華琳の過去3
次の日。外はまた雨が降っていた。じめじめとした空気の中、私は目を開けるのが怖かった。夢であってほしかった。出来ることなら昨日に戻ってやり直したかった。
でも、私を待っていたのは、とても残酷な現実だった。
「…お母さん、お父さん…?どこにいるの?」
家の中には、誰もいなかった。
台所にも、お風呂場にも、寝室にも。どこを探しても、私以外の人はいなかった。でも、探していて分かったことが一つだけあった。お母さんとお父さんの荷物が寝室から無くなっていて。私は捨てられたんだ、と、それを見て知った。
捨てられた。そんな思いばかりが頭を駆け巡って、私はふらふらと家を出た。
外に出ると、そこで待っていたのはたくさんの人だった。その中には昨日助けてくれたおばさんの姿や、いなくなったと思っていた両親の姿もあった。
「悪魔の子だ」「何だあの目は」「気持ち悪い」「怖い」「目を合わせちゃだめよ」
「どうして……っ!」
ひそひそと話す声が聞こえたと思ったら、人混みの中から石が飛んできた。投げられた石は私の足元に落ちて、それをきっかけに たくさんの物を投げられた。中には私に当たる物もあって、とても痛かった。
私は「化け物」なんだ、ここにいたらいけないんだ。
そう感じた私は、部屋着のまま、何も持たずに住み慣れた町を出た。