第38話「ロジェの能力テスト&トレーニングには絶好の場所である」
……翌日午前5時30分。
「では、行ってきます!」
と言い、ロジェは手を振りながら、白鳥亭を出発した。
昨日、購入量を多めにしたから、本日の買い出しはお休み。
なのでオルタンス、バベット、そしてアメリーのフルメンバーが、
白鳥亭の出入り口前で、出発するロジェを見送ってくれた。
アメリーは正門まで見送ると言ったのだが、ロジェは「大丈夫」と言い断っている。
またアメリーの傍らには、従士となったばかりの黒猫擬態のナタンが居た。
ロジェから、留守中の白鳥亭におけるネズミ退治と警護を命じられたのである。
万が一何かあれば配下達とともに「にゃあにゃあ」と大騒ぎして鳴き、
衛兵か、第三者を呼んでくれるはずだ。
さてさて!
門番へ冒険者ギルド所属登録証を提示。
契約通り午前6時少し前に正門を出たロジェは、足取りも軽く街道を進む。
ロジェの装備は革兜、革鎧、バックラー、スクラマサクス、ひのきの棒。
そして手紙と荷物を運搬する為にも使う収納の腕輪。
どこにでも居る、いち冒険者の姿である。
このロジェが、その気になれば、
世界をも簡単に支配出来る勇者プラス魔王の最強能力を持つとは誰にも分かるまい。
しかしロジェにはそんな壮大な野望はない。
ただひたすら平穏に、愛する想い人と楽しい人生を共有すべく、
やり直したいだけなのだ。
その基礎部分――人生設計は既に出来つつあった。
15歳の少年に変身しシーニュ王国王都へ逃れ、
たまたま泊まる宿を探している時……
街中で呼び込みをしていた宿屋白鳥亭の娘アメリー・ブーケを、
絡んでいた愚連隊『かぎ爪団』から救って知り合い、仲が深まったからだ。
3歳年上?18歳のアメリーは素直で優しく思いやりがあって、その上美しい。
何よりロジェを心の底から慕ってくれている。
パートナーしては理想の女子だ。
冒険者稼業をしばらく行い、いずれアメリーと白鳥亭を継ぐか、
新たに商売を始めても良いとも、ロジェは考えている。
そんな人生設計において、先立つものは何といってもお金である。
そこそこのお金を稼がねばならない。
という事で、冒険者ギルドで登録を行い、
この配送の仕事を手配して貰ったというわけだ。
この仕事の良い所は、時間に融通が利き、自分ひとりの時間が持てるところ。
なので勇者プラス魔王という自分を再確認する為に、
ロジェは自身の能力テストを思いっきりするつもりでいる。
……これまでロジェは、いろいろ機会を見てはテストを行っている。
シーニュ王国王都へ移動する際、転移、飛翔は存分に試し、練習した。
変身、威圧、支配のスキルもいろいろ試した。
次にビルドアップした身体能力を存分に試し、
表向き生活魔法のみ使えるとしていたので、
本来行使出来る魔法もガンガン試すつもりだ。
しばし歩くと、街道には人影がなくなった。
索敵にも反応はない。
最初の町は約50㎞先にある。
最高走行速度を試してみるか!
時速5㎞、10㎞、30㎞、50㎞、70㎞、100㎞……
もっともっと行けそうだ。
130㎞、180㎞、250㎞、300㎞……500㎞!!
まだまだ余裕だ。
ロジェは凄まじい速度で街道を走っていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
幸い、通行人が皆無だったから、ほんの5分間で、
ロジェは40㎞近く進んでしまった。
冒険者ギルドでクリスに聞いたところ、
ギルド所属の冒険者の快速レベルというのは、
平常で時速30㎞、瞬間的に時速50㎞から70㎞を出すレベルだという。
さすがに時速70㎞を出すのは身体強化の魔法を使いこなせる術者に限られ、
ごくわずかだともいう。
という事で、あと10㎞ちょいで最初の町だが、
このまま行けば、いくら何でも超がつくほど到着が早すぎる。
先方で到着を待っている担当者から見たら、不審に思う事間違いなしだ。
出発から到着時間1時間30分見ておけば、そんなに怪しまれないだろう。
……1時間くらい、どこかで能力テストがてら時間を潰そうか。
能力テストに熱中し過ぎ、時間が押してやばかったら、
転移か、飛翔魔法を使えば良いし。
つらつら考えたロジェは、人影がないのを再確認、街道をそれ、原野へ……
地図で確認すると、この先には魔物が出没する岩だらけの荒れ地がある。
……そういえば、この辺りで、
魔物が馬車荷便や商隊を襲ったとクリスさんから聞いたっけ。
もし魔物に遭遇して、襲って来るようであれば倒しておくか。
戦闘になったら、魔境で魔王軍と戦った以来だな。
そんな事を考えながら、ロジェは荒れ地へイン。
おお、俺が想像した通りの光景だ。
ロジェの目の前に広がるのは、植物はあまりなく、
家くらいの巨大な岩が数多ごろごろしていたり、
切り立った絶壁がいくつもある荒涼たる土地であった。
索敵には遠くで、魔物の気配も感じられる。
ロジェの能力テスト&トレーニングには絶好の場所である。
まずは、飛翔魔法を使わず、ロジェは垂直にジャンプした。
軽く飛び上がるだけで、一気に50mほど身体が宙に浮いた。
そのまま、地上へ落下するが、
だん!と地響きを立て着地しても、痛みは全く感じない。
次には、更に力を入れ、飛び上がると100m上空へ。
引き続き、そのまま落下。
だああん!!
同じくショックはあるが、痛みは皆無である。
……結局、何度かジャンプした結果、思いっきりジャンプすると、
500mの高さまで垂直ジャンプ可能な事が分かった。
さすがに500mから落下、着地するとほんの少しだけ痛みを感じた。
しかしそんな痛みはすぐ消えた。
身体の耐久性は勿論、回復力も相当なポテンシャルがありそうだ。
よ~し、思った以上に良い結果だ。
最初に絶壁に登ろう。
そして転がっている大岩でも遊んでみるか。
ロジェは、たたたたたっと走り、一番手前にあった高さ200mの断崖絶壁へ向かい、
ぱ~っとジャンプし、軽々と頂上へ立った。
そして、そこから全く臆せず飛び降りると、転がっている岩々から岩々へ飛び移り、
空中回転したりして、自身の身体能力を存分に楽しんだ。
また、ジャンプ&重力降下のみでなく、飛翔、浮遊の秘法も存分に使い、
荒れ地を縦横無尽に駆けめぐったり、飛び回ったりしたのである。
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