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華琳の過去4


降り続く雨の中、行く当てのないまま歩いた。投げられた物が当たって出来た傷からはまた花びらが零れ落ちていて、その花びらや痛みが私の存在を確かにしているようで。そんな事にも嫌悪を感じてこのまま死んでしまえばいいのに、とも思った。

それでも生きようと歩き続ける自分が嫌で声を殺して泣いた。

それでも元々身体が弱かった私は長い間歩けなくて、座り込んでしまった。雨宿り出来そうな場所もなく、雨に打たれながら泣いていると、目の前で誰かが立ち止まった。


「お嬢さん、傘も刺さずにどうしたんだい?風邪を引いてしまうよ。」

「…いいんです。私なんて…。」

「…その目は…お嬢さんもしかして、能力持ち、かい?」

「…能力持ちってなんですか。」

「風を起こしたり水を操ることができる人間の事さ。君もそうなんだろう?」

「…きっと、そうです。私、お母さんにもお父さんにも嫌われちゃって、それで…。」

「…そうか。辛かったね…。」


そういうと、その人は私の濡れた髪をそっと撫でた。大きな手に少し安心して、私はそっと目を閉じた。町を出てからずっと歩き続けていたから、暖かい手に触れてやっと落ち着けた。

そんな私を見てその人も安心したのか、そっと声をかけてくれた。


「…今こんな事を言うのも変かもしれないが、ひとまず私の家に来ないか?その様子だと、家の他に行く場所もないだろう?」

「……はい。」

「…歩けるかい?」

「大丈夫です。…ありがとうございます。」


この人ならきっと大丈夫。理由なんてなかったけど、そう思えた。

少し歩いた先の森の近くにその人の家はあった。暖かい毛布と飲み物をくれて、私に気を遣ってくれているのか、何も聞かないで優しく見守ってくれた。

その人は、私と同じ境遇にあった女の人を紹介してくれて、数日後回復した私はその人の家を出た。


結局その人の名前を聞くことが出来ないまま家を出てしまったけれど、いつかお礼をしようと考えている。

もう少ししか覚えていないけれど、確かに覚えているのは、その人がいつも着物を着ていたことと、眼鏡をかけていたこと。

外見しか覚えていないから特定することは出来ないけれど、きっと見つけてお礼をするまで、助けてもらったことは忘れない。私の生きるきっかけをくれた、大切な恩人のこと。

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