家族
「いやまだだ・・・」
クリスはドミニクとフランコを見て言った。
「ここはまだスタート地点に過ぎない。ここから一度地下通路を通り、俺達がいる建物の西側にあるC塔へ向かう」
「C塔は看守の休憩場があるところか?」
「あぁ、そこで一度建物の二階まで行き、B塔とつながっている廊下を通りB塔の地下2階に行く」
「ここから直接B塔には行けないのか?」
「残念だが、構造からして無理なんだ」
「その地下2階に行った後は?」
「ある下水管を通り、表へ上がりフェンスから外へ出る」
フランコは焦りながら言った。
「なぁ!はっ?表へ上がるだと?つまりグラウンドの真ん中にあるマンホールからか?」
「それしか脱出方法はない」
「自殺行為だ!」
「ここに入った時点でもう死んでるさ」
「ここから外までどのくらいかかる?」
「およそ10分ってとこかな」
「いつ決行する?」
「二日後だ・・・二日後の夕方6時の休憩時間が勝負だ」
クリスは一人で先にルートの確認をしに向かった。
その間、フランコとドミニクは話し合っていた。
「お前さんは何故、ここから逃げる気になった?」
「俺の息子は事故に合い、もう長くないんだ・・・」
「何歳だ?」
「9歳だ。まだ若いのに・・・」
「人生というものは残酷だな。生きる必要がある者、生きようとする心がある者に死は近づき、生きる必要のない俺達が堂々とこうして生きているんだからな」
「俺はここから必ず出てやる!息子の命が尽きる前に必ずこの手で抱きしめてあげるんだ」
「殺人鬼とは思えないな・・・」
「俺は殺人鬼なんかではない。たしかに俺は金を借りた相手を殺したが、そいつは不法な返済を俺に要求してきて、俺達家族を崩壊させようとしたんだ。俺は守ろうと必死になり、この手で殺してしまった。俺は妻に捨てられたんだ・・・息子に会えれば、その後は死んでも良いさぁ」
フランコは囚人たちを見ながら言った。
必要な物を同じ受刑者から調達してもらい準備は整った。
二日後・・・ブザーが鳴り、休憩の時間になった。