第10章:混沌からの脱出
自分が完全に意識している闇の帳の下を歩くことほど恐ろしいものはない。そして、その闇
に至ったのが自分の行動の結果であることを完璧に理解しているという事実が、さらに恐
ろしさを増す。ティミトリーの街では、この感覚が住人全員にひしひしと伝わっていた。なぜ
なら、街は常に明るく照らされているにもかかわらず、その住民たちの心と行動は、彼ら自
身の魂の闇で満ちあふれているという、実に偽善的な現実を知っていたからだ。
アークは街を、見えない影のように歩いていた。一方ユアンは、友人の見せかけの平静さ
に、ある種の苛立ちを感じていた。
「あれは一体何だったんだ?」 ユアンが尋ねた。
「何が?」 アークが答えた。
「なぜ彼女たちを助けなかったんだ?」 ユアンはアークの肩を掴み、無理やりこちらを向か
せた。
「もう言っただろう。計画は完了したんだ」
「嘘だ。お前は出発する前に、レベカと話をするって言ってた。…その…」 ユアンは、アークが
本当に何をしようとしていたのかに気づき始めていた。親友として、彼の頭の中を何が駆け
巡っているのか、何となく分かっていたのだ。「お前は彼女を殺そうとしていたんだ… お前自
身の手で命を絶とうとしていたんだ」
アークはため息をついた。「彼女は俺たちのことを知っていた。もし誰かに尋問されれば、
俺たちが誰だか話していただろう。実際そうなったんだ」
「彼女はお前を愛していたんだぞ。それでもなお、お前は彼女を殺そうとしていたのか? ど
んな英雄がそんなことをするんだ?」
「誰もいない」
「じゃあ、どういうことだ?」
「お前が俺を英雄と勘違いしているだけだ。俺はそんなものじゃない」
ユアンはその言葉に凍りついた。アークがこれまで見せてきた行動と動機は、完全にそれ
とは反対のことを示していた。目の前にいるこの男は誰なのか? 自分を愛する者を殺そう
とする人間とは、どんな人間なのか? そんなことは、リノ・ブランコのような地獄の底から這
い出た影だけにできることだ。そして、ここで二人のうち、本当に善良な者が誰だったのか
が明らかになったのだ。
カナリィでさえ、アークの返答に恐怖を感じていた。彼女の以前の持ち主たちは、誰も彼の
ようではなかった。大いなるダルタロンは、約千年前、現在のどの王国も存在しない時代
に、社会正義に強く縛られた少年だった。偉大なる剣聖ウィルゴットは、自分の王国を惜し
みなく愛し、創造主の目には当時の他のどの国よりも正しいと映っていたため、東方の島
嶼王国からの侵略から国土を守る力を与えられた。彼女の持ち主たちの中で、彼は剣の
最大の力を引き出すことに成功した唯一の人物であり、それがあまりにも完璧だったため、
自分自身の能力で頂点に立ったのだと錯覚し、カナリィをひどく軽蔑していた。最後の持ち
主は、約250年前の征服者ゴーテンだった。当時のアヘト=ミットは、ティミトリー州だけで
形成されたばかりの小さな王国に過ぎなかった。彼は優しく、非常にカリスマ性のある少年
で、民衆の愛を一身に集め、大陸征服者という称号を与えられた。もしカナリィに尋ねれ
ば、彼は三人の中で最も特別で、彼女を最も愛されていると感じさせた人物だと答えるだろ
う。創造主が彼女に、持ち主たちを心の底から愛するよう定めたのだから、それは大いなる
意味を持つ。
今、彼女はアークを自分の持ち主として抱えていた。この世界の三つの伝説に振るわれた
後、まさか彼が選ばれるとは、彼女は思ってもみなかった。味気ない少年、愛情なく、何か
に捧げる熱意もなく、感情もなく、情熱もない。創造主の導きがなければ、せいぜい正しい
ことさえも中途半端にしかできない少年。いや、正しいことを求められても、完全には遂行
できない。自分を愛する者たちを救うことさえできないクズ、枯れ葉のならず者、霊的な存
在としての笑い話——誰も気に留めず、誰もその存在を知らない。アークは他の三人の始
まりと比べることもできない。彼らは冒険の初期から、カナリィに自分の助力の有無にかか
わらず偉大な英雄になれるという希望の兆しを与えていた。しかしアークは、彼女に裏切り
の気配、破壊の気配、そしてもし力を与えられれば大悪人になるであろう気配をもたらし
た。間違いなく、彼女を背負うには最も不向きな者だった。だがまあ、それが創造主の計画
というものだ。
