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第21話:女神様に懺悔しに行きな!

「あの、たった一撃で『スカル・ギャング』を全滅させたっていう黒龍の王女が、いつの間に男を捕まえてたんだ!? しかも、よりによって人間だと?!」

双刃を構えた剣士が、裏返った声で驚愕の叫びを上げた。


この人間のクズどもが、我が物顔でミッドナイトの名を口にしている。その事実だけで、俺の腹の底からドス黒い怒りが沸き上がってきた。


泥泥ゴミクズが……。誰が彼女の名前を気安く呼んでいいと言った!」


俺は地面に転がっていた長刀を足先で撥ね上げると、手中に収まった柄を握り締め、猛烈な勢いで一閃した。


「御竜天式・烈牙斬!」


キィィィン! と空気を引き裂く轟音とともに、直径二メートルを超える巨大な剣気が放たれ、山賊たちのド真ん中へと一直線に襲いかかった。


「受け止めろ、防げッ!」

バラクが悲鳴のような怒声を上げる。

すぐさま体躯の優れた大男が前線に飛び出し、精鋼で作られた分厚い巨盾を構えた。


「おおおおおおおッ!」

男が文字通り死に物狂いの力を振り絞り、両腕の骨がきしむほどに盾を押し出したが、足元は容赦なく後方へと削り取られていく。

――そして、肉体が限界を迎えるよりも早く、精鋼の盾が真っ二つに両断され、男は鮮血の海の中へと崩れ落ちた。


パリィィン!

俺が手にしていた長刀もまた、暴虐なまでの「竜のドラゴンフォース」に耐えきれず、この一撃を放ち終えた瞬間に無残な鉄くずとなって地面に散らばった。

俺は残った柄を無造作に投げ捨て、一歩、また一歩とバラクの方へと歩みを進める。


戦況の圧倒的な不利を悟ったバラクは、青い顔をしながら慌てて三人の魔法使いを自分の前に立たせた。

「魔術隊、攻撃だ! あいつを近づけるな!」


三人の魔術師が掲げた杖の先端から、眩いばかりの光が放たれる。火炎、暴風、そして雷光――三つの属性元素が急速に収束していく。


「第3位階魔法:クリムゾン・スフィア!」

「第3位階魔法:ゲイル・ブレード!」

「第3位階魔法:ライトニング・アロー!」


性質の異なる三つの攻撃魔法が同時に放たれ、猛烈な速度で俺の視界を埋め尽くした。

しかし、俺は一歩も動かず、ただ冷徹にその光景を見つめながら、脳内のシステムパネルの購入ボタンを狂いなくタップした。


[二星冷蔵庫ショップ:アイス・シールド×1(-1000ポイント)]


システムログが視界に浮かび上がった刹那、俺の目の前に巨大な門扉ほどの大きさを誇る「氷の盾」が完璧なタイミングで出現した。


ドオォォォン!!!

激しい爆発音が辺りに響き渡る。

三つの魔法を真っ向から受け止めた氷の盾には、無数の亀裂が走ったものの、完全に砕け散ることはなかった。


俺の心は微塵も揺るがない。間髪入れずに、再びシステムショップから商品を購入する。


[一星冷蔵庫ショップ:カノコソウ缶詰×3(-1200ポイント)]


手のひらに、緑色をした三つのプルタブ式のアルミ缶が転がり落ちてきた。

俺は親指でそれらを一気にパキリと開けると、山賊たちの密集地帯へと力任せに投げつけた。


アルミ缶が地面に激突した瞬間、内部から濃密な白い気体が爆発的に噴き出す。


「な、何だこれは……?」

最も近くにいた五人の山賊は、目の前に飛んできた物体の正体すら視認できていなかった。

ほんの僅か、爽やかなミントに似た香りが鼻腔をくすぐった――と思った次の瞬間には、彼らの脳は強制的にシャットダウンされ、泥のように意識を失っていた。


「睡眠ガスだ! 早く散れ、息を吸うな!」

バラクが必死に叫ぶ。

だが、俺がそんな時間を与えるはずがない。


俺は瞬時にバラクの背後へと回り込むと、強烈な一蹴りで彼を煙幕のド真ん中へと蹴り飛ばした。さらに、残った山賊たちの膝を正確に狙い、地面の小石を凄まじい速度で弾き飛ばす。


