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六十九話『俺の目的には欠かせない物があそこにはあるんだ……。』

「あなた様……! 良かった……やっと合流出来ました……! 大変です! 迫り来る……その……ハ、ハイドラの軍勢に対抗する為、街の上の人間はあなた様を人質に取るそうです!」

 メイド長は慌ててハイドラへ歩み寄る。

 そしてそこで、ハイドラの変化に気付いた。

「あなた様……! 髪が弟様のように……赤く……」

 正確には淡い赤、桃色に近い。

 ハイドラは自前の髪を弄りながら、少し言いづらそうに答えた。

「力を解放してしまったんだ……」

 メイド長は一瞬、驚いたような表情を浮かべたが、すぐに落ち着いた様子で言った。

「そうですか……。では残されたのは……私とあなた様と……」

 そこで琥珀へ視線を移すと、首を傾げて続ける。

「どうしてあなたが……?」

「それは私の台詞です。メイド長はなぜ生き残れたのですか?」

 琥珀の抱いて当然の疑問に答えたのは、ハイドラだった。

「それはメイド長が、俺と契約を結んでいないからだ」

 それを聞いて琥珀は、苦笑いを浮かべる。

 返ってきた答えは、思っていたものより、実に単純なものだった。対して琥珀が生き残った理由を、何も知らないメイド長に話すには少し面倒である。琥珀は、追々話してあげるから。と少々、上から目線で考えつつ、話題を反らす方向に持っていく。

「それでハイドラ様。これからどうするのですか?」

「今の俺が奴らに遅れを取る事は考えられんが、お前達はそうも行かないだろうからなぁ……」

 ハイドラは琥珀へ視線を移す。

 琥珀ほどの実力があれば、強敵に襲われても一人で逃れる事は出来るだろうと独りでに頷き、すぐにメイド長へ視線を移した。

 首を傾げるメイド長が、ハイドラを見上げて不安げな表情を浮かべている。

 確かにその実力は琥珀が来る前までなら、メイド達の中では一番の実力者である。しかし琥珀との実力差は大きく、はっきり言って心許ない。

 しかしそれでも残された戦力が、一位と二位だったのはありがたかった。

 ハイドラはそこでも大きく頷くと琥珀とメイド長の手を取って続ける。

「よし、ここからは三人で行動するぞ。この領地から逃れるんだ。そして新たな領地で……またやり直す。しかしその為に、一度屋敷に戻る必要がある」

「それはなぜですか?」

 琥珀の冷静な問いに、ハイドラは腕を組んで答えた。

「俺の目的には欠かせない物があそこにはあるんだ……。地下室を目指すぞ」

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