アークは、自分の返答にユアンが立ち止まっているのを見て、歩き続けた。「今夜を過ごす
場所を探す。レベカとクロエが訪ねてきたあの午後、俺たちがいた公園が頭にある」
「ついて行く」 ユアンは不満を込めて言った。実際、ついて行きたくなかったのだ。
気まずい沈黙と、張り詰めた緊張が彼らの歩行を包み込んだ。二人とも何かを言いたくな
かった。まるで、同じ場所へ向かう見知らぬ二人になってしまったかのようだった。
叫び声と嘆きの声が街中に響き渡っていた。反乱軍が暴れ回り、軍隊のあらゆる抵抗を打
ち砕き、殺戮を繰り広げていた。瀕死の者のうめき声、あらゆる場所にあふれ出る血の川
の音、そして何が起こってもおかしくないという感覚が、いつものようにリノ・ブランコの記憶
を呼び覚ました。
二人の間に形成された緊張を察知したカナリィは、優しくアークに話しかけることを決意し
た。
「アーク、一つ質問があるの」
彼は何も答えなかった。
「レベカが死ぬのを見て、何か感じた?」
「特に何も」
ユアンは変な目で彼を見た。なぜ彼が、約三十分間も沈黙を守った後にそんなことを言う
のか、理解できなかった。
カナリィは、アークが自分に与えた、あまりにも素っ気なく直接的な返答に震え上がった。
以前の持ち主たちと共に旅をしてきた中で、こんな返答を聞いたのは、その当時の愛しい
人と共に倒したヴィランたちからだけだった。
さらに約二十分後、彼らはあの公園に到着した。そこで彼らは、この世で一番硬いベンチ
に座って夜を過ごしたのだ。そのベンチは、地面でさえも座るよりマシだと思えるほど、ひど
いものだった。
***
自分が完全に意識している闇の帳の下を歩くことほど恐ろしいものはない。そして、その闇
に至ったのが自分の行動の結果であることを完璧に理解しているという事実が、さらに恐
ろしさを増す。ティミトリーの街では、この感覚が住人全員にひしひしと伝わっていた。なぜ
なら、街は常に明るく照らされているにもかかわらず、その住民たちの心と行動は、彼ら自
身の魂の闇で満ちあふれているという、実に偽善的な現実を知っていたからだ。
アークは街を、見えない影のように歩いていた。一方ユアンは、友人の見せかけの平静さ
に、ある種の苛立ちを感じていた。
「あれは一体何だったんだ?」 ユアンが尋ねた。
「何が?」 アークが答えた。
「なぜ彼女たちを助けなかったんだ?」 ユアンはアークの肩を掴み、無理やりこちらを向か
せた。
「もう言っただろう。計画は完了したんだ」
「嘘だ。お前は出発する前に、レベカと話をするって言ってた。…その…」 ユアンは、アークが
本当に何をしようとしていたのかに気づき始めていた。親友として、彼の頭の中を何が駆け
巡っているのか、何となく分かっていたのだ。「お前は彼女を殺そうとしていたんだ… お前自
身の手で命を絶とうとしていたんだ」
アークはため息をついた。「彼女は俺たちのことを知っていた。もし誰かに尋問されれば、
俺たちが誰だか話していただろう。実際そうなったんだ」
「彼女はお前を愛していたんだぞ。それでもなお、お前は彼女を殺そうとしていたのか? ど
んな英雄がそんなことをするんだ?」
「誰もいない」
「じゃあ、どういうことだ?」
「お前が俺を英雄と勘違いしているだけだ。俺はそんなものじゃない」
ユアンはその言葉に凍りついた。アークがこれまで見せてきた行動と動機は、完全にそれ
とは反対のことを示していた。目の前にいるこの男は誰なのか? 自分を愛する者を殺そう
とする人間とは、どんな人間なのか? そんなことは、リノ・ブランコのような地獄の底から這
い出た影だけにできることだ。そして、ここで二人のうち、本当に善良な者が誰だったのか
が明らかになったのだ。
カナリィでさえ、アークの返答に恐怖を感じていた。彼女の以前の持ち主たちは、誰も彼の
ようではなかった。大いなるダルタロンは、約千年前、現在のどの王国も存在しない時代
に、社会正義に強く縛られた少年だった。偉大なる剣聖ウィルゴットは、自分の王国を惜し
みなく愛し、創造主の目には当時の他のどの国よりも正しいと映っていたため、東方の島
嶼王国からの侵略から国土を守る力を与えられた。彼女の持ち主たちの中で、彼は剣の
最大の力を引き出すことに成功した唯一の人物であり、それがあまりにも完璧だったため、
自分自身の能力で頂点に立ったのだと錯覚し、カナリィをひどく軽蔑していた。最後の持ち
