噛み合いすぎて、故に噛み合わない
「どうした?」
頭を抱える私に、ルナディムードは不思議そうに尋ねる。
「……いえ……」
運がいいのか、悪いのか。――そもそも最初から噛み合わないなんて。
私はジェシカ姉さんの話を聞いて、古代龍は敵意あり、攻撃する可能性あると推測し、仮定した。
……実際、それは合っていた。驚くほど噛み合っていたが、驚くほど噛み合わなかった。
古代龍ルナディムードは確かに敵意があり、攻撃する気だった。――が、それも目標が現れなければ、取らない行動だろう。
そう仮定していた私が飛び出て――そう行動していた古代龍が私を見つけて――両方噛み合った。
あとは聞くまでもない。
私の仮定は間違いない。故に、気づけない。
だから、運の問題としか言いようがない。
古代龍とやり合う気なんてサラサラなかったが、見つけられた上に襲われたら、生き延びるために戦うしかない。
これみよがしにため息をついて、
「……よし、大体理解できた。しかしまだいくつかわからない事がある。ルナディムード、あなた、攻撃する理由が希薄だと思わない? こんなところで村ができたからって……」
「こんなところだぁ? 最高クラスの魔獣がうようよいる地域に、そこそこの規模の村ができる事自体が普通じゃねえんだよ。
俺が上空から見たところ、軍隊は見つからない。――代わりに変な植物の魔獣がそこら中にいる――お前だってちょっと考えればどういうことかわかるだろう」
彼は本気で言ってる? と尋ねる気満々の顔でこちらを見つめた。
「……反論の余地もないね。その通りだね。――と言いたいところだけど、異議あり。変な植物の魔獣って……この子、ただのマンドラゴラだよ?」
そう言いながら、肩に乗っている子を見せる。
連絡係の子もキュートにワイワイと手を振り、アピールする。
「たわけ。歩く――どころか、走る。空を飛ぶマンドラゴラがどこにいる」
そしてルナディムードはポツリと、『弾丸のように飛んできたヤツもいたな……』と付け加えた。
マンドラゴラの集中砲火を食らった当時の惨状を思い出したのだろう、苦虫を噛み潰したような表情だった。
ごもっとも。
「空を飛ぶ植物なんて珍しくありませんよ。たんぽぽだって――」
内心では同意しながらも、聖女の営業スマイルで反論を試みると――
「マンドラゴラは空を飛ばない。いや、そもそも動かない」
真顔でルナディムードは断言した。
「……はぁ。まあいいでしょう。でもこの子達を魔獣だなんて流石に言い過ぎと思いますよ」
「事実だろう。動くコイツラを見た瞬間、そう確信した」
「違うってば」
「そうです黒龍。訂正しなさい。私達は創造主様の手により、新たに生まれた存在です。魔獣なんて汚らわしい下等な存在とは違いますわ」
同じく異議あり! の痴女がまた口を開き、話に参加する。
それに対し、ルナディムードは痴女を一瞥し、
「一応聞くが……お前、コイツを主と認めるのか?」
コイツ――と私を見ながらそう痴女に尋ねた。
その質問に、痴女はうっとりとした表情で、優雅に胸に手を置き、
「全く、何を言い出すかと――当然ですわ。創造主様はこの世にて、バルティア様を除いて、唯一無二の至高な主ですわ」
私へ熱い視線を送りながら、そう声高に宣言した。
……色々あって、まずは第一感想から述べさせてもらうわ。
うん、そうね、確かに私の僕にふさわしいと思う。
唯一無二と言いながらもバルティア様をさり気なく入れる辺りが、私そっくり。
ツッコミ所は、バルティア様を除いて、のところね。それ、唯一無二と言わない。
それに除いてはなんだよ除いては。敬っているようにと見せかけて高度なディスり?
「ルナディムード、彼女について教えて。何者かわかるって言ったよね?」
「……それを俺に尋ねるのか。俺よりお前のほうが詳しいと思うが」
「確証がほしいのよ」
半分は本当で半分は嘘。
可能性と状況証拠を合わせて考えただけで、イマイチ。
――認めたくない気持ちもある。
だから中途半端な推測より、一番知っていそうなヤツの口から答えを聞かされたほうが良いと思った。
ルナディムードは少し躊躇した後、答えを告げる。
「……マンドラゴラ、だと思う」




