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『凡人修仙伝』: 不死身を目指してただ逃げてたら、いつのまにか最強になってた  作者: 白吊带
第二卷: 煉気編一初めて世間に·血色禁地
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血染試練に参加

 


 韓立は三つ尋ねられれば三つとも知らないと答え、全て苦修くしゅうによるものだと頑なに主張した。なぜ驚異的な速さで修練できたかについては、幼い頃に誤って異果いかを食べたという奇遇きぐうの話を、あらかじめ用意しておいた物語として王師叔おうししゅくに語った。全てをその異果のせいにしたのだ。これは、まさにこうした事態に備えて彼が用意しておいた言い訳だった。


 韓立は知っていた。嘘は七分が真実で三分が虚構きょこうだからこそ信じてもらえるのだと。だから彼が描写した異果は、決して空想の産物ではなかった。それは数百年の間、世間に語り継がれてきた「竜鱗果りゅうりんか」という仙家せんかの果実だった。伝説では、これを服用した者は生まれ変わり、飛昇ひしょうすると言われていた。ただし、その実在については韓立には分からなかった。誰も実際に口にしたことがないのだから。


 読書家の王師叔は、韓立が語る異果の姿を聞くと、目を輝かせた。そしてどこからか「奇物異志きぶついし」という古書を探し出し、その中から韓立の言う「竜鱗果」を見つけて彼に確認させた。


 ここまで来れば、韓立はもちろん流れに乗って認めた。王師叔は「ほほう」と驚きの声を上げ続けた。


 韓立はさらに相手に告げた。この果実は一度摘み取られると、元の植物の根や葉は直ちに枯れ死んでしまう。例え元の場所を探しても、二つ目の果実は絶対に見つからないと。こうすることで、相手が産地を尋ねて二つ目を探そうとする考えを完全に断ち、話の続きを完全に封じたのだ。


 この人物が本当に貪欲どんよくに駆られ、他の場所で二つ目の仙果を探しに行くかどうかは、彼の知ったことではない。相手に勝手に忙しくさせておけばいい!


 しかも韓立はよく分かっていた。王師叔が彼の前で、まるで全てを悟ったかのように、完全に真実だと信じているふりをしているが、実際にこの話を相手が何割信じているかは、彼の心の中では全く見当がつかなかった。


 おそらく相手も半信半疑、信じているようで信じていない状態だろう。だからこそ、この王師叔に対しては、今後は避けられるなら避け、隠れられるなら隠れ、十分に注意を払い、何かを見抜かれないようにしなければならない。


 しかし韓立は確信していた。もし築基ちくきに成功し、築基期ちくききに入ることができれば、彼の立場は大きく変わる。王師叔が未だに疑念を抱いていたとしても、簡単に彼に手を出すことはないだろう。結局のところ、修仙界では実力が全てを物語るのだ!


 こうして韓立はようやく自分の功法こうほうの問題をごまかし通した。王師叔も、さきほど韓立をさんざん試したことへの申し訳けなさからか、申し込みに際して韓立に対して少しも難癖をつけず、簡単に全ての手続きを済ませてくれた。さらに禁地行きに関する注意事項をいくつか伝え、早めに準備するよう念を押した。


 韓立は口々に感謝の言葉を述べ、告別してその場を離れた。


 戻ると、小柄な老人(馬師伯ばしはく)に一声かけ、薬園の仕事を一時的に外してもらった。血染試練に全精力を傾けるためだ。


 小柄な老人はこの話を聞いてしばらく無言でいたが、「お前は死ぬ」と言わんばかりの奇妙な目つきで、ずっと韓立を見つめ続けた。韓立はしばらくの間、背筋が寒くなる思いをした。


 しかし意外にも、この馬師伯は立ち去る前に、一言も言わずに韓立に二つの瓶を投げ渡した。冷たい口調で「一本は内服、一本は外用」と言うと、無表情で法器ほうきに乗って飛び去っていった。


 この行動に、韓立の心はほんのり温かくなった。


 この二年間の付き合いで、彼はこの小柄な老人が、性格は少し風変わりだが、心根は温かい人間だと理解していた。ただ丹道たんどうの術に熱中しすぎているだけなのだ。今このように接してくれたのは、この馬師伯が彼を甥や息子のように思ってくれている証拠だった。韓立は少し感動した。


 禁地行きの三日前、ついに王師叔から韓立にが届いた。議事大殿ぎじたいでんに集合するよう促し、出発の準備を整えよとの知らせだ。


 韓立がそこに着くと、血染めの試練に申し込んだ弟子たちが集まっており、互いを観察し合っていた。


 黄楓谷こうふうこく全体の煉気期れんききの弟子は、実に一万人以上にも上る。韓立が全員を知っているわけがない。しかし、その中に一人、韓立にとっては知らない方が不思議なほどの女性が現れた。彼女こそ、あの「陸師兄りくしけい」に手籠め(てごめ)にされかけた「陳師妹ちんしめい」だった。