主は、約250年前の征服者ゴーテンだった。当時のアヘト=ミットは、ティミトリー州だけで
形成されたばかりの小さな王国に過ぎなかった。彼は優しく、非常にカリスマ性のある少年
で、民衆の愛を一身に集め、大陸征服者という称号を与えられた。もしカナリィに尋ねれ
ば、彼は三人の中で最も特別で、彼女を最も愛されていると感じさせた人物だと答えるだろ
う。創造主が彼女に、持ち主たちを心の底から愛するよう定めたのだから、それは大いなる
意味を持つ。
今、彼女はアークを自分の持ち主として抱えていた。この世界の三つの伝説に振るわれた
後、まさか彼が選ばれるとは、彼女は思ってもみなかった。味気ない少年、愛情なく、何か
に捧げる熱意もなく、感情もなく、情熱もない。創造主の導きがなければ、せいぜい正しい
ことさえも中途半端にしかできない少年。いや、正しいことを求められても、完全には遂行
できない。自分を愛する者たちを救うことさえできないクズ、枯れ葉のならず者、霊的な存
在としての笑い話——誰も気に留めず、誰もその存在を知らない。アークは他の三人の始
まりと比べることもできない。彼らは冒険の初期から、カナリィに自分の助力の有無にかか
わらず偉大な英雄になれるという希望の兆しを与えていた。しかしアークは、彼女に裏切り
の気配、破壊の気配、そしてもし力を与えられれば大悪人になるであろう気配をもたらし
た。間違いなく、彼女を背負うには最も不向きな者だった。だがまあ、それが創造主の計画
というものだ。
アークは、自分の返答にユアンが立ち止まっているのを見て、歩き続けた。「今夜を過ごす
場所を探す。レベカとクロエが訪ねてきたあの午後、俺たちがいた公園が頭にある」
「ついて行く」 ユアンは不満を込めて言った。実際、ついて行きたくなかったのだ。
気まずい沈黙と、張り詰めた緊張が彼らの歩行を包み込んだ。二人とも何かを言いたくな
かった。まるで、同じ場所へ向かう見知らぬ二人になってしまったかのようだった。
叫び声と嘆きの声が街中に響き渡っていた。反乱軍が暴れ回り、軍隊のあらゆる抵抗を打
ち砕き、殺戮を繰り広げていた。瀕死の者のうめき声、あらゆる場所にあふれ出る血の川
の音、そして何が起こってもおかしくないという感覚が、いつものようにリノ・ブランコの記憶
を呼び覚ました。
二人の間に形成された緊張を察知したカナリィは、優しくアークに話しかけることを決意し
た。
《アーク、一つ質問があるの》
彼は何も答えなかった。
《レベカが死ぬのを見て、何か感じた?》
「特に何も」
ユアンは変な目で彼を見た。なぜ彼が、約三十分間も沈黙を守った後にそんなことを言う
のか、理解できなかった。
カナリィは、アークが自分に与えた、あまりにも素っ気なく直接的な返答に震え上がった。
以前の持ち主たちと共に旅をしてきた中で、こんな返答を聞いたのは、その当時の愛しい
人と共に倒したヴィランたちからだけだった。
さらに約二十分後、彼らはあの公園に到着した。そこで彼らは、この世で一番硬いベンチ
に座って夜を過ごしたのだ。そのベンチは、地面でさえも座るよりマシだと思えるほど、ひど
いものだった。
街での恐ろしい一夜の後、美しい朝が訪れた。ユアンが最初に起き上がった。あのベンチ
で過ごした悪い夜のせいで、全身が痛んでいた。彼は首を揉みながら、完全に目を覚まそ
うとしていた。隣ではアークが、まるで金色のゆりかごに横たわる赤ん坊のように、安らか
に眠っていた。
「あの出来事の後で、よくあんなに平穏に眠れるものだ」
ユアンが周囲を見渡すと、何か異変に気づいた。血に染まった武器を手にした数人の男た
ちが、急ぎ足で公園を通り過ぎていき、他の者たちは、切り傷を負った仲間を木の下に運
んで休ませていた。
「このクソ野郎、反乱軍め、戻ってこい!」 鎧を着ていない、ワインレッドの魔術師のローブ
をまとった王室警護兵が叫んだ。これは軍のこの部門に属する予言者たちの典型的な装
束だった。「我が内に宿る麗しき水よ、剃刀の如く鋭くなり、氾濫した川の如き速さで我が敵
を貫け、甘き刃よ、我を戦士と変えよ」
素早い水流が負傷した若者たちに向かって、斜めの斬撃となって襲いかかり、彼らの背中
の残りを破壊しようとした。すると突然、草原から剣士が飛び出し、その殺意を宿した水流
を真っ二つに切り裂いた。
