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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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第七章 町内会のゴミ拾い&ゴミ屋敷(特級魔境)大清掃編

町内会長のオバチャンからの依頼。「近所のゴミ屋敷、なんとかならない?」

「よし、今日も良い天気だ。洗濯物がよく乾きそうだな」

 南の島での慰安旅行(特級リゾート・ダンジョン)から帰還して数日後。

 俺、九条湊は、住まいであるボロアパート『ひまわり荘』のベランダで、パンパンとシーツのシワを伸ばしながら、平和な日本の朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでいた。

 部屋の中では、妹の未緒がテレビを見ながら朝食のトーストをかじり、足元では魔王ルンバが「ルン♪」とご機嫌な音を立てて床を磨いている。

 なんの変哲もない、そして何よりも尊い「日常」だ。

「おーい、湊ちゃん! ちょっといるかーい?」

 その時、下からダミ声が響いてきた。

 見下ろすと、パンチパーマに紫色のヒョウ柄シャツという、戦闘力高めな出で立ちのオバチャンが手を振っていた。

 このひまわり荘の大家であり、地元町内会のドン(会長)でもある、タエさんだ。

「あ、タエさん! おはようございます! 今下りますね!」

 俺は階段を駆け下りて、タエさんの元へと向かった。

 タエさんは昔から俺たち兄妹を気にかけてくれる、口は悪いが面倒見の良い恩人だ。清掃会社を立ち上げた時も、町内のゴミ出しルールのポスター張りを手伝ってくれたりした。

「おはようさん。いやね、今日はちょっと湊ちゃんに『町内会』のことで相談があってね」

「町内会ですか? もちろん、俺にできることならなんでもやりますよ」

 タエさんは困ったように眉をひそめ、持っていた回覧板でパタパタと顔を仰いだ。

「実はね、三丁目のはずれにある古びたお屋敷……ずっと空き家だったはずなんだけど、最近どうも勝手に人が出入りしてるみたいでさ。あっという間に『ゴミ屋敷』になっちまったんだよ」

「ゴミ屋敷ですか。それはご近所迷惑ですね」

「そうなのよ! しかも最近じゃ、ドブが腐ったような酷い悪臭が漂ってきてね。近所から苦情が殺到してるんだわ。町内会でボランティア集めて掃除しようって話になったんだけど、みんな『あそこは気味が悪い』って寄り付かなくてさ」

 タエさんは大きなため息をついた。

「湊ちゃん、あんた清掃のプロだろ? 悪いんだけど、町内会のボランティアとして、そのゴミ屋敷の大掃除、手伝ってくれないかい?」

「なんだ、そんなことですか。任せてくださいよ!」

 俺は胸を張って、タエさんに親指を立てた。

「株式会社・九条清掃の社長として、地元への地域貢献は一番大事な仕事です。それに、ゴミの分別や片付けなら俺の得意分野ですからね!」

「おお、さすが湊ちゃん! 頼りになるねぇ! じゃあ、明日の朝九時に、軍手とゴミ袋持って現地集合でよろしく頼むよ!」

 タエさんはホクホク顔で去っていった。

 よし、明日は久しぶりの大仕事ボランティアだ。気合いを入れていくぞ。

 ◇

 一方、その頃。

 俺がのんきに洗濯物を取り込んでいたボロアパートの地下――世界最強のSPたちが待機する監視ルームでは、けたたましいレッドアラートが鳴り響いていた。

『緊急事態! 緊急事態! 日本・三丁目エリアにて、空間の断裂を確認!』

「……ついに、最悪の封印が解けちまったか」

 アメリカ最強の筋肉ことジャックが、モニターに映し出された禍々しい漆黒の渦を見て、冷や汗を流しながら葉巻を噛みちぎった。

「三丁目のはずれ……。古の文献に記された、世界を腐敗させる『SSS級の特級魔境・奈落アビス』の入り口……。数百年前に大賢者が命と引き換えに封印したはずの扉が、なぜ今になって……!」

 フランス最強の聖騎士ジャンも、顔面を蒼白にしている。

 モニターの向こうでは、真っ黒な瘴気が漏れ出し、周囲の木々を一瞬にして枯れ死にさせていた。これがタエさんの言っていた『ドブが腐ったような悪臭』の正体である。

「至急、世界連合軍に要請を! いや……間に合いませんわ。あそこから這い出てくる『腐敗の堕神』を逃せば、日本はおろか、世界が三日で死の星に変わります……!」

 氷の女帝カレンが、震える手で世界各国のトップギルドへ緊急通信を繋ごうとした、まさにその時だった。

 ――ガチャ。

「おーい、みんな。ちょっといいか?」

 監視ルームの扉が開き、能天気な顔をした俺(Boss)が顔を出した。

 SPたちはビクゥッ!と跳ね上がり、慌ててモニターを隠そうとしたが、俺はそんなことには全く気付いていない。

「明日の朝なんだけどさ、町内会のボランティアで『ゴミ屋敷の掃除』に行くことになったんだ。ちょっと人手が欲しいから、お前らも軍手持って手伝ってくれないか?」

「……え?」

 俺の言葉に、ジャックたちが呆