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理外、世界の果てにて

「やっと見つけたぜ、”世界視”?

テメエはホンモノか?」


すっかりハイになってるのか口調が崩れている。


この無駄な応答に対応する必要なし。

すぐさま不穏分子を抑止する。


踏み込む。

銃を相手に。


「おォイ!話ぐらいさせてくれよ!」


構えたままの銃口から2,3発の鉛弾が爆ぜる。


それは、まるで舞いだった。

超人的でもなく、必要最小限の動きだけで飛来する死をいとも容易く受け流す。

その歩みは止めないままに。


男が舌打ちする。


既に発泡している弾丸は5発。

38口径のこの拳銃の装弾数は9発。


つまり残弾数は4。


口元がぐにゃりと歪む。

ならばーー。


銃口をさっと別方向へ移す。

自分で動くこともままならない、葵へ。


「いいのか?撃っちゃうぞ…」


銃口が動いた瞬間、葵と男の射線上に滑りこむデスク。

受付用の長机だった。

女性用のため吹き抜けになっていない構造のため、男からは葵が見えない。


「やりたければ。残り4発を無駄にすればいい」


跳びかかっても妨害できる立ち位置にないため、葵を守ることを優先した。

ただそれだけのこと。


「やっぱり見えてるみたいだなァ」


観念してか大人しくこちらに向き直る。


「終わりだ」


そう、告げる。

そのまま葵の元へ歩みを進める。


「なんだとテメッ…!」


甲高い音がホールに響く。

周りに反響しすぎて音の出処がわからない。

周囲に目を向けるが、謎の音はどこからでてきているかわからない。


「くっ、このーーー」


探すのは諦め、銃を構え直す。


ー構え直そうと腕を突き出した時点で、男は瓦礫の下敷きになっていた。


あっけないといえばあまりに唐突すぎる結末。


男は自分が乱射した弾丸が頭上の電灯近くに跳ね、電灯ごと天井が落ちてきてしまい埋もれてしまった。


即死だろう。

楓はその光景には目もくれない。


否、既に見ていた。

楓にはこの結末が右眼に見えていた。


しかし、一つだけ気になることはあった。

自分はホンモノか。


それだけはわからない。


考えても仕方ない、と葵の元へ向かう。


ーーー。


結論として。


瑞希は運良く急所を逸れていたのか命に別状はなかった。

ーしかし、ショックによるものか、記憶がなくなっているという。


葵も時間は必要としたがなんとか意識を取り戻した。

ーしかし、自分の足で歩くことは一生できないという。

俺のせいでこんな…申し訳が立たない。


記憶が戻ったことで両親のことが多少気がかりだったが、先の研究所に乗り込んだ時にあの男によって研究員は殺害されていたという。


その後元々いた世界では特異点による怪物騒ぎもなくなっていた。

全てはあの男による策略だったのだろう。


そしてあの男のせいで全てが滅茶苦茶になってしまった。

元の二人は帰ってこない。


俺もあれ以降人格がスイッチすることはなくなった。

あの男の言葉には気になるところはあったが、今となっては知る由もない。


(ホンモノか…?)


どういうことだったのだろうか。

鏡越しに自分の顔を見る。

今は右眼も正常だ。


「!?」


突然、右眼の機構が動き出す。


ー役目を果たせ。


声ではない言葉が聞こえたような気がした。

そのまま意識が遠のいた…。


ーーー。


「ーーして」


ん…。

寝ていたのか、微睡みの中声が聞こえる。


「いいから、離す」


葵!?

思わず飛び起きる。

起きたところで、寝ていたことに初めて気づいた。

ついでにぬいぐるみを鷲掴みしていることも。


もー、と頬を膨らませる。


「学校、遅刻しちゃうよ」


葵が扉を閉める。

ここはーーー。


周りを見渡す。

俺の、部屋だ。


頭が重い。

寝すぎかーー?


長い夢を見ていたような気がする。

夢を見た後は決まって疲れるが、今日はぐったりしている。


欠伸はでなかった。


ーーー。


「お、これは!チョクリトー!」


マイフェバリットトースト!

これさえあれば朝の気怠さなんか吹っ飛ぶぜ!


