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おわかりいただけたのでしょうか




「……あの、私、何か変なこと言いました?」


 私が固まったのを見て、恐る恐る尋ねる痴女。


 ……だが返事する余裕はない。

 さっき、あえて今からを強調し、化けの皮を剥がそうとした――彼女がマンドラゴラだなんてありえない――という私の罠を、痴女は飛び越えた。


 マンドラゴラに目で伝えたことを、痴女も知っていた。

 そしてルナディムードの反応で、魔法を操れる古代龍の彼でも心は読めないということがわかる。


 この場合、考えられるのは二つの可能性。

 まず、痴女は心を読む系の加護を持っている。

 ……もう一つは――、認めたくはないが、痴女は本当に私のマンドラゴラだった。それなら説明がつく。

 他に確証がほしい。


 さて、どうするか……。


「……私昨日の晩ごはんは何?」

「ビーフシチューですね、創造主様」

「……最初に作ったマンドラゴラのタイプは?」

「……えーと、私は知っています、ですがこの場合、創造主様のほうがよくわからないので言っていいのでしょうか?」


 ……手強い。

 確かに最初のマンドラゴラはかなり適当に扱っていたから、よく覚えていないのは事実。あの時は完全に食料としかみなしていなかったしね……。

 では、私が知らないことはどうなんだろう?


「この子が今、何を考えてる?」


 そう言いながら、肩の子を指差す。


「はい。『……女王もなかなか信用してもらえなくて大変だねー』と考えています。……もう、あなた達、他人事ではありませんわ!」


 当事者なのに傍観者状態のマンドラゴラに憤慨する痴女。


 ……女王と来たか……。

 複雑な気分を味わいながら肩の子に目で『本当にそう?』と尋ねると、『うん、そうだよ?』って返してきた。……いよいよ頭が痛くなってきたわ。


「……えー、うん、他に証明は?」


 半ば諦めた私は、若干投げやりになりながら痴女に尋ねる。


「はい、これを」


 痴女はニコッと微笑み、腕の皮膚の一部をビリっと剥ぎ取り、私に渡す。


 ……なにげにグロいわ。

 やる前に一言言ってよ、危うく可愛らしい悲鳴を上げるとこだったわ。


「……いや、これって渡されても」


 ……どうしろと?


「加護を発動してください、再生するはずです」

「――何を言ってるんだか、植物じゃないんだから……」


 あははと軽く笑い飛ばす。


 確かに貴女の体の皮膚は植物のような緑色で、所々に花も咲いているけれど、流石にそれで自分のことを植物だと言い張るとか、思い込むには無理があるでしょう。

 花のあれは髪飾りとか、そういうファッションよね?……そうだと信じたい。でないとすごいグロいことになる。うん、すごいグロい。


 ――人間の体中に植物の根が至るところに生えていて、皮膚を突き破って花を咲かせている光景なんて想像したくないわ。

 これが正真正銘の植物人間よ。


 笑い飛ばしながら――まあそこまで言うならいいでしょう、どうせ何も起こらない――と、適当に手に握る皮膚の一部に加護を発動する。

 しかし――


「――え?」


 加護を受けた皮膚の一部は瞬く間に成長し、ポンという軽快な音と共に、一匹のマンドラゴラがぴょんと私の手のひらから華麗に床に飛び降りる。

 そして体をコマのように回転させながら、右手を上げて敬礼した。


「ほう……?」

「…………」

「おわかりいただけたのでしょうか」


 ――興味深そうに見つめるルナディムード。

 と、

 ――言葉を失う私。

 と、

 ――得意げに微笑む痴女。


 ……いよいよ、畑ではなく、人間の体からも生まれるようになったのね、マンドラゴラは。

 頭が痛いわ。




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