レオナルド・コールドの金
一時間後、レオンが指定した場所へセルマンとクリス、そしてレオナルドが集まった。
レオナルドはクリスを見るなり暴言を吐いた。
「この小僧が、どこまでもしつこい奴だ」
「あんたの本性はそれだ。もう隠すことはないぞ」
三人のもとへ外に見張りがいないか確認し終えたレオンがやって来る。
レオンは携帯を取り出し、セシルに掛けると通話モードにしたまま携帯を手に持った。
「情報は電話先の男が持っている。もし何かあれば真っ先に情報を国に売る」
レオナルドはチップを取り出し、レオンに取引しようと話を持ちかけた。
「それは本物か?」
「あぁ、もちろん!本物だ」
「なら、証明しろ」
「どうやって?」
レオンは机の上にあるパソコンを指差した。
レオナルドはパソコンの方へ向かいチップを差し込んだ。
セルマンはレオンが目をそらした瞬間、銃を取り出しクリスへ向けた。
レオンもとっさにセルマンへ銃を向けた。
「銃を下せ!」
「お前も電話を切り、銃を下せ!」
「情報をもらすぞ!」
「もらせば兄を殺すぞ!」
二人のにらみ合いが続く。
クリスはセルマンに言った。
「お互い静かに終わらせたいだろ?なら、バカなことは止めろ」
「バカ?それはお前達だろ?こんな事をしてまだ正義ぶっているのか?」
「俺達はただ正しいことをしたいだけだ」
「いいか!よく聞け、正しいというのは今ここで情報をもらさず大人しくお前等兄弟を牢獄に入れることだ」
セシルは電話越しでの会話を聞いていた。
「まずは兄貴を解放しろ・・・」
「電話を切るのが先だ」
レオンは「10分後、俺から電話がなければ情報を送れ」と言い電話を切った。
「さぁ、約束だ・・・兄貴を解放しろ」
セルマンは小さな声で言った。
「すまんな」
そう言うと引きがねを弾き「バンッ」と大きな音が鳴るとクリスは地面に倒れた。
「あにぃきぃー!!」
セルマンはレオンに銃を向けた。
レオンはセルマンよりも早く引きがねを弾きセルマンを撃った。
弾は心臓部分に当たり、倒れた。
レオナルドは怯えてその場で腰が抜ける。
レオンはクリスのもとへ駆けつけた。
「あにき・・・死ぬな!死ぬな!!」
クリスは頭を撃たれ、すでに息はしてなかった。
レオンは銃を拾いレオナルドの方を向いた。
チップの認証が終了し、画面に金額が映し出される。
「頼む・・・頼むから殺さないでくれ!金なら全額あげるから」
レオンは目に涙を溜めてそっと近づきレオナルドに銃を向け、画面に書かれている金額を見た。
「俺達はこんな数字に踊らされていたのか・・・」
「頼むから命だけは奪わないでくれ」
レオンの指先には怒りの気持ちが集まり、あとは引きがねを弾く意志だけだった。
レオナルドを殺そうか悩んでいる時、レオンの電話が鳴る。
「なんだ?」
「10分経ったけど連絡がないから・・・で、どうする?」
「兄貴が死んだ・・・セルマンに撃たれた」
「そんな・・・」
「今、俺の目の前にレオナルドとその金がある」
「いいか、殺すな!お前の兄貴ならここで何をするか考えろ!」
レオンは涙を流しながら、レオナルドを睨んだ。
「こいつがいるから・・・こんな奴がいるから・・・」
「駄目だ、撃つなよ!落ち着け・・・」
レオンは携帯を地面に落とした。
「おい、レオン?おい、返事しろ!・・・おい!!」
セシルは必死でレオンに声をかけた。
しかし、今のレオンには誰の声も届かない。
次第にレオンの呼吸は荒くなる。
「たのむから~・・・許してくれ」とレオナルドは泣き崩れる。
今、目の前には求めていた金がある。しかし、その傍には兄貴を追いやった憎く殺したい男がいる。その男を殺せば、この気持ちは晴れるだろう。だが、殺せば人殺しとなりまた世界に再び長い不況が訪れるであろう。
今のレオンがとった行動は銃をレオナルドに向け、そして引きがねを弾いた。
電話で聞いていたセシルの耳もとで一発の銃声が聞こえた。




