悩みと自覚 -幸風side-
「マスター、私はどうすればいいんでしょう…。」
数日経った日の夜、私はバーに来ていた。久しぶりにバーを訪れた理由は、まだ決まっていない華琳ちゃんへのプレゼントについて。少し前に華琳ちゃんにネックレスをプレゼントして以来誰にもプレゼントを用意することは無かったから、他のプレゼント…となるとアイデアが浮かばなかったのだ。
「ふむ…そのお相手はどんな方ですか?」
「人間の女の子なんだ。龍族の女性にあげるようなプレゼントとは違うでしょう?花は彼女にあげるのとは違う気がするし、でも…って考えたら分からないんですよ…。」
「確かに違うから分かりませんね…。」
「食べ物もあまり作れないから、他にあげるものとなると何がいいかと…。」
「…では、時計にしたらいかかでしょう?」
酒を飲んで若干愚痴っぽくなってきた私に、マスターが提案をしてくれた。
マスターは人間とエルフのハーフで、いつも優しい物腰が人気の初老の男性だ。年齢は近くはないが趣味や考えが近く、よく話をする仲だ。
「時計…ですか?」
「はい、時計なら普段よく使うものですし、プレゼントにはいいのではないでしょうか。」
「ほう…いいですね、そうしようかな…。」
「それと…幸風さんはその女の子を想っていらっしゃるのですか?」
「…えぇっ、いや、そんなことは…!」
そう言っていたずらっぽく笑うマスターに慌てながら答えると、マスターはまた笑いながら続けた。
「はは、すみません。でもお話を聞いているとそう感じてしまって。」
「…いや、でも…多分、私は少しずつ惹かれているんだと思います。彼女、素敵な子ですから。」
「幸風さんが惹かれてしまう子、ですか…気になってしまいますね。そんな素敵な子だからプレゼントも悩んでしまって決まらない、ということですか?」
「はは…情けないものですが、そんなところです。明日は色んな店を回って似合いそうな時計を探しに行きますよ。」
「いいものが見つかるといいですね。…幸風さん、あと一杯いかがですか?この私に、もう少しお話聞かせてくれませんか。」
「また、上手いですね…。じゃあ、もう一杯いただきます。」
私の好きな酒を勧めながらにこにこと笑うマスターに負けて新しい一杯を貰いながら、その日は夜遅くまで色々な話をした。帰る頃にはプレゼントのイメージも浮かんでいて、良いものが選べそうな予感がしていた。