「どうやら反乱軍は次から次へと現れるようだ。仲間の死を阻止するためにどこからともなく
現れる奴らを、何人殺したかもう覚えていない」
「俺が例外だ」 男は傲慢に答えながら、攻撃の構えを取った。
「あまり期待するなよ、坊や」 次の詠唱の準備を始めた。
剣士は状況を分析し、勝利をもたらす戦略を探った。『水の達人の予言者で、間合いは向
こうが有利だ。明らかに不利な状況だ』
予言者は最初と同じ攻撃を放った。敵を一太刀で仕留めようとする水の斬撃だ。剣士はい
くつかをかわし、避けられないものは剣で防いだ。雪崩のような速さの攻撃が彼のバランス
を崩し、地面に倒れ込んだが、すぐに立ち上がり、再び戦闘に復帰した。
『接近しなければ勝てない。隙を見つけて、反応する間も与えずに素早く踏み込むしかな
い』
彼はまさにその通りに実行した。予言者が詠唱を終えた後、水の斬撃の下をくぐり抜け、脚
の力で猛然と踏み込んだ。予言者は身を守る暇すらなく、戦闘の前触れもなく真っ二つに
斬られた。
剣士は誇らしげに剣を収め、ユアンが自分を見ているのに気づいた。
「何か用か?」 彼は脅すように尋ねた。
「いや、何も。俺と友人はもう行くところだ」 ユアンはアークのフードを掴んで地面に引きず
り落とした。「行くぞアーク、ここで殺し合いが始まったぞ」
アークはまだ眠ったままで、ユアンに引きずられていた。ユアンは友人の平静さにいら立っ
ていた。
「おいアーク、起きろ!」
「もう少し寝かせてくれ。そうすれば朝食を食べずに済む」 彼はあくびをしながら答えた。
「お前は本当に惨めだな。今日は俺がおごるよ」 彼はローブから銀貨一枚を取り出した。
地面からようやく起き上がったアークは、金属の音を聞いて尋ねた。「その銀貨、どこで手
に入れたんだ?」
「まあ、クロエが愛ゆえに俺にくれたんだよ」
「盗んだのか?」
「いや、死へと導いたことに対するチップとしてくれたんだ」
「わからないな」
ユアンはため息をついた。「真夜中に彼女を家まで送ったことでくれたんだ。知らないかもし
れないが、誰かが俺に、二人の可愛い女の子を殺すための場所まで連れて行くよう頼んだ
んだ」
「ああ、わかった。で、それが愛と何の関係があるんだ?」
「たまにはロマンチックにさせてくれよ」
二人は公園の出口へと歩き出し、街の通りを進んだ。驚くべきことに通りは空っぽだった。
酔っ払いも、物陰をうろつく子供たちも、半裸の娼婦たちもいなかった。全てが静かだった。
しかし、この静けさは長くは続かなかった。爆発音が辺り一帯に轟き、ティミトリーの空に巨
大な煙の幕が立ち上り、すべてを覆い隠した。
「街の灯りを消したことが、少しばかりの混乱を招いたみたいだな」 ユアンが空を見上げな
がら言った。
「ああ、実際、灯りがないだけで一晩であれほど大きな被害が出るとは思わなかった」
「おいアーク、食事の後はどこへ行くんだ?」
「王国の南へ向かうのがいいと思う。北にはほとんど何もない。オルニールと、アヘト=ミッ
トを大陸と結ぶ橋があるだけだ。それに、お前が今話している言葉以外の言語を知ってい
るとは思えないし、あちらへ向かうのは無謀だろう」
「そうだな。じゃあ、ザ・ウティへ向かう大通りを進んで、何か食べ物を買おう。昨日の出来
事を調査するために大通り全体を封鎖するとは思えない。街の状況を考えれば逆効果だ
し、お前のやったことの後では人も少ないだろう」
二人はその大通りへと向かった。しかし、彼らが予想していなかったのは、街を脱出しよう
とする人々で通りがひしめき合っていたことだった。何千もの馬車が、巨大な大通りを行く
ために互いに押し合い、この状況では明らかに狭く見えた。人々は互いに押し合い、通行
を著しく困難にし、盗人たちが発見されずに好き放題に盗みを働くのを助けていた。
「空っぽだと言ったのはお前だぞ」
「まあ、ティミトリーの連中が、ただの殺人事件ごときで逃げ出すほど臆病者だとは思わな
かった」
アークとユアンは、街で本当に何が起こっているのかを完全には理解していなかった。反
乱軍がティミトリー北部全体で引き起こしている混乱を、彼らは単に昨夜の停電による盗人
たちの騒ぎだと思っていたのだ。
人々に加えて、大通りは知事の死と、王冠の敵による血なまぐさい侵略を告げるポスター
で溢れていた。新聞配達員が声を張り上げて叫んでいた。「演説中に知事が暗殺される!