 言うまでもなく、「陸師兄」が韓立に始末されて以来、黄楓谷では小さな騒動が起きていた。彼は築基には至っていなかったが、異霊根いれいこんの持ち主であり、黄楓谷でも上層部からかなり注目されていた低階弟子だったのだ。


 一方、「陳師妹」は戻ってきてから、何という心理からか、あの夜の経験については誰にも話さなかった。口を固く閉ざしたままだった。


 こうして、長期間姿を消した「陸師兄」は、行方不明者として処理された。門内で手分けして連絡を取り、一通り探したが、何の手掛かりも見つからず、この件は次第にうやむやになっていった。


 このように人が突然谷から消える事件は、以前にもなかったわけではない。「陸師兄」は最初の被害者でもなければ、最後でもなかった。


 騒動が収まると、黄楓谷内で「陸師兄」の名を口にする者は誰もいなくなった。まるで最初から存在しなかったかのように。この状況に韓立は安堵あんどの息をつくと同時に、冷たい戦慄せんりつを覚えた。


 修仙者とは、やはり情や欲を断ち切る者が多いものだ。もし自分が行方不明になっても、門内の反応はおそらくこれ以上にはならないだろう! 多分一瞬で、彼という人間は忘れ去られ、わざわざその行方を探る者などいないに違いない。


 入門以来ずっと貫いてきた低姿勢で慎重な態度は、決して間違っていなかったと悟った。


 何しろ修仙の道は長く、予期せぬ出来事が起こる可能性は高い。もし自分がさらに目立ったり、目立つような愚かなことをすれば、彼のような背景も後ろ盾もない低階の修仙者は、いつでも修仙の道の途中で、抵抗すらできない強大な存在に潰されてしまうかもしれない。そして来世らいせに再び修仙の道を歩める可能性は、ほとんど皆無に等しい。


 もともと転生てんせいや生まれ変わりといったものをあまり信じていなかった韓立も、修仙界に触れて以来、半信半疑になり始めていた。


「陳師妹」の様子は以前とは明らかに違っていた。恋人の裏切りが原因なのかは分からないが、眉は淡く化粧も控えめで、冷艶れいえんな輝きを放ち、全身に近づきがたいオーラを漂わせていた。そのため、彼女の容姿に惹かれて近づこうとした数人の青年は、ことごとく撃退げきたいされて帰っていった。


 男というものは皆、どこかで間違っているのかもしれない。この女の冷たく傲慢ごうまんな表情は、彼女の美しさを損なうどころか、むしろ幾分神秘的な魅力を加え、周囲の男弟子たちは皆、こっそりと彼女を盗み見ていた。この魅力は、かつて「陸師兄」の前で見せた小鳥が寄り添うような姿よりも、はるかに強力だった。


 しかし韓立はこれを見て、心の中で何度も舌打ちした。


 言うまでもない、この世にまた一人、男を毒蛇どくへびのように見る女が増えたのだ。前回の恋人の裏切りを経験したこの女は、おそらく今後、男に簡単に好意を示すことはなく、一生独りで過ごすつもりかもしれない。


 この「陳師妹」は韓立を認識していなかった。韓立がわざと彼女の前を数度通りかかったが、得られたのは冷たい視線だけだった。明らかに彼女は韓立を、わざと自分の前で見せびらかそうとする連中の一人とみなしていた。


 韓立は安堵あんどの息をついた。合歓丹ごうかんたん幻惑げんわくの力は流石さすがに強力で、彼女は彼にまったく記憶が残っていなかった。これで最後の心配事も完全に消えた。


 考えてみれば、彼女がこの血染試練に参加するのは、多分自分のせいだ。築基丹を失った以上、築基を目指すには自分と同じように一か八かの賭けに出るしかない。結局、禁地行きは築基丹を得られる唯一の手段なのだから。


 そして今回、黄楓谷が禁地行きに参加する弟子たちは、実に精強せいきょう揃いで、精鋭せいえい大挙たいきょして出てきていた。光十三層の頂点に達した弟子だけでも、五、六人はいた。


 残りの他の弟子たちも、十二層が大多数を占めていた。「陳師妹」は十二層の中級レベルだった。


 最後に十一層の弟子は、たった三人だけだった。韓立の他は、白髪しらがの老人と十六、七歳の少年で、韓立はこれを見て心底寒気を感じた。彼ら三人はおそらく、噂に聞く「充数じゅうすう要員」や「捨てすてごま的な弟子」だろう。


 これまでの慣例では、七大派しちだいはが禁地に入れる低階弟子は二十五人を超えてはならず、少なくても多くはならない。過去数回は、十分な人数を集めることすらできず、十数人で血染めの試練に参加することも珍しくなかった。


 しかし今回は、人数が上限に達しているだけでなく、これほど多くの精鋭弟子が出現している。これら全てが、今回の禁地での採薬は、過去の普通の水準を確実に超えており、生き残る人数は間違いなく四分の一を下回ることを示していた。


 この予想通りの光景を目にして、韓立は心の中でののしる以外に手はなかった! 言うまでもなく、これらの精鋭弟子たちは、門内の上層部から特別な褒賞ほうしょうを約束されているに違いない。そうでなければ、ここに現れるはずがないのだから。


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