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翌日、検分した物資の目録を片手に、イライザ様が帳簿に在庫を記入するのに同席させてもらえることになった。
「灯芯草と薪と炭も買えたのよ。骨と内臓だけでここまで買えたなんて信じられないわ」
イライザ様はいつになく弾んだ声でそう言いながら、角張った几帳面な字で帳簿に転記していく。
「まだ皮も残ってますから、その分でも備蓄が買えそうですね」
「えぇ、それにちょっとした嗜好品も買ってきてくれたの」
「嗜好品?」
「砂糖とか燻製のニシンや鮭ね」
聞けばこの辺りでは砂糖は貴重品らしく、一般家庭ではほとんど手に入らないらしい。
ロッソはその砂糖を、アーマードベアーの討伐参加者に褒賞として渡すことにしたそうだ。砂糖は薬の代わりにも使われるらしく、現金を渡すより喜ばれるだろうとのことだった。
また、冬の間はアーマードベアーの燻製やトナカイの塩漬け肉がメインの食材らしく、魚の燻製は冬の間のご馳走食材らしい。
「大切に食べないとね」
と、そわそわと嬉しそうにイライザ様は帳簿に記帳していた。
昨日からの浮き足立った空気は、まだ館中に充満している。
足りていなかった物資や冬を越すために必要なもの、それらが手際よく振り分けられ、必要な場所へと回されていく。
私は、それを見ているだけだ。
焦りのような無力感に苛まれるも、結局、何かをすることはできなかった。
その夜の食事は、久しぶりにロッソたちも交えて四人での食事となった。
ロッソもイライザ様も上機嫌で、ロードナイト卿は少し疲れた様子も窺えたが、概ね普段通りの食卓だった。
だが、給仕の者が静かに差し出した二通の手紙が、空気をわずかに変える。
一通はロッソ、もう一通は私宛てだった。
ロッソは封を切り、手紙をちらりと見るとそのままロードナイト卿へと無造作に渡す。
「ほい、セド」
ロードナイト卿は手紙を受け取り、目を通すと露骨に顔をしかめた。そして、何も言わずにその手紙を懐に捩じ込んだ。
ロッソは、そんな彼に特に何か反応を求めるでもなく、悠然と食事をしている。
そのやり取りを横目に、私は自分の手元の手紙へと視線を落とした。
封を切り、読み進めていくうちに思わず息を呑む。
そこには、輿入れ道具の行軍が悪路の影響で進めず、ローベリアで足止めされていると記されていた。
いつ届くかの見通しも立っていないらしい。
一瞬、言葉をったものの、すぐにある考えが浮かんだ。
あれを、このまま運び込む必要があるのだろうか。豪奢な調度品、衣装、装飾品。どれもこの地では、過分なものだ。
それよりも売れば資金になるのではないだろうか。
領の現状が、頭をよぎる。
不足しているものや必要とされているもの。
それらと比べたとき、自分の持ち物がどれほどの意味を持つというのか。
私は、無意識のうちにロッソの方を見た。
彼は、いつもと変わらぬ様子で食事を続けている。
売ってしまおう。そう決意するのに時間は掛からなかった。