光がもたらし、闇が連れ去った! 最新号を買え! 何千人もの反乱軍が侵入し、見るもの
全てを殺している!」
二つの影はフードを被り、人混みの中を歩いていた。人々に恐怖を与え、簡単に通してもら
うためだ。
「警戒を怠るな、ユアン。枯れ葉の祭りでいつも盗まれていたように、またやられるぞ」
「そうだな。あの頃の悪い記憶がまだある。いつも手際のいい連中が、気づかれずに盗ん
でいった」
「怖い顔をして、何もされないようにするんだ」
彼らの表情はすぐに変わり、さらに恐怖と敬意を感じさせるものとなった。まるで悪魔が人
間の中を歩いているかのようだった。彼らの顔はほとんど見えなかったが、かすかに見え
た人々は、空腹による不快感だけを観察した。彼らが望んでいたのは、何か一口食べるこ
とだけだったからだ。
彼らは大通りを中断されることなく歩き、目で食べ物を売っている店を探した。しかし、二人
は何かを感じた。リノ・ブランコで眠っているとき、いつも彼らに付きまとう感覚だった。
『誰かに尾行されている』 二人は、あの大森林で培ってきた生存本能が一瞬で呼び覚まさ
れた。
アークは背後を振り返ったが、普通以外の何も見えなかった。ただ、話し合い、罵り合う
人々だけだった。ユアンも同じように振り返ったが、彼は群衆の中に、経験に磨かれた荒く
れ者の傭兵のような外見の二人の男をかすかに見つけた。ユアンは肘でアークを突き、頭
の動きで男たちの位置を示した。アークは振り返らず、即座に状況を理解した。彼は店の
中から隠れられそうなまともな場所を探したが、見つけたのは酒場ばかりだった。他に選択
肢もなく、彼らは尾行者のような連中から逃れるために酒場に入った。
彼らは、膝の上にほとんど服を着ていない女性を乗せた男たちで溢れかえる店に入った。
ティミトリーはいつもこういった場所で祭りが行われていたが、この酒場は例外だった。陽
気に踊っているのではなく、悲しみと憂鬱に包まれ、皆が静かにテーブルに座り、あるいは
女性に首筋をキスされながら、ある者は水を飲むように酒を飲み、その日の悲しみを忘れ
ようとしていた。明らかに何か重大な出来事が彼らに起きたのだ。
「たった一晩で全てを失ってしまうなんて」 一人の男が頭を抱え、無力にテーブルを見つめ
ていた。
「私の家族…私の家族…」 一人の男が泣いていた。
彼らは、一見したところ冒険者の大きなグループの背後に半ば隠れた丸いテーブルに座っ
た。冒険者たちは彼らを見るや否や、最も脅威的で、冷たく、辛く、恐ろしい視線を向ける必
要性を感じた。その視線は子供を恐怖で泣かせるのに十分だった。彼らは体中に武器を散
らばらせていた。短剣、剣、斧、矢、予言者の杖、そして赤い火花を散らす特別な矢など
だ。
アークとユアンは何も注文せず、ただ誰にも迷惑をかけずにテーブルを観察していた。
「撒けたと思うか?」 アークが尋ねた。
「そう願うよ。あいつらは恐ろしそうだった」 ユアンは震えながら答えた。
しかし、そうはならなかった。あの傭兵たちは彼らが酒場に入るのを見て、後を追ってきた
のだ。
鍛え上げられた屈強な二人の男が入り口に現れた。彼らの存在だけで、酒場の全員が命
の危険を感じた。女性たちは男を口説くのをやめ、母親の到着を見た気品ある淑女のよう
に座り直した。際限なく飲んでいた男たちは嘆きをやめ、何もされないように男らしく振る舞
い始めた。冒険者たちは視線を合わせることができず、彼らを見るだけでパニックに陥っ
た。傭兵のリーダー(腰に夜のような黒い剣を携えた30歳ほどの男)は、酒場の中を獲物を
探して見渡した。彼らは、酒場の人間にわざと武器を見せびらかすことで自分たちを強がり
だと思っている哀れな冒険者の後ろに隠れている獲物を見つけた。
傭兵たちはアークとユアンのいる場所へゆっくりと歩いていった。誰も彼らの道を遮らな
かった。女性を口説いていた酔っ払いが彼らにつまずき、彼らを見ずに侮辱したが、相手
が誰であるかを見ると、臆病者らしく恐怖して謝罪し、道を譲った。すぐに彼らは標的の
テーブルに座った。
「ヴォルトの商人たちからの依頼だ。お前たちは我々の女主人を殺そうとした上に、彼女の
持ち物を盗んだ」 リーダーが剣のように鋭い声で語った。
酒場の全員が振り返って何が起こっているのかを見た。彼らはこの状況の一瞬一瞬を見
逃すわけにはいかなかった。彼らの目は見開かれ、好奇心は全てに注がれていた。
アークとユアンは沈黙を守った。
「難しくするな。牙を渡せば何もしない」