「ぐはっ!?」

膝に激痛を受けた七人の山賊が、その場に次々と転倒した。

予期せぬ事態への過度な恐慌から、彼らは無意識のうちに激しく呼吸を乱し、結果として大量のカノコソウ成分(催眠ガス)を肺一杯に吸い込むことになった。――当然、一秒と持たずに全員が昏睡した。


これで、戦闘は終了だ。

馬車の脇でただただ呆然と腰を抜かしている貴族のお嬢様と、俺を除いて、この戦場に意識を保っている者は一人もいなくなった。


「両手を血で汚した人間のクズどもめ。……せいぜい、女神様のところへ行って大人しく懺悔しな」

「来世は、まともで実直な人間に生まれ変われるといいな」


俺は地面を這う催眠ガスを避けるように馬車の屋根へと飛び乗ると、右手を掲げて短く叫んだ。


「キャプチャー!」


手首のあたりにジワリとした熱さを感じた瞬間、深海を思わせる深い藍色の「タコの紋章」が鮮烈に浮かび上がった。

俺の右腕から放たれた半透明の触手が、死肉に群がる鎖のように、気絶したすべての敵を一本の線で貫いていく。


次の瞬間、傷ついた者も、眠りこけている者も、その場にいた山賊のすべてが『シュッ』という風切り音と共に跡形もなく消失した。まるで、最初からこの世界に存在していなかったかのように。


これには、階下で見守っていたお嬢様も完全に腰を抜かし、恐怖に顔をひきつらせていた。

「な、何……これ……? 一体、何が起きたの……?」

彼女は自分の目が狂ってしまったのかと、何度も何度も必死に両目を擦っていた。


脳内のシステムパネルに、冷徹な通知が流れる。

[捕獲成功:異世界人類×16、16,000ポイントを獲得しました]


そのログを見つめながら、俺は「やっぱりな」と、心中で納得の混じった皮肉な笑みを浮かべた。

この捕獲機能、雄雌の制限がないばかりか、還元されるポイントがそこらの魔獣を遥かに凌駕している。これではまるで、システム側から「今後は人間を積極的に狩れ」と唆されているかのようだ。


(女神様……。あんた、一体裏で何を考えてやがるんだ? まさか、何かの非人道的な人体実験じゃねえだろうな?)

どう考えても、この能力は乱用すべきではない。少なくとも、罪のない無辜の民に牙を剥くような真似だけは絶対に避けようと、心に強く誓う。


思考を整理した俺は、屋根から軽やかに飛び降りると、地面に転がっていた空のアルミ缶を拾い上げ、システムパネルのインベントリへと放り込んだ。

この冷蔵庫システムには便利な「ゴミ回収リサイクル機能」が備わっている。システムショップで購入した商品から出たゴミ――残飯であれ、プラスチックであれ、こういったアルミ缶であれ、すべてをシステムに回収させることができるのだ。

累積で一キログラムに達するごとに、【1ポイント】の端金はしたがねにはなるが、環境に優しいエコ仕様である。


「よし、これでガスがこれ以上拡散する心配はなくなったな!」


一連の騒動が完全に収束したのを見届け、俺は馬車の脇でへたり込んでいる公爵千金の方へと歩み寄った。

しかし、彼女はすっかりパニックに陥っているようで、地面の小石を必死に拾い上げては、俺に向かって次々と投げつけてきた。


「こっちに来ないで!」

「この下賤な平民が! 私が誰だか分かっているの!?」

「私の髪の毛一本にでも触れてみなさい、お父様があなたの家族を一人残らず捕まえて処刑してやるわ!」


俺はそんな脅し文句など意に介さず、一歩、また一歩と彼女の目の前まで歩みを進めた。

ここに至り、アリアもようやく自分が置かれた圧倒的な力関係(現実)を悟ったようだった。

彼女はこれ以上俺を罵るのをやめ、はだけかけた胸元のボロ布をぎゅっと必死に手で押さえながら、今度は一転して、蚊の鳴くような震える声で哀願してきた。


「お、お願いだから見逃して……。お父様はお金持ちよ。あなたが今すぐここから立ち去るなら、金貨300枚……いいえ、3000枚あげるわ! それに、これまでの無礼も一切不問にしてあげる。だから、ね?」


俺は腰を落として屈み込み、アリアと真っ直ぐ視線を合わせた。

「……」

なぜだか知らないが、彼女は急に顔を真っ赤に染めて黙り込んでしまった。


ドンッ!

