第一章 憑依型執筆スタイルとは?
■定義付けに挑戦
憑依型の執筆を簡単に言えば、『脳内の妄想を文章にしてアウトプットする』
頭の中での妄想は、誰でもすると思います。
好きな子と恋人になる妄想。
推しのアイドルとデートする妄想。
自分も転生して、異世界で活躍する妄想。
などなど。
この妄想を文章に起こして、小説を創作するスタイルです。
私はこれを、『妄想を文章で再現』することだと考えています。
そして、このスタイルと対極になるのが、現在主流である『プロット設計型』スタイルになります。プロット設計型とは読んで字のごとく、先にプロットで物語を設計してから、その設計通りに執筆するスタイル。
この二つの違いは、プロット設計型は、作者が考えて作った台本をキャラたちに演技させるもの。憑依型は、作者の脳内で展開される物語を観察して(もしくはキャラになりきって)文章に起こしたもの。
例えるのなら
・プロット設計型は、脚本家+舞台監督
・憑依型は、役者もしくは観客。
もう少し具体的に、キャラ同士の会話に例えて説明すると
・プロット設計型は、物語の展開をプロット通りに進めるためにキャラに会話をさせる。
・憑依型は、キャラたちが勝手に会話を始めて、その結果で物語が動き出す。
恐らく、この「勝手に会話を始める」という現象が、憑依型を理解するのを難しくしていると思います。
でも、本当にそうなんです。小説家や漫画家で「キャラが勝手に動き出す」とか「作者にもどう転ぶか分からない」と言う人がいますが、まさにそれなんです。
実例として、私のパターンを説明しますと
まず最初に、脳内で主人公の人格をイメージします。
事細かく作るのではなく、なんとなくのイメージです。
「25歳の男子はこんな感じで、相手はアラサーの女性にするか。アラサーの女性ってこんな感じだよな」って感じです。
あとは、場面「会社の先輩と朝チュンしてしまったが、記憶がない」を決めてやると、勝手に動き出します。
25歳男子が起きると裸で、記憶がない。
隣には裸のアラサーの先輩が寝ている。
焦るが、昨日は飲み過ぎたのでトイレが近く、尿意が限界。
まずはパンツを履いてトイレへ。
すっきりすると少し冷静になって、部屋の片隅のゴミ箱に気付く。
中身を見るとティッシュがあるが、直接触るのは嫌だからゴミ箱ごと手に持って臭いを嗅ぐ。
と、すらすら脳内で妄想が捗ります。それを文章で再現してやるのです。
そこには作者の意図は介入させず、キャラが私のイメージした25歳男子の人格で自律して動くんです。
なので、どのような展開に進むのか、私にも分かりません。(これに関しては少し語弊がありますが、それは別の章で解説します)
また、私の実例はあくまで複数ある憑依型執筆パターンの中の一例で、全ての憑依型がこうではありませんが、似たり寄ったりだとも考えています。
読者さんやプロット設計型の人にしてみれば、「そんなんで、物語として成立するの?」と思われるかもしれませんが、現実の人間の営みって、なんでもかんでも白黒はっきりするわけではありませんし、結果が出ないことも多いです。
でも憑依型にとっては、それでもドラマなんです。むしろ、設計された物語よりもリアルなドラマなんです。
もう1つ分かりやすい例えとして、将棋のプロ棋士。
脳内の将棋盤で一人二役をこなしながら対局を展開させるという話を、耳にしたことがあるかと思います。これに少し似ています。
これは、棋士の脳内でAとBを戦わせる場合、Aの戦術ロジックで指し、次にBの戦術ロジックで指す。一人二役をこなしながら何十手先まで読んでいくというもの。実際の将棋盤ではなく、脳内の将棋盤で対局が展開されているんですよね。
憑依型の会話シーンの場合は、Aの人格になりきって発言して、それをBの人格になりきって答える。この一人二役を目まぐるしく繰り返しながらリアルタイムで文章にして、会話シーンを再現する。憑依型は、脳内の舞台で会話が展開されているんです。
ここまでの説明を踏まえて、『憑依型』という言葉を私なりに定義すると
『脳内で展開される妄想を文章で再現させる執筆スタイル』




