表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六条家、とらぶるデイズ!  作者: よむら代村
2/7

宵闇騒動~兄弟集合!~

木の隙間を、手を足を使って上手く通ってく。この移動方法は案外楽しかったりする。

移動する度に気持ちいい風が吹いて、おれを撫でる。木の枝がざわつく。良い音がする。

でも、一人うるさいのがいたりして。

「猿じゃないんだから」とかなんだとか。

そもそも、おれは別にこんなことしなくても楽に移動できる。

でも、こうした方が以外と気持ち良くて。



もうすぐで、門から屋敷まで続く道に出るはずだ。

おれは一気にスピードを上げた。

そしてそのまま木の僅かな隙間に身体を滑らせーーー

上へ、飛んだ。

夜空の星が一番近くに見えるこの方法は、つい最近、それこそふざけてやっていたら発見した。………後で散々文句を言われたオマケ付きで。

すると、背中の方から小さな声が聞こえた。

「ほぇ?」

おれは間抜けた声を出しつつ、背中の方、つまり落下してるんだろう下を見た。

え?誰?

知らない女の子がそこに居た。

歳はおれと同じくらいで、肩にかかるくらいの髪に明るい感じの可愛い顔をしてる。

おれはそのまま空中で一回転して、地面に降りた。女の子は、呆然とその場に立ち尽くしている。…………まあ、いきなり空から人が降ってくりゃ、そうなるよな。

とりあえず、おれはその女の子の近くまで行って、「えーっと、おれは六条(ろくじょう)アスカ。あんたは?」と軽く自己紹介をした。

すると女の子もはっとして、自分のことを話した。どうやら、今日からここに住むらしいけど…………あれ?おれ知らねぇ。お父様から言われてたっけ?

なんて考えてたら、近くで知ってる声に呼ばれた。

「どうした?アスカ。何かあったのか?」

首にストールを巻いた、薄紫色の髪と右目をした…………シオ兄だ。

「あ、兄ちゃん。あのさ、今日からここに住むらしいヒトいるんだけど」

「ん?あぁ、そうか。………そういえば、今日だったな」と言って左右違う瞳を細めて微笑う。

あれ?兄ちゃん、知ってるっぽい?

まさかおれだけ?もしかして…言われてた?

「俺は六条シオン。こいつは……もう聞いたか?俺の弟だ。あと二人いる。他には…………」そんなおれを置いて、シオ兄は話を進める。

え、あ、ちょ、待って待って待って待って⁉︎おいてかないでぇ⁈

今の状況に、頭がついていけなくなり始めた頃、後ろで別の声が聞こえた。

振り返ると、そこには青い袖に白い線の入ったチャック付きの、指先が少し見えるくらいのぶかぶかなパーカーを着て、フードを目元がギリギリ隠れるくらいまで被った奴がいた。

「二人、何、あった?」少し無機質なカタコト口調。

「今日からうちに住む奴だ。ほら、挨拶」

「…………サカキ。六条、サカキ」

兄ちゃんに促され、サカキは少し興味があるのか女の子との距離を詰めて、顔を覗き込んで話す。薄青の、綺麗な瞳を覗かせて。

「お父様、聞いた。お客様、来る、初めて。」そう、少し嬉しそうに呟いていた。


「あと二人はどうした?」

「居ない」

「ありゃ?」

辺りを見回すと、本当だ。居ない。

……仕方ない、か。

おれは口に両手を当て、大声で言った。

「ヒナのツンデレぇーーー!」

するとおれの横から、鋭い殺気とともに何か飛んできた。足だ。条件反射でしゃがんで避けたものの、当たってたらめっちゃ痛かったなぁ。いやほんとに。

「誰がツンデレだ。このバカアスカ」という冷たい声が聞こえた。声の主は、もちろん知っていた。

「あ、ヒナ発見〜。」

「ヒナタだよ」

ヒナタは、間髪入れずにそう言うと、眼を細めて今にもヒトを殺せそうなほどの冷やかな視線をおれに向けた。要するに、睨まれた。

「で、その子。誰?お客様?」

「あー、うん。らしい?」

「そう。僕はヒナタ、よろしく。」

相変わらず、無愛想だなぁ〜。


おれとヒナタは、双子だ。

おれらは髪色と性格、表情と話し方、服装以外まるっきり似ている。鏡を見なくったって分かるくらい。つかもう一緒。

ヒナタは青碧の髪に紅い目、メガネを掛けていて、おれは赤黒い色の髪に紅い目をしている。たまに入れ替わったりするんだけど、誰も気づかない。髪の色、違うんだけどなぁ……なんでだろうな。不思議だ。


そうこうしているうちに、最後の一人がやって来た。

「あっ、みんなここにいた!探してたんだよ?……」

なんて言って金の髪を揺らしながら駆け寄って来てたはずなのに、いきなり姿が消えた。

こけてた。何も無いところで。しかも顔面から。…あ〜あぁ。

「痛たた……ごめんごめん、大丈夫だから」

緊張感も何もなく、あっさりと起き上がる。その顔は傷一つなくて、むしろ(みんなそうなんだけど)整った顔立ちだ。そして、笑っていた。


でも、その笑顔はすぐに消えた。

驚きと、焦りと、悲しさが入り混じったような表情に変わって。

「な…………きみ、は……」

風に攫われていった、誰にも聞こえなかった言葉とともに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