。眉が険しく寄り、焦りと怒りが交錯する。


 ミラの苦しげな呻きが二人の胸を締めつける。


 「……ミラ!……しっかりして!」

 

 アーヤは大きな声で叫び、ミラの氷のように冷たくなった体を強く抱きしめた。


 影はミラの足元からゆっくりと這い上がり、その姿をますます歪ませながら、まるで意思を持つかのように動き始めた。


 《……ゆめ……喰う……》


 影はミラの「夢」を欲している。


 《……人のゆめ……力になる……》

 

 風も音も消えた森の中で、黒い影の存在が異様な気配を広げ、ミラの力を奪っていく。


 「これは……ただの影じゃない」


 グレイは必死に冷静さを保ちつつも、何もできないもどかしさが恐怖となってその言葉を絞り出した。


 「副長!どうすれば!」


 アーヤの声は切実だった。


 「ミラ、すぐ助けるからね!」


 アーヤは何の解決方法も思いつかないまま、ミラを助けたい一心の言葉を発する。


 「ミラ、頑張るのよ!」


 「副長ーーー!何か、何か策を!」


 アーヤは影の動きに警戒を強めながら、ミラの体を必死に守るように抱きしめる。


 「くそっ!情けない!」


 グレイは自分への不甲斐なさで、気がおかしくなりそうだった。

 

 だが、影は容赦なく少しずつその領域を広げ、森の空気を重く締めつけていく。


 《うぅぅぅぅ……ゆめぇぇぇ……》


 影の呻きとともに、地面の黒い“染み”が広範囲に拡がり始め、まるで森そのものを飲み込もうとしているかのようだった。


 「……ヒュー……ヒュー……」


 ミラの呼吸が乱れ、体温が奪われ、声は弱まり、身体の力がどんどん抜けていくのがわかる。


 「た……助け……て……」


 彼女の声は小さくかすれていった。


 ミラの身体は顔を残して黒い影にほぼ包まれた。


 「いや……いやああっ……!」

 

 アーヤの力を振り絞った叫びが、森の闇にこだまする。


 「ミラーーーっ!負けないで!私たちがいる!大丈夫!助けるから!」


 アーヤは胸が締めつけられなからも、必死に声をかける。


 だが影は冷酷だった。ミラの体から力と意識を吸い取り、体温がどんどん下がっていくのを感じる。その冷たさは死を予感させるものだった。


 「くそ……どうすればいいんだ!」


 グレイの悔しそうな叫びが、むなしく静かな森に響く。


 アーヤはいまにも消えてしまいそうなミラに向かい、声を震わせながら大きな声で叫んだ。


 「ミラーーーっ!ダメぇぇぇーーー! 」


 その言葉が、森の闇を切り裂くかのように響き、アーヤの涙が地面に一粒こぼれ落ちた。


 すると突然、闇の中に小さな光の玉のようなものが浮かび上がり、アーヤの目の前でふわっと膨らんだ。


 アーヤはその光を咄嗟につかんだ。


 「これは……!」


 それは――小さな銀のペンダントだった。


 アーヤが光を手にした途端、すべての闇を切り裂くかのように、ペンダントが激しい光を放ち始めた。


 「お願い!ミラを助けて!」


 すると、ミラを包みこんでいた影が、苦しそうなうめき声を上げ、揺らぎ始める。


 《グォ……グォォ……》

「アルディナの魔力 第一章 紅月の封印」お読みいただきありがとうございます。

 今後の展開や、執筆における参考とさせていただきますので、是非、評価をお願いいたします。

 誤字や脱字がありましたら、遠慮なくフォームよりご報告ください。

 また、本作品へのご意見やご要望につきましては、メッセージ等で随時受け付けております。皆様からの忌憚のないご意見等をお待ちしております。

                   Z.P.ILY

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