第40話「お~ い!! 衛兵さ~ん!! こっちで~す!!」
……よし! 考えはまとまったぞ!
大きく頷いたロジェは、面白そうに笑い、歩みを速めた。
待ち伏せている敵の所在地までは後3㎞……
そろそろ視認が可能な距離になる。
奴らからは、俺の姿を確認する事は不可能で、
ただじっと目をこらし、『獲物』が来るのを待っているに違いない。
そうこうしているうちに、奴らの姿が見えた。
街道沿いの岩陰、そして藪などあちこちに身を潜めている。
でも皆、すっげえ下手くそな隠れ方だ。
さあ、敵の分析、分析。
3人が、街道へ出たり入ったりしている。
そして、きょろきょろこちらを見ている。
3㎞先から視認し、偵察するロジェには到底及ばないが、
賊の仲間内で極力視力が良い者を選び、
見張り&偵察任務につかせているのであろう。
こいつらが『獲物』が来るのを待つ見張り役……
少なくとも見張り役だけは……弓矢、ボウガンなど飛び道具は持っていない。
まあ、隠れている奴が持っているかもしれないが、
30人の中に攻撃魔法を放てる魔法使いは居ないようだし、
どうせ、弓矢を持っていたとしても、矢を放つまでには若干のタイムラグがある。
狙いを定めるだけでも、俺は気配で感知してしまうし。
だから、矢で攻撃される前に速攻で対処してしまえば良い。
少しストレッチでもしておくか……
ロジェは手足を動かし、身体をほぐす。
よし! スタンバイOKだ。
頷いたロジェは、何も気づいていないふりをし、
たったったっと、ジョギングレベルで待ち受ける賊どもへ向かい駆けて行く。
待ち受ける3人の見張りが、自分達へ近づくロジェを見つけたらしい。
見張り全員が、手を大きく振り回している。
多分これは合図であり、
隠れている奴らに「獲物が来た」とジェスチャー込みで伝えたのだろう。
見張り役は3人全員、走るロジェへ近づいて来た。
対してロジェは、「初めて気が付いた」というリアクションで止まった。
見張り達が声を張り上げる。
「おい、ガキ! 武器を捨てろや!」
「有り金、荷物全てこちらへ渡して貰おうか!」
「抵抗したら、容赦なくぶっ殺す!」
……どこかで聞いたようなお約束のテンプレコメントのオンパレードだ。
対してロジェは大人しく言う事を聞く……わけがない。
「もしかして、あんたら強盗ですか? 残念ながら要望は全てお断りしますよ」
「何い!」
「ふざけるな!」
「おめえはたったひとりだろ? 俺ら3人に抵抗出来るわけがねえ!」
ムッとしたり、激高する賊ども。
「いえいえ、全然ふざけていないし、おっしゃる通りひとりですけど、抵抗はやってみないと分らんでしょ?」
そんなロジェの言葉を聞き、見張り3人は大笑い。
「はっはっはあ! 笑わせやがる!」
「いつまでそんな余裕こいてられっかな?」
「世間知らずのガキは困ったもんだよ!」
見張りの3人は再び手を大きく打ち振った。
すると残り27人の賊がばらばらばらっと現れ、
全員で街道に立ちふさがったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
仲間が全員出て来たのを見て、見張り役3人は勝ち誇ったどや顔。
その27人の中から、ひと際たくましい、まっちょな荒くれ男が進み出る。
どうやら、コイツがボスのようだ。
少し、かぎ爪団のボスに似ているなあと、ロジェは思い出し笑いしてしまう。
そんなロジェを見て、ボスは吠える。
「おい! 何が可笑しいんだ、このクソガキ!」
「はあ」
「こいつらから聞いたろ? 武器を捨て、有り金、荷物全てこちらへ渡せ。抵抗したら、容赦なくぶっ殺すぞ」
既視感が半端ない。
セリフが殆ど同じのテンプレである。
ならば、こちらもテンプレコメントで反撃だ。
「そうですか……だが、当然、断るっす!」
「何い! 当然断る? クソガキがあ! 容赦なく、ぶっ殺されたいようだな!」
強盗ボスは短気らしい。
ロジェの『お断り』を『挑発』だと受け止めたようだ。
しゃきいいん!とさやから剣を抜き放った。
ボスの抜剣を見て、配下達もしゅらっ、しゅらっ、と次々に剣を抜き放った。
「これで、完全に正当防衛っすね」
ロジェはそう言うと、いきなり生活魔法『洗濯物を乾かす風』を強めにし、
ボスへ放つ。
どしゅ!
重い音を立てた空気の塊がボスに命中!
全く予想外の攻撃を腹に受けたボスは無様な格好で、あおむけに倒れた。
「おわあ!」
情けない悲鳴をあげ、倒れたボスを見て、賊どもは大混乱。
と、同時にロジェはダッシュ!
更には華麗にステップを踏み、慌てふためく賊どものど真ん中を
「するするっ」と避けつつすり抜け、突っ切って走る。
そして100mほど離れると、賊どもに背を向けたまま、振り返って見て、
「ざまあ! お尻ぺんぺ~ん!」
と叫び、べ~と舌を出し、自身の尻を「ぽんぽん」と数回叩いた。
まさに、これぞ最高の挑発!
当然、賊どもは怒っていきり立つ。
中でも激おこ状態なのは、不意をつかれ、ひっくり返ったボスである。
配下達に手伝って貰い、ようやく立ち上がったボスは、
「このやろ~!! ぜって~、ぶっ殺してやるうう!!」
と顔を真っ赤にして絶叫した。
「ここまでおいで~!」
ロジェは再びお尻をぺんぺん。
これで賊は配下以下、完全に挑発に乗り、バーサーカー状態となった。
補足しよう。
バーサーカーとは、「怒り狂う」と言う意味もあり、
ここでは我を忘れるくらい暴力状態に陥る事である。
下手をすれば敵味方の区別なく戦う事もあるらしいが。
しかし、賊どもはそこまで自分を見失ってはいないようだ。
「あのクソガキを捕まえろ~!! ぎったぎたにしちまえ~!!」
ボスの命令で、賊どもは怒りを全てロジェへ向け、
追跡を始めたから。
ロジェは、そのまま余裕をもって目的地の村へ走り、ときたま立ち止まり、
お尻をぺんぺん。
これがロジェの仕掛けた罠。
こうやって賊どもの火のような怒りへ油をガンガン注ぎ、
ロジェへ執着させたのである。
結果、完全に型にはまった賊どもは、愚かにも村の目前まで追跡。
「お~い!! 衛兵さ~ん!! こっちで~す!!」
手をぶんぶん打ち振り、助けを求めるロジェの大声に応え、
急ぎ現れた村の衛兵は総員100人。
こうして……ロジェを襲った賊どもは、3倍以上の衛兵達にぐるりと囲まれ、
あっさりと捕縛されてしまったのである。
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