その瞬間、さらに多くの傭兵が酒場に入ってきた。
「抵抗すれば、お前たちに勝ち目はない」
『どうする? 逃げようとすれば躊躇なく殺されるだろう。逃げ道も見えない。要求されたもの
を渡すしかないか。いや、あれだけ苦労して取り戻した後に渡すなんて馬鹿げている。仕
方ない、戦うしかない』
アークはテーブルの下でユアンを抓んだ。
『何だよ、このバカ。俺たちをこんな目に遭わせたのは、お前の「牙を取り戻さなきゃ」「悪者
に渡しちゃいけない」っていう馬鹿げた考えのせいだろ。さっさと渡せよ、アーク。』
アークは指で合図を送り始めた。2、1、そして再び2。
『彼の 2-1-2… ああ、逃げるつもりか。渡すよう説得するのは無理そうだな。行くぞ。』
傭兵たちは困惑して彼らを見つめた。言葉は交わされなかったが、まるで話さずに会話し
ているかのように見えた。リーダーの相棒はその状況に不安を感じ、右手をゆっくりと腰に
動かし、ナイフを抜こうとした。しかし、会話が終わったかのように、アークがテーブルの上
に大切な牙を投げ出した。
「賢い選択だ。気に入ったぞ」 リーダーはゆっくりと手を動かし、紫色に輝く物体を掴もうとし
た。「戦う必要はなかったの…」
しかし、傭兵が牙を掴む前に、アークは彼の頭を掴み、野蛮にテーブルに叩きつけた。ユ
アンも負けじとテーブルを押し、もう一人の傭兵を地面に倒した。
得た僅かな時間的優位を活かし、アークは剣を抜き、到着した他の傭兵たちとの戦闘を開
始した。しかし、誰も死ななかった。アークは殺す気で攻撃したのではなく、打撃を放った後
に逃げるために戦っていたのだ。
さて、劇的で、実用的で、そして滑稽な効果のために、酒場の外にいた人々が、酒場が赤
い光の閃光で照らされているのを見て、その後、屈強な男が窓から投げ出され、続いて二
人の男が割れた窓から飛び出し、大通りを猛スピードで走り去っていくのを目撃したことだ
けを述べておこう。
【評者】
おい、作家さん。戦闘シーンの雰囲気を描くのに想像力が足りないって言いたいだけだろ。
誰もお前を責めたりしないよ。
【タクジ】
こいつを聞けよ。俺は戦闘シーンの雰囲気をどう盛り上げるか分かってるんだ。このシーン
がプロットに完全にフィットするという結論に達しただけだ。
間もなく、群衆の中での追跡劇が始まった。群衆は屈強な傭兵たちと不運な狩人たちに
よって押しのけられた。五人の男がユアンとアークを猛烈に追跡していた。
「どうして牙を使って従わせようとしなかったんだ?」 ユアンは息を切らしながら、命からが
ら走りながら言った。
「実は、思いつかなかったんだ」 アークは、脳が会話よりも脚に酸素を送ることに重要性を
置いていたため、ほとんど話せずに答えた。彼が唯一必要としていたのは、このバカが支
配する脚ができるだけよく機能するために十分な酸素を得ることだった。
追跡者の一人は地の聖なる予言者だった。その力を利用して、彼は以下の詠唱を行った。
「汝によって創られた聖なる地よ、子として汝に願う。我が敵がつまずき、我に勝利をもたら
さんことを」
家々から引き裂かれた何百もの石が標的に向かって投げられた。そして、アークとユアン
が走る道を歪め、彼らを転ばせようとしたが、彼らはその卓越したパルクールの技術で、穴
を飛び越え、空中に浮かぶ土の塊をかわし、石を避け、手近なものを利用して振り子のよ
うに移動し、予言者の仲間が環境に引き起こしているものを通り抜けるのに苦労している
全ての傭兵たちを凌駕した。
追跡劇が生み出した大スペクタクルのため、その地域を巡回していた数人の兵士たちは、
大きな岩が何かから砕け落ちる音で、何が起こっているのかにすぐに気づいた。好奇心か
ら彼らは耳の導く場所へ近づき、七人の男が粉々に崩れ落ちていく大通りを猛スピードで
走っているのを見た。彼らはためらわずに追跡に加わり、その前に笛の鋭い音で他の仲間
に何が起こっているかを知らせた。
アークとユアンは、王国の南へ向かうためにティミトリーを出発しようとしている、大きなキャ
ラバン、馬車、冒険者たちが集まる街の郊外まで、休むことなく走り続けた。彼らの中に
は、白い肌に金髪で、アヘト=ミットには属さない特徴を持つ少女が、自分の馬の準備をし
ているのがいた。
他に選択肢を考える時間もなく、アークは少女の元へ走り、彼女を乱暴に押しのけて馬に
飛び乗り、剣で馬を柱に縛っているロープを切り、馬を蹴って走り出した。アークの数歩後
