857/857
5/7 ナッくーん、こっち向いて?
いつものように、座椅子に根を張った私の前に、ナッくんがやって来た。
いつもなら『ミルク、ミルク』と熱烈に見つめて来るところ……
なんだかなんとなくやって来ただけのようで、顔がこっちを向いていない。私の下の座椅子のあたりをボーッと見ている。
「なっきゅーん、こっち向いて?」
私が言うと、ゆっくりと左右を見回した。
「なっきゅーん? こっち向いて」
またゆっくりと、左右を見回す。
「こっち向いたらミルクあげよう」
左右にゆっくり動いていた顔が、ぴたりと止まり──
ゆっくり、ゆっくり──
ほんとうにゆっくりと上へ動き、こっちを向いた。
かわいいな、このおじいちゃん──
ミルクをあげると急に動きが若々しくなった。





by