俺は無言のまま左腕を突き出し、彼女の背後にある馬車の壁を強く叩いた。いわゆる、完璧な「壁ドン」の体勢だ。


「っ!?」

お嬢様の全身がびくりと跳ね上がった。


「あなた……まさか、嫌……」

アリアは顔をこれ以上ないほどに紅潮させ、その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。

この至近距離だと、彼女の荒い吐息がやけに鮮明に聞こえ、身にまとった甘い香水のような匂いまでが鼻腔をくすぐる。


俺は彼女の豊満な胸元へと視線を落とし、迷うことなく右手を伸ばした。

アリアは訪れるであろう最悪の蹂躙を覚悟したのか、ぎゅっと両目を強く瞑った。――だが、予期していた暴力が彼女を襲うことはなかった。


「これは、あんたを救い出した『報酬』として、ありがたく頂戴していくぜ!」


ブチィッ!

俺は彼女の胸元に飾られていた、いかにも高価そうな水晶のネックレスを力任せに引きちぎると、そのままコートのポケットへと放り込んだ。


しかし、俺が顔を上げると、そこにはなぜか猛烈な「怒り」を孕んだお嬢様の眼光が待ち受けていた。

それはまるで、動画の最初にある30秒の強制広告をじっと耐え抜いた結果、その直後に『2本目の広告』が流れ始めた時の、あの何とも言えない理不尽な怒りに満ちた表情そのものだった。


彼女の顔は、最初こそ真っ赤に上気していたが、次いでサーッと青ざめ、最終的にはまるで豚の肝臓のようなドス黒い赤色へと変化していった。

とにかく、彼女は猛烈に腹を立てているようだったが、なぜか言葉を一切発しようとせず、ただ肩を大きく上下させて激しく呼吸を繰り返している。


その様子に、俺は首を傾げざるを得なかった。

「おいおい、何だその顔は? 命が助かったっていうのに、お気に召さなかったか?」


「……ふん! むっつりスケベのくせに、度胸もねえ意気地なし……」

彼女はぷいと顔を背け、俺に聞こえないほどの小声でブツブツと毒づいた。


「ん? 何か言ったか?」

「べーっだ!」

お嬢様は俺に向かって小さく舌を突き出すと、再びへそを曲げたように顔を背けてしまった。


「……」

俺は完全に言葉を失った。

この世界の貴族というのは、どいつもこいつも彼女みたいに頭のネジが数本飛んでいるのだろうか? 命の恩人が誰であるか、その状況すらまともに認識できていないようだ。


「まあいいさ。問題は解決したみたいだし、俺はもう行くわ。じゃあな!」

俺は立ち上がり、背を向けてその場を立ち去ろうとした。


途端に、お嬢様は焦り出した。

「あなた、ちょっと待ちなさい……!」


ヒュッ――!

その瞬間、空気を引き裂く不穏な風切り音が背後から急襲してきた。

思考が追いつくよりも早く、俺の防衛本能が喉を震わせて叫んでいた。


「二星冷蔵庫、オープン!!」


ドォンッ!!!

凄まじい衝撃音が響き渡る。

放たれた一撃は、出現した二星冷蔵庫の頑強な金属製外殻へとクリーンヒットした。外殻自体に凹み傷こそつかなかったものの、周囲の大気を激しく揺るがすほどの凄まじい振動が伝わってくる。

幸い、俺が反対側から必死に冷蔵庫の車体を支えたため、その重量に押し潰される最悪の事態だけは免れることができた。


「て、てめぇは一体……!?」


そこには、一人の黒髪のメイドが立っていた。彼女は俺の問いかけを完全に無視し、放ったばかりの蹴り足を静かに下ろすと、目にも留まらぬ身のこなしで瞬時にアリアの前へと回り込み、背後に庇うようにして立ちはだかった。


「ソフィア! やっと来てくれたのね!」

アリアは両手を上げて歓声を上げ、その目には嬉し涙が溢れていた。


「はい! お待たせいたしました、お嬢様……。これより、お嬢様にその汚れた手を伸ばそうとした『害虫』を――私が直ちに浄化いたします!」


言い終わるか終わらないかのうちに、黒髪のメイドは凄まじい踏み込みで突進してきた。その鋼のような拳が、真っ直ぐに俺の顔面へと迫る――。

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