ろにいたユアンは、少女の腰を掴んで馬に飛び乗った。馬は激しく走るよう命じられている
のを感じ、土の道を猛スピードで駆け出した。少女は何が起こっているのか全く理解でき
ず、意味不明な叫び声を上げた。
「あそこだ!」 アークがテーブルに叩きつけられた際に折れた鼻の傭兵リーダーが言った。
彼が仲間たちと共に馬の後を追おうとした時、彼らは一団の兵士たちに囲まれた。
「バカどもめ、標的を逃がすところだ」 彼は剣を抜き、防御の構えを取った。
さらに多くの兵士が到着し、明らかな戦闘の準備を整えた。しかし、傭兵は彼らが非常に多
く、その中に王室警護兵もいるのを見て、剣を落とし、両手を上げた。彼の部下たちも同じ
ようにした。
「俺はヴォルトの商人たちの傭兵だ。行かせてくれ」
しかし、将校は彼の言葉を全く信じず、彼をひざまずかせた。「ならば、それを我が上司に
言え」 彼に手錠をかけ、連行した。
ティミトリーの大軍事基地——王国で最も恐るべき要塞であり、最も多くの物語を語り、最も
多くの攻撃に耐え、かつて一度も陥落したことがないと誇りに思える唯一の砦。その城壁
の下では、過去の戦争の数え切れないほどの戦闘が繰り広げられた。血に最も塗れた
者、最も美しい者、敵に対して最もロマンティックな者——彼女は今、汚れた反乱軍たちに
よって試されていた。彼らはあえて彼女を奪おうとしている。それは彼女が象徴するものへ
の侮辱であり、この堕落した世界における冒涜であり、許されざる厚かましさであった。
その壁はワインレッドに塗られていた——それは建物に与えられる最も名誉ある表現だ。な
ぜなら、それは文字通り倒した敵の血で塗られていることを意味するからだ。存在の初期
には白く、純粋で悪意のなかった彼女は、しかし人類にとっては何の意味もなく、戦いの中
で最も偉大な雌犬となり、最も汚れた豚となった。なぜなら頂点に達するためには、目の前
にあるすべての汚物にまみれなければならないからだ。メルコン大虐殺、神聖なる塗油、
地底の巨人——これらは彼女が直面し、無傷で生き残った最も有名な戦いだった。
その難攻不落の要塞の中には、千人の兵士を一年間生き延びさせるだけの備蓄があっ
た。
アヘティス=マヒット銃の轟音が常に響き渡り、基地の難攻不落の壁を貫こうとしていた。
その恐るべき要塞の中庭には、時間内に避難できた兵士たちと王室警護兵たちがいた。
ティミトリーはすでに陥落し、この場所だけが王冠の役人たちの最後の避難所として残され
ていた。
鞭の音が辺り一帯に響き渡った。
「この馬鹿者め、すべてはお前のせいだ」 勲章を付けた鎧を身にまとった王室警護兵が、
地面にひざまずいた男を鞭で打っていた。
警護兵の目は怒りで燃え上がり、歯は強く食いしばって砕けそうだった。血管は頭に激しく
血液が巡り、今にも破裂しそうだった。
「すべてはお前の責任だ」
警護兵は男の裸の背中を鞭打ち続け、血が哀れな男の全身を流れ落ちた——まるで大河
が海へと注ぐ場所を探すかのように。
彼の全身は苦痛に震え、死を切望していた。
「お前の役目は何だった!」 警護兵が叫んだ。
「知事をお守りすることです」
「もっと具体的に」
「あなた将軍があらかじめ指定した高台の見張りです。許可なく誰も入ることのできない場
所です」
「何が起きた?」
「知事を殺した男は、私が守っていたプラットフォームから飛び降りて、知事に到達しまし
た」
将軍が部下を鞭打つ力が増した。数発の鞭打ちで、肉がすべての者の前で露出し始め
た。
「このクズめ」 彼は殴り続けた。「お前のせいで反乱軍が侵入したんだ!」
明らかにそれは真実ではなかったが、彼は誰かに向けて欲求不満を発散する必要があっ
たのだ。
「仕事へのお前の不誠実さは高くついた。一生働いても償えないだろう」
「申し訳ございません」
「お前の謝罪など何の役にも立たない。しかし、どの謝罪が役に立つか知っているか? お
前の家族の謝罪だ」
「お願いです、彼らだけは…」
警護兵はさらに強く殴りつけ、彼を震え上がらせ、苦痛のうめき声を上げさせた。
「黙れ、馬鹿者! お前に慈悲を乞う権利はない。お前は王室の貴族の命を運命づけた。
彼の命はお前やお前の家族の命よりも価値がある。命には命をもって償え」
その場にいた全員が無関心に状況を見守っていた。彼らにとって、このような罰は日常茶
飯事であり、ただの何の変哲もない火曜日だった。
リンブリン - 軍事地区
ラ・カンパネラ——この大都市の住民はこう呼んでいた。王国で最も重要で、美しく、神聖
