華琳の過去2
家に着いた私に降りかかった1つ目の不幸は、お母さんから向けられる畏怖の目だった。
「あなた、誰…?」
「え…?お母さん、何を言ってるの?」
「わ、私は…こんな目の子供を産んだ覚えはないわ…!!」
「どうして?お母さん…っ!」
顔を青くして家を出ていくお母さんを、私は呆然と見つめることだけしかできなかった。立ち尽くしながらもお母さんが目について言っていた事に疑問を持ち、洗面に置いてある鏡を見に行った。自分の身に降りかかった、2つ目の異変を知ることになるとは思わずに、ただ純粋に。
元々私の目は、両目ともとても綺麗な黒だった。お母さんから譲り受けた、私も大好きな目だった。
見慣れたいつもの自分が映るだろう。そう思っていた私は目を見開いた。
「え…どう、して…?どうして、目が…っ」
そこには、私が大好きだった真っ黒な目だけではなく、見たことのない、金色の瞳も映っていた。何度瞬きをしても、左目は金色に輝いて、戸惑う私を見つめていた。
私は怖くなって、衝動的に鏡を落とした。変わった自分を信じたくなかった。
割れた鏡の破片を拾って目を見ても変わらなくて。別の破片を拾う時に指先が切れて痛みが走ったが、その痛みより先に私は恐怖で叫んだ。
3つ目の異変。切れた指先から滴っているはずの赤い液体はなく、代わりに真っ赤な花びらが次々と零れ落ちていた。いくら水で洗い流しても真っ赤な花びらが零れてくるだけで、私は自分自身が怖くなって、部屋の布団に籠って泣いた。その日見た夢は、お母さんやお父さんに嫌悪の目で見られ、「お前なんて消えてしまえ」「私の子供じゃない」「二度と私達の目の前に現れないで」と責められる夢だった。