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5.作業指示の出し忘れに注意しよう(1)

 耕地づくりの大工チーム。

 村の安全確認と食糧確保のための狩人チーム。

 食糧節約と管理のための家事チーム。

 露地栽培に先駆けて未知の種の栽培研究をする農民チームと、観察記録をつける子供研究員たち。


 村人たちには残らず仕事を割り振って、必要な作業指示も出し切った。

 あとは状況を見て都度調整を入れつつも、四月末までの耕地完成を目指すだけ。


 えー、人員の配置忘れなし。手の空いている人員なし。

 細かい作業計画は追って連絡するとして、明日からの作業開始に問題なし。

 食糧収集は初日の魔物狩りの成果を見てから改めて再検討。薪は尽きる前に村解体が間に合うので、しばらく考える必要なし。耕地の建材は、屋敷の庭にある噴水や前領主の石造あたりを砕いて調達する。

 村を狩人たちが使っている間は大工たちに村までの雪かきと建材集めをさせて、狩り側の要請があったら家々の補修や解体に派遣。子供たちはちゃんと作業ができるか心配なので、初日はヘレナをお目付け役にして、家事の優先順位はああでこう。それからあれがこれしてそれしてこう。


 ……………………うん、万事問題なし。

 これにて指示出し終了。お疲れさまでした!



「――――――待ったあ!!!!!!」



 と、執務室に戻って最後の確認を終え、ヘレナの淹れたお茶で一息ついたところで、割って入った声がある。

 誰かと思えば御者モーリス。執務室に来るなんて珍しい。

 いったいなにごと?


「お待ちください、殿下! それじゃあ馬は……馬はどうなるんですか!?」

「馬?」


 血相を変えたモーリスに、私は手にしたお茶のカップを置く。

 どうなる、と言われても、馬はこれからの重要な労働力。特に今後の大工仕事では、ありがたく酷使させてもらう予定だった。

 移動、運搬、地ならし、掘削。朝一番に外に出て、日が暮れるまで労働の日々である。


 とはいえ、そんなことはモーリスもわかっているはずだ。

 馬というのは使役動物。人間のために働いてくれる存在だ。

 都会の金持ちであれば愛玩用も馬を飼うこともあるだろうが、まさか開拓地でただ愛でるだけとはモーリスだって思うまい。馬車馬ベアトリスとフランチェスカはもちろんのこと、本来は騎馬専門の護衛たちの愛馬にも、今後は荷車を取り付けて泥臭く働いてもらわなければならなかった。


 工事が終われば、今度は畑の掘り返しに堆肥の鋤き込みと休む暇はない。

 しばらくの間、馬にとって厩は帰って寝るだけの場所となるだろ――――。


 ………………そういえば、厩のこと忘れてたわ。

 解体したんだったね。それで、春になったらどうするんだと言われていたね。

 なっちゃった、春。どうしよう。


「…………悪いけど、厩の再建はもう少し待ってちょうだい。今年のうちには考えるから」


 こういう時は、必殺先延ばし。

 実際、いつまでも馬を屋敷内に置いておくわけにはいかなかった。

 馬にとっては窮屈だし、エントランスが占拠されているのも不便だし、なにより衛生的によろしくない。ひとまず春の忙しい時期を乗り切ったら、簡素なものでもいいから屋外に馬の居場所を作ってやるべきではあるだろう。


「違います!」


 などと考える私に、モーリスは断固として首を横に振った。

 顔に浮かぶのは、思いがけないほど切羽詰まった表情だ。いくら熱狂的な馬愛好家とはいえ、いくらなんでも厩だけでここまで焦るとも思えない。

 しかし、そうなると他になんの用件だろうか。


 いや、うん、まあ。

 一つ思い浮かんでいるものはあるんだけど、ここはまずモーリスの話を聞いておきましょう。どうぞ。


「馬の食事です!!!!」


 私が促すより先に、モーリスは声を荒らげた。


「もう飼い葉が残り少ないんです! あと何日もないんです!! 人間の食事より、(あいつら)の食事をなんとかしないといけません!!!!!!」


 いや、人間の食事が優先でしょさすがに。

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― 新着の感想 ―
あー、確かに馬の餌も割と無視できん問題だわ(汗)労働力として当て込んでるからなおの事。 さすがに現時点じゃ放牧して「勝手に草食ってろ」はできんし。 ムシロとかの草製品があればバラして食わすのが限界か?
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