で、清潔な王室兵舎のことだ。ティミトリーのものと比べると、まったく正反対だった。戦闘に
参加したこともなければ、重要なことを成し遂げたこともない。単に装飾用の兵舎であり、す
べての行政事務が行われる場所だった。
その名前は、遠くから見た地区の形状に由来する。建物が白い鐘のように見え、その基部
はワインレッドで縁取られていたからだ。
地区は市中心部の近くに位置しており、首都を最適に掌握することを可能にしていた。
そこにある本館で、ワインレッドの金属で作られた椅子に座っていたのは、王室将軍——同
階級の中で最も賢明で戦略家である男だ。最も強力ではないが、最も狡猾だった。彼はす
でに年老いており、髪には白髪が目立ち始めていたが、筋肉は依然として衰えを知らな
かった。顔には老いの始まりを示す最初のしわが現れ始めていた。将軍としての全キャリ
アを通じて、彼は特別なことは何も成し遂げていなかった。戦争に直面したこともなく、王が
彼を使う唯一の目的は、誰にも疑われずに王冠の反対者をすべて消し去ることだった。言
うなれば、老齢で完全に役立たずになる前に、何か重要なことを成し遂げたいと願う男だっ
た。そして、彼が呪われた武器「双つの絶望」(両端に鋭い刃を持つ鋼の杖)を使用する際
に負っている呪いのせいでもあった。
「ガーネル様、ティミトリー州に関する報告書が届いております」 副官が言った。
「他の州の報告書と一緒にそこに置いておけ」 彼は見ずに答えた。彼の目は「祝福された
三部作」というタイトルの本に集中していた。
「将軍、重要なことです。ティミトリーの知事が殺され、州都が占領されました。まだ我々の
支配下にあるのは市の兵舎だけです」
ガーネルは報告書を取り上げて読み始めた。
「何が起きた?」 彼は尋ねた。
「まだ何も明確には分かっていません。すべてがあまりにも迅速に起こりました」
彼の副官は若い王室警護兵で、せいぜい20歳くらいだった。茶色い目、短い黒髪、王子の
ような完璧な顔立ち——実際、彼は文字通り王子だった。王が唯一認知し、自ら育てた息子
だった。
副官からこれ以上何も聞けなかった将軍は、報告書を読み始めた。
「アゴトラノムの月13日……敬愛するガーデン将軍。本日、五か月前に北部に現れた反乱軍
の攻撃により、歴史的な都市ティミトリーが陥落したことをお知らせする義務があります。す
べては迅速に起こり、準備の時間はありませんでした。街の灯りが突然消え、完全な闇に
包まれ、適切な防御を準備する可能性もありませんでした。セサル知事はその夜の最初の
犠牲者となり、演説の最中に暗殺者が誰も見えないうちに死亡しました。我々は現在兵舎
へと後退しています。反乱軍はあらゆる場所から侵入しており、我々には彼らの攻撃に対
応する十分な能力がありません。州への緊急の援軍が必要です。」
「この反乱軍は馬鹿ではない。すべての灯りを消すことで都市に侵入する簡単な方法を見
つけたわけだ。マスコミはこれについてどう見ている?」
「リンブリンの記者たちにはまだ情報が届いていません」
「忌々しい反乱軍め。我々が苦労して築いてきた平和を奪いおって」 ガーネルは立ち上が
ろうとしたが、その前に副官だけをオフィスに残して言った。「牙のことはもう気にするな。あ
れはオルニール組合の汚い連中に任せろ。お前はすでに自分の役職には不向きであるこ
とを証明した。だが、残念ながらお前を解雇することはできない。父親がそれを良しとしな
いからな。出る時にドアを閉めておけ。」
オフィスに一人残された副官は、任務に失敗したことで欲求不満と怒りを抑えきれなかっ
た。
「呪われよ、サー・トッパー!」 彼は叫びながら剣を抜き、壁に向かって投げつけた。
彼の無力感は計り知れなかった。彼は見かけ以上の男だと信じていたのだ。彼の呼吸は
荒く重かったが、徐々に落ち着き、平静を取り戻さねばならなかった。
「お前を信じるべきではなかった」 彼はため息をつきながら壁から剣を引き抜いた。「だが、
お前は帝国アカデミーで指揮官としての能力と権力をあまりにも示していたので、その見か
けに騙されてしまった。少なくともお前はもう死んでいる」 彼の力で瓦礫を作り出し、壁に填
め込んだ。「もし私が駒を完璧に掌握したいのなら、それらの牙を切実に必要としている」
彼は外へ歩き出し、ドアを閉めた。「父と私だけが牙の真の力を知っている。暴君になるた
めには、少なくとも私を信頼している。私は彼を失望させるわけにはいかない。」




