第5章 最終話
初めて書いたものに、おつきあいいただきましてありがとうございました。
これで最終話になります。
いつかまた、この続きは書きたいと思います。
読んで下さるあなたに心からの感謝を。
週末くらいには、また何か新しいお話書き始めたいな、と思っています。
良かったら読んで下さい。
その場の勢いで書いていくので、どんなお話しかは?ですが、またお会いいたしましょう。
ニルガ傭兵団あげてのリーナと前ラージス帝王ジェイムスの婚儀は三日三晩続いた。
十九になるリーナのウェディングドレスは、リーナの要望通り沢山の真珠に飾られた美しい豪奢なものだった。
またいくつもの着替えるドレスも、それは豪華なものだった。
飲めや歌えの大騒ぎに、全員に配られた祝儀の祝い金も大層な額で、文字通り皆機嫌よくリーナの結婚を祝った。
ただし、ジェイムスに向ける視線はきついものだったが。
そんな中、元ラージス一行はど派手な正装に身を包み、剣を掲げてはおのれの主人に鬨の声をあげるので、あいかわらず、そこだけキラキラしく浮いていたが、さすがニルガの男達は、見ない、考えない、あれは人間じゃない、とのスルースキルを身に着け、自分たちの楽しみに没頭していた。
そして、ここに一人感激のあまり身を震わせるハジムがいた。
ハジムはジェイムスのジェイムスたる所以の、その神々しいばかりの婚礼衣装の数々に勝るとも劣らない美丈夫ぶりに、リーナそっちのけで見惚れていたが、おのれの作戦の開始が早すぎた、と後悔していた。
それはリーナを思うあまり、思い沈む主人に「どんとこい!同情大作戦!!」なるものを授けた後悔だった。
例のキスマーク事件から、降りてこないリーナに、その周囲に、派手に恋煩いのため、ジェイムスがまいっているのをアピールし、ほら、ほら、リーナあなたの手を待っている哀れな小鹿がここにいますよ!とアピールするために、本当はしっかり食事をしているのだが、わざと栄養を繊毛種であるギルに注ぎ込み、見た目はやつれたように見せる、ハジム呼んで「どんとこい!同情大作戦」を敢行したのだが、会議がそれを始めてから二週間後だったので、せっかくのジェイムスの鍛えられた筋肉が落ちて、
この数か月で元に戻りつつあると言っても、ハジムの目にはまだまだだと映るのだった。
勿論、会議には自分が腕をかけてジェイムスにほの暗いメイクもばっちりに、触手も色艶よくよく育っていたので、それを黒く塗るのも忘れなかった、職人ハジムだったが。
ジェイムスといえば、片時もリーナの傍を離れず、そのリーナの体のどこかに残っている人としての片手をいつも添えて、決して放さなかった。
その為自然、リーナが夫となったジェイムスの口に、酒や食べ物をせっせと運ぶことになる。
いつぞやの反対に、父であるグレンがリーナの元に口をあけ、自己主張している。
いよいと三日目の夜も更け、リーナはジェイムスの腕に抱かれ、初めての共に寝る夜を迎えた。
ジェイムスは甘い言葉の数々を腕に抱くリーナに雨あられのように降らし、それに父グレンも負けずとリーナに愛の言葉をその低い色気あふれる声で囁く。
そう、リーナはジェイムスの腕に抱かれて、いや、触手に包み込まれて二人の部屋に向かっている所だが、その片手は父グレンにしっかりと握られ時折その指に父のキスが降る。
ちょっと、何か違う気がするリーナだが、夫になったジェイムスも、そのジェイムスに合わせて、一緒に歩くグレンも、とても嬉しそうだし、う~ん???な感じだ。
新居になる階の、寝室まで運ばれたリーナは、その大きなベットを目にして、少し恥ずかしかった。
が、それも、
「ねえ、ねえ、俺ベットちゃ~んとあっためておいたよ。えらい?えらいでしょ!」
そう言ってベットの潜り込んでいるギランをみて、ため息をついた。
枕元に座り込むジュールは、リーナを見て、目でベッドサイドのテーブルの上にあるグラスを指す。
「今からでも遅くないよ。選ぶといいよ。即効性の媚薬と即効性の毒草だよ。危険なものじゃないから安心してね。」
そうニコリと王子様スマイルを向けてきた。
うん、毒草、って時点で、それって危険だと思うし、それにね、二つしか説明ないけど、グラス三個あるよね?
説明できないグラスに関しては聞くのが怖いわ。
チルニーはベットに立ったまま、
「ルークさまから、少しでもリーナ様のご負担を減らすべく処女仕様の秘径とマッサージをお教えいただきました。」
「勿論、きちんと効果は数多く実証いたしました。ご安心下さい。」
そうにっこり微笑んで指をワキワキさせる。
実証って、あんた、どれだけの乙女を食い漁ったの!ばか、ばかなの!
とりあえず、父にお願いして、馬鹿なペットズを寝室から追い出してもらった。
ギランはジェイムスの触手に思い切り絞められかじられて、叩き出されてたけど、あれ?触手いつから歯がはえて、舌まで・・・・何故にバージョンアップしてるの?
私が何か言う前に、ジェイムスが、
「初めての夜のために、シルクのシーツも取り寄せ、シーツさえも手袋でなくてはベッドに触れらせなかったのに!・・・それを、誰も触れさせなかったベットを!・・・今度という今度は、ギラン!こ・ろ・す。」
そう言って体を震わせ怒り狂っていた。
初めて男の人に、ジェイムスに抱かれた夜は、ジェイムスの激しさに溺れる私を、父の手が優しく髪をなでてくれたり、背中をさすってくれて慰めてくれた。
ジェイムスに嵐のように翻弄される私に、その口づけがジェイムスのものなのか、父のものなのかも曖昧な時間の中に漂う私に、なぜかペットズまで、いつの間にか傍にいて、
「大丈夫ですよ、怖いことなどありません。」
「愛しあうのは悪くないよね。」
「ずっち~、俺もまざりた~い。」
だのの声が聞こえる。
「さすが我が主、素晴らしいの一言でございます。」
ハジム・・・。
何故か初夜以降も、二人きりの寝室ではないけれど、ジェイムスと父グレンの距離が近づきつつあり、ルークいわく、男は裸のつきあいが大事だ、とか言っている。
ねえ、ルークそれって意味が違くない?
なにはともあれ、リーナは一度皆であの辺境の地に、あの花の下で花見をしよういと企んでいる。
初めての子ができたらしい、まだぺったんこのお腹を見ながら、過保護ぶりヒートアップした父たちとジェイムスに、どうやって話をもちかけるか考える。
ジェイムスに言わせれば絶対女の子だという。
なぜなら例えおのれの子であろうと、男が私に抱えられていると考えるだけで狂いそうになるらしい。
馬鹿だ・・・。
それに追随してハジムが何やらどこぞから高位神官を連れてきて、なにやら女の子誕生を祈祷させていたが、あわれギランにみつかり、
「え~、坊さんじゃん」
その一言でその場ですぐ殺されてしまった。
ギランの中で神官はすぐ殺していいリストに入っているらしく、その後切れたハジムの触手に縛り上げられ吊るされていた。
相変わらずのニルガの日々だが、このニルガは最早国家をこえた巨大組織になりつつある。
いずれ自分の時代が来るだろうが、私は迷わず自分の心に花が灯す方に、灯す方に生きていく。
それでどれだけ人を殺すことになっても迷わない。
私はいつまでもわがままな子供でいい。
壊れた彼らの愛しい子供であり続けるのだから。