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勝ったッ!




 反応に困るわ。


『またまたぁ。こんなたわわのボインボインでボン・キュ・ボンの大人のお姉さん、色気ムンムンで露出狂の痴女が私のかわいいマンドラゴラってわけがないでしょうが!』


 と言いたいのが正直なところ。

 あんな全年齢向けの可愛い子達が、いきなり歩く十八禁になるなんて、目を背けたくなる現実だわ。

 内心で薄々わかっていたから受け入れよう派と、目を背けよう派の両派閥がせめぎ合い、抗争を起こしている。


「……どうしてマンドラゴラだと断言できる?」


 素直に受け入れるのも抵抗があるので、とりあえず一風変わった責め方でルナディムードを詰問しよう。


「……そうか、人間のお前はわからないのか。コイツから植物系魔獣特有の波動が発せられているぞ」

「失礼ですわ! 私は魔獣ではありません」


 抗議する痴女。


「そうだな、少し違う」

「そんな人間ではどうしようもないことを言われても……他に証拠はない?」


 論理的に行きましょう。


「逆にお前に聞くが、どうやってソイツラを従えてんだ? 動くマンドラゴラ見たこともねえし、聞いたこともねえ、ましてや人間の言うこと聞くなんて」


 尋ねる私に、ルナディムードが逆に質問する。


「え?……うーん…………誰にも言わない?」


 数秒の逡巡の後、私は慎重に尋ねる。

 他の植物と合体させ、全くの新種を生み出すという禁断の領域に――毎日出入りしていることを知られたら、命が危ない。

 世の中、うるさい奴や頭固い奴多いからな。神殿全般と大多数の国は――不幸なことに、そういう奴らに仕切られている。


「言うか! そもそも誓約忘れてねえか? お前、疑り深ぇな」

「言い方ッ! 疑り深いではなく、賢いと言いなさい」


 人でなし集団の中で生き延びるにこれくらいが丁度いい。


「そうです! 創造主様は大変優れた叡智をお持ちで、その御蔭で我々一族は繁栄できました」


 私を陶酔した表情で褒め称える痴女。

 ……貴女が話に参加するとややこしくなるから、できれば何も言わずにシャラップしていただきたい。


「……誓約誓約言ってるけど、私何も感じないのよ。本当に信じていいのか」

「……どうやったら信じるんだ?」

「………………いや、いい。それよりマンドラゴラの話だね」


 頭の中で色々考えた結果、今はまだ早いと判断し、話を戻す。

 人間なら、大抵の相手は丸め込める自信がある。だが古代龍は別。正体が謎に包まれている生物はどこが突破口かもわからない。だからこそ慎重にならざるを得ない。


「世界樹の近くで見つけて、育てたらこうなってたね」


 うん、嘘は言っていない。


「……胡散臭えぇ……」


 ルナディムードは苦笑を浮かべる。

 流石に色々察したか、彼のこれ以上の追求を避けるべく、矛先をそらすために私は痴女に尋ねる。


「貴女、名前は?」

「まだありません。創造主様」

「……どの国出身?」

「人間ではありませんので……創造主様に属しております」

「……マンドラゴラって言うんなら、証明して」


 聞いても埒が明かなさそうなので、直球で行くわ。


「はい」


 意外にも痴女はすんなりうなずいた。

 まあそっちがそのつもりなら――私は肩の子に、『今晩は黒龍ステーキだね』と目でさり気なく告げつつ、痴女に向き直る。


「私が”今から”心に思い浮かべることを言いなさい」


 勝った。心の中で勝利を確信した私だが――


「はい。――あ、あの……黒龍ステーキはやはり言ったほうがいいのでしょうか?」


 ――え?


「なんだと!? ふざけんな、下僕受け入れたからって殺していいとは言ってねえぞ!」


 ルナディムードに返事を返す余裕もなく、私の頭は白くなっていた。




(勝ってません)

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