「なに、ちょくりとーって」


自分の分を持ってきてテーブルに置く葵。

ちょこんと椅子に座る。


「なにってチョコクリームトーストだろ」


へー、と興味なさげに返事をされる。

…なんだよ。俺が命名したわけじゃないだろ。


留まることを知らない俺のチョクリトーへの食欲は、残り1枚になったところで気づいた。

やべ。瑞希の分忘れてた…。

うるさいだろうな…食べ物に関しては…。


と、そこでふと気づく。


「なんか今日、量少なくないか?」


「そうかな?」


そう言いつつ最後のチョクリトーに手を伸ばす葵。


「ん、もしかしてまだあるの?」


「まふぃもー」


ないよー。だと思う。


「え、じゃあ今日瑞希こないのか?」


しばしもぐもぐする葵。

幸せそうに嚥下し終えると、


「だれ、それ?」


我が妹にしては小粋なジョークを飛ばしてきた。


「あー、ん?そうか、あれだな言い方間違えた」


ここは兄としてジョークで返すのが礼儀というもの。

一つ咳払いを。


「グルメモンストレル、ミズーキはこないのかね」


スペイン風にしてみた。


「……」


すごく、可哀想な感情MAXの目をしている。

わ、笑えないのは教養の違いだからな?

滑ってないやい!


「と、とりあえず。瑞希は先行ったのか。今日ちょっと遅めだもんな」


「お兄ちゃん、だから…」


その目をヤメろ。

全く。


「瑞希さんって、誰なの?」


直感した。

イレギュラーはどうやら俺なのだと。


この表情は本気だ。


「あ、あーなんでもない。スペインのグルメ家だったかなー?」


とにかくとっさにごまかす。

笑って笑って。


ヘラヘラとする俺に葵は変なのーと残し、食器をシンクまで持って行った。


ーーー。


学校へ着くと、瑞希の席には知らない生徒が座っていた。

ハルに聞いても知らぬ存ぜぬ。


帰宅時に買い物がてら瑞希の家も見に行ってみたが…。


何も、なかった。


どういうことなのか。

考えてもわからない。


その日はモツ鍋を作った。

材料は2人分だった。


ーーー。


朝。


昨日早く寝たせいか、いつもより早く目が覚める。

するとなぜか部屋に葵がいた。


話しかけるも反応がない。


「どうした、あおーー」


急にこちらに顔を向ける葵。


ーギギ。


「早くしないと遅刻しちゃうよ」


部屋を後にする。


昨日と寸分違わぬ動き。

ー気のせいか、何かが軋む音がした。


リビングへ降りると二人分のチョクリトー。


昨日と同じ台詞。


学校では同じ授業。


次の日も同じ、次も、次も、その次も。


終わらない。

1日が、終わらない。


ーギギ。


ふと、いつか聞いたあの音が聞こえた。

歯車が噛み合ってないような。


鏡を見てみる。

思えば、初めてかもしれない。


眼。

右眼。

右眼が。

無機質に中の機構が繰り返し動いている。

まるで、機械。


この眼の、せいかーーー。


目をつぶり。

指で、眼球を勢いよく押しこむ。


ーーー。


警報が鳴る。

研究所内はパニックだった。

どこで火の手が上がっているのか、煙が立ち込めている。


あてもなく呆然としていると、隔壁が上から迫ってきた。


「楓!」


瑞希だった。

手を伸ばしている。

隔壁を挟んで二人。


「早く!」


一生懸命に伸ばす。

俺は手を伸ばし、


「ありがとう、ごめんな」


隔壁が人一人通れるかどうか。

これが最後のチャンスだ。


ーその手を、振りほどいた。


悲痛な表情が見えた。

申し訳ない。

そんな表情をさせたくなかった。


ただ、未来が見えてしまったから。

俺はもういい。


立っているのも辛くなってきた。

適当な椅子を見つけて座らせてもらう。


煙で既に視界はないに等しい。

今際の際に、あの男の言葉を思い出した。


”お前は、ホンモノか”


ーどうやら。

俺はホンモノじゃなかったみたいだ。


役割の重さに耐え切れなくなった。

大切な人を守れないぐらいならーー。


何かに引火したか。

その火が身を包む。


ーホメオスタシス。

その役割は、他をあたってくれ。

ここまでお読み頂き誠にありがとうございます。


初の作品となりますので、拙い文章で申し訳ない限りです。


このルートは一旦終了となります。


ご面倒かもしれませんが皆様の感想を心から、心からお待ちしております。


心から!


また、ご反響により別ルートでの作成も考えております。

完結まで見たいと言う方は、ぜひご感想を。


心からお待ちしております!

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