第1話:完璧な聖女様と、バレたくなかった僕の放課後
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「……ねえ、君。これ、何?」
放課後、夕焼けが教室をハチミツ色に染める時間帯。
誰もいないはずの教室で、僕の目の前に突きつけられたのは、一通の青い封筒だった。
声の主は、白雪エリカ。
校内一の美貌を持ち、その冷徹なまでの完璧さから「聖女」と崇められる、僕の隣の席の少女だ。
「……あ、それは」
「『それは』じゃないわ。私の机の中にこれが入っていたのだけれど。差出人の名前は、神代……君よね?」
心臓が跳ねた。
そうだ。僕は意を決して、ラブレターを書いたのだ。
といっても、彼女に告白するためじゃない。……いや、嘘だ。半分はそうだ。でも、もう半分は、作家志望である僕の「文章力」が、彼女のような高嶺の花に届くのか試したかった。
彼女は冷ややかな瞳で、手紙をひらひらと振った。
「読みました。結論から言うわね」
「あ、ああ……(ごめんなさい、とか、付き合えません、とか来るのかな)」
僕はぎゅっと目をつぶった。
だが、返ってきたのは予想だにしない言葉だった。
「――構成が甘いわ。特に第二節、比喩が手垢にまみれていて、私の心には1ミリも響かなかった」
「……え?」
「あと、この接続詞の使い方は読者のリズムを削いでいるわね。全体的に独りよがり。これじゃあ、どんなに美しい便箋を使っても『ゴミ』と同じよ」
白雪さんは僕の机に身を乗り出した。
ふわりと、シャンプーの清潔な香りが鼻をくすぐる。
彼女はカバンから、真っ赤なインクのサインペンを取り出した。
「神代君。君、本当はもっと書けるでしょう? 授業中のノートの取り方、あの簡潔で美しい要約……私はずっと見ていたわ」
「見てたの……?」
「ええ、隣だもの。だから許せないのよ、こんな中途半端なラブレターを私に渡すなんて。……いい? 今すぐ座りなさい。私が納得するまで、書き直し(リテイク)よ」
「え、今から……!?」
「当たり前でしょう? 完璧な私に恋をするなら、完璧な文章で口説き落としてみせなさい」
夕日に照らされた彼女の耳が、少しだけ赤くなっていることに、僕はまだ気づいていない。
こうして、僕と「聖女様」による、放課後の秘密の添削指導(という名の恋愛)が始まったんだ。




