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第5話 初心者配信に中層ボス――ノーライフキングを金属バットで粉砕

隠し通路は、思っていたより奥が深かった。


幅は狭いが、ところどころ小部屋がある。

完全に“メインルートとは別のマップ”って感じだ。


「……これ、ほんとに浅草ダンジョンだよな?」


初心者向けとは。


ヘッドライトの光で壁をなぞる。


削れ方、松明の位置、視線誘導。


「この曲がり角、右に行かせたい配置だな……」


職業病が勝手に働く。


十年間、嫌ってほどやってきた。


「じゃあ逆に左に何かあるな」


左へ。


三歩。


扉発見。


「ほらな」


思わず笑った。


完全にゲーム攻略してる気分だ。


ギィ……と扉を押し開ける。


中は、やや広めの石部屋。


そして。


中央に、ぽつん、と。


人影が立っていた。


黒いローブ。

長い杖。


微動だにしない。


「……ん?」


近づく。


カタ……カタ……。


骨の擦れる音。


ヘッドライトが顔を照らす。


白い髑髏。

眼窩の奥で青い光が揺れている。


「スケルトン……? いや、メイジ?」


軽いノリで呟く。


この時。


俺はまだ気づいていなかった。


スマホ画面の端。


同時視聴者数:134


コメント欄が、急にざわつき始めていたことに。


『え?』

『その敵……』

『待って待って待って』

『なんでそこにいる』

『やばいの引いてる』


当然、俺は見ていない。


配信初心者にそんな余裕はない。


「まあ骨だし……打撃武器でいけるだろ」


金属バットを握る。


その瞬間。


スケルトンが杖を掲げた。


空気が、ビリッと震える。


足元に赤い魔法陣。


「……あれ?」


次の瞬間。


ゴオオオオオオッ!!


炎の竜巻が俺を包み込んだ。


「うおっ!?」


視界が真っ赤に染まる。


熱風。


爆音。


完全にヤバいやつ。


コメント欄、大爆発。


『ファイヤーボールじゃねぇ!!』

『ストームだろ!!』

『ファイヤーストーム!!』

『中層ボス魔法だぞそれ!!』

『にげろおおおおお!!』


でも。


「……あれ?」


熱い。

熱いけど。


「……思ったより熱くない?」


服も燃えない。


皮膚も無事。


普通に立ってる。


胸当てを触る。


「あ、これか」


キングはぐれミスリルスライムの鎧。


魔法軽減。

(後で知ることになるが――この鎧は魔法軽減90%だった)


「すげぇなこれ……」


感心してる場合じゃない。


炎が晴れる。


目の前。


スケルトンが、明らかに「え?」みたいなポーズで固まっている。


俺も同じ気持ちだ。


「……それなら」


ダッ、と地面を蹴る。


自分でも驚く。


速い。


軽い。


距離が一瞬でゼロになる。


コメント欄。


『はっや!?』

『テレポートした!?』

『速度バグってる!!』


「びびってるー♪パニくってるー♪」


なぜか鼻歌が出た。


昔どこかで聞いた野球のヤジ。


緊張すると、変な歌が出る癖がある。


「おいおいピッチャー、びびって――」


バットを肩に担ぐ。


軽く、リズムを取る。


「――る♪」


“る”の音が口から抜けた、その瞬間。


体が自然に動いた。


力んだつもりはない。


ただ、リズムに合わせて。


気持ちよく振り抜いただけ。


ブンッ――


次の瞬間。


バキィィンッ!!


乾いた快音。


スケルトンの頭蓋骨が、ホームランボールみたいに吹き飛んだ。


本体ごと壁へ叩きつけられる。


ドゴォォン!!


骨がバラバラに砕け散り。


青い光が霧みたいに消えた。


……終わり?


「……やっぱスケルトンには打撃武器だよな」


何事もなかった顔で呟く。


スマホを見る。


同時視聴者数:289


「え、増えてる!?」


コメントが滝みたいに流れている。


『ワンパン!?』

『ノーライフキングだぞ今の!?』

『歌いながらボス倒すなwww』

『余裕すぎて草』

『何者だこのおっさんwww』


「え、え、ちょっと待って……」


急にテンパる。


「あ、えーと! スケルトンには打撃武器が有効なので参考にしてください!」


『そこじゃねぇwww』

『天然だwww』

『好き』


なんか笑われてる。


……まあ、いっか。


その時。


スケルトンが消えた場所が、青く光った。


「……ん?」


地面に転がる、拳大の石。


透き通る青色。


中で光がゆらゆら揺れている。


「……これが、魔石?」


ひょい、と持ち上げる。


ずしり。


重い。


コメント欄。


『でっか!?』

『純度やば』

『それ数千万クラス』

『1000万以上確定』

『俺に1万で売って』


「いや安すぎるでしょ!」


思わずツッコミ。


気づけば。


同接は300人を超えていた。


さっきまで0だったのに。


「……なんだこれ」


怖いはずなのに。


めちゃくちゃ楽しい。


「……もうちょっと進んでみるか」


ヘッドライトを前に向ける。


その先。


下へ続く石の階段が見えた。


明らかに“次のエリア”。


「……テストプレイ、続行だな」


俺は魔石をリュックにしまい、ゆっくりと階段へ向かった。


(つづく)

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