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グリフォン VS ライトくん(元Bランクパーティ、16歳)

 激突音が街中に響き渡った。


 上空で発生したその衝撃は直接の接触すらない地上にさえその振動を波及させ、大地のあげる鈍い唸り声は街の人々を恐怖でうずくまらせた。


 そのしゃがみこむ最中に想像しただろう、凄惨たる破壊を。いちいち空を見上げて走っていた訳ではない。だがその音圧は間違いなくその魔物の攻撃性をフルに何かの物質に叩き込んだ音だ。人々は身をすくませて頭を垂れた後、やがておそるおそるといった具合に空を見上げはじめ……



 そこでそれを眼にして呆然とした事だろう。


 鳥が()()()()()()



 たった今猛スピードで空を突き進んでいたはずのあの巨鳥が空中で不自然に静止しているのだ。その刀剣のようなかぎ爪にはギリギリと渾身の力を込めているようで、その足先から頭頂部までが小刻みに震えている。にもかかわらずその巨体はその位置に固定されて動かないでいる。


 もちろん僕も呆然としていた。


 鳥が止まっている。


 僕が何の気なしに手前に出した右手が鳥の足指を掴み、鳥を()()()()()


 伸ばしたその腕は関節を曲げてその激突の重さを吸収するような事すらなかった。あますことなく全身を駆け巡った鋭い衝撃は僕の身体に一かけらの痛みすらもたらさなかった。巨鳥とイージスの盾との間に挟まれながら、圧し潰されることもなくただ何事も無かったかのようにこの身は存在し続けている。


「な、なんだどうなっている?」

「あのグリフォンは何故あそこで止まっているんだ?」

「おい、足先に何か見えないか? あれは……?」


 グリフォンは止まった。まったく不思議だがきわめて簡単な話だ。僕がグリフォンの渾身の体当たり以上の力でそれを止めたからだ。()()()()()()()()()()()()()()()


 「は……はははは! はははははは!」


 前に突き出していただけのその手をただ思い切りぎゅっと握り締める。その指がバキバキと音を立てながらグリフォンの硬い指を突き破り、皮も肉も一緒くたにその足先を固く掴む。


 怪鳥がけたたましく悲鳴を上げた。その苦痛を振り払うように大仰に翼をはばたかせ空へと逃げようとするが、それもただ足先を軸に身体を四方八方に振り回すのみに終わる。()()()()が許さなければこの位置からは絶対に逃れられない。指を捉える右手、ステータスウィンドウを掴む左手、どちらも微かにすら動く気配は無かった。


「はははははは!!」


 グリフォンの足先をひっつかんだまま、逆走する稲妻のように更なる上空へとばく進する。急上昇の圧力に晒された巨鳥は身動き一つ取れていない。眼球が壊れたのか目の端に血が滲み、口からこぼれ出た舌がばたばたと揺れている。



 辿り着いた先は天空!


 街が一望できるほどの超高度で既に浮力すら失ったグリフォンを片手に地を見下ろす。


「こういう事だったんだな」


 眼下の豆粒のような一人一人を全て視界に捉え、腕にぐっと力を込める。


「こういう事だったんだな、ユニーク(唯一無二)って」


 込めた力を思いっきり地面に向けて振り下ろした。星が落ちるように巨鳥はその全体重を地上へと落下させていき、緩まぬ超速度で広場の人口池へと激突した。


 水のクッションを突き抜けてなお余りある勢いはグリフォンを体の半ばまで池の底にめり込ませ、その衝撃の中心に巨大な水柱を作り上げる。水しぶきが街中に雨のように飛び散り、大地を揺らす振動と共に広く広く9999の力を知らしめていく。



 こうして街にグリフォンが乱入するという異常事態は奇跡的に一人の死傷者を出す事も無く終結した。それは僕個人の力が冒険者Aランクパーティを越えるものであるという事の証左でもあった。

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