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砂の惑星を守れ


地下に降りた。


スナ星の住人は地下で暮らしている。地表の砂嵐を避けて、岩盤の下に街を作った。数百年前から。今では地上に出たことがない世代も多いという。


「これは……」


ルミが呆れたように言った。広い。地下なのに広い。洞窟ではなく、空間がある。照明があって、建物がある。人が歩いている。地下都市だ。


住人は小柄だった。皮膚が白く透けている。日光を浴びない体。目が大きく、暗い場所でよく見えるようになっている。声が穏やかで、動作が静かだ。


「ヤミ軍が来ている」と長がいう。小さな老人。でも声が澄んでいる。「地下の資源を狙っている。石炭のような、でももっと密度の高い鉱石が、ここにある。それを取られたら——私たちは地下でも生きていけなくなる」


「ゲームで解決できる?」


「宇宙律の申し込みが来た。ヤミ軍から。断れば負けだ」


「ゲームの内容は?」


「地下迷路の最速通過。この地下には古い時代に作られた迷路がある。生活圏の下、さらに深い場所に。複雑で、暗い。最初にゴールに辿り着いた方が勝ち」


キラが口を開いた。「迷路の地図は?」


「一枚だけ。私たちも全て把握しているわけではない」


「コピーを」


「お渡しします」


---


迷路の前に三人が集まった。


地図を広げる。キラが分析した。「三叉路が多い。行き止まりが頻繁にある。でも——外から見ていると分かることがある」


「私が外から通信で情報を送れる」とルミが言った。「地図を分析して、音の反響を計算して——方向を指示できる」


「通信が届くか?」


「岩盤が分厚い。でも試してみる」


銀河丸が地図を見た。読めない。文字は分からない。記号の羅列だ。でも——形は見える。


「ヤミ兵が先に入ったら?」


「先に出る方が勝ちだから、後で入っても問題ない」


「じゃあ俺が入る。ルミが外から指示を出す。キラはルミの計算を助けろ」


「私はそっちか」とキラ。


「外の方が重要だ」


キラが少し考えて頷いた。


---


迷路に入った。


暗い。照明がない。メットが微かに光を出してくれた——以前は気づかなかった機能だ。暗い場所に入ると光る。手のひらくらいの範囲だけが見える。


走る。


「銀河丸、最初の分岐は右」


ルミの声が通信機から来る。音がかすれている。かろうじて届いている。


右。


「次の三叉路は——計算中——真ん中」


真ん中。


石の壁。石の床。足音が響く。音が反響する。その音の返り方から、空間の広さが分かる。先に広い空間があるか、行き止まりが近いか——感じる。


感じる。


「次、右か左か——キラ、ここは」


キラの声が聞こえた。「左。地図の等高線を見ると——左が下に傾いてる。ゴールは深い場所だ」


「左です、銀河丸!」


左。


足音が変わった。下り坂になっている。確かだ。


ヤミ兵の気配がする。別の通路から来ているのか、足音が岩の向こうから聞こえる。数体。


「ヤミ兵が並行で走ってる」


「どっちが先にゴールに出られるか——分からない。でも」


でも。


息を吸う。


走れる。感じる。この暗さの中でも——壁の気配、空気の流れ、反響の仕方。江戸の夜道を走った感覚と同じだ。夜は暗い。暗くても体が道を覚えている。


「次の分岐は——銀河丸、あなたはどう感じますか」


「左」


「地図だと——一瞬待って——左でも合ってる」


走る。左。


また下り。


光が見えた。微かに。先に光がある。


走る。走る。走る。


出た。


広い空間だった。石の台が中央にあって、そこにランプが置いてある。ゴールだ。


触れた。


しばらくして、別の入り口からヤミ兵が現れた。一歩遅かった。


---


地上に戻ると、スナ星の長が待っていた。


「勝ちました」と銀河丸が言った。


長が目を細めた。泣くか笑うか——どちらにもなれないような顔だった。


「ありがとう」


それだけ言って、深く頭を下げた。


老人が言葉を続けた。「地下に潜り続けた俺たちを——あなたは地上に引き出してくれた」


銀河丸は首を振った。


「地下でも地上でも、人は同じです。場所が変わっても」


「そうかもしれない。でも——長い間、俺たちは地上を忘れていた。あなたが来て、外の人たちの話を聞いた。宇宙に星が無数にあると聞いた。地下から空を見た」


「地下から空が見えますか」


「見えない。でも——想像はできる。やっと想像する気持ちになれた」


ルミが静かに立っていた。キラが腕を組んで聞いていた。


---


勝利の後、食事が出た。


丸い団子。土を練ったものに見える。色が土の色だ。


銀河丸は受け取った。かじった。


……土だった。


土を練って固めたもの。食べ物として成立はしている。でも土だ。間違いなく土だ。


「どう?」とルミが聞いた。


「……土だ」


「おにぎりに近い?」


「形だけなら団子に近い」


「おにぎりじゃないじゃないですか」


「団子も好きだ」


キラが横で聞いていて、一口かじって——すぐに飲み込んだ。顔が複雑だった。


「……土だな」


「そうだ」


「なんで笑ってるんですか」とルミが言った。


二人が笑っていた。土を食って笑っていた。


ルミも仕方なく一口食べた。それからルミも笑った。


地下都市に笑い声が響いた。小さな笑い声が。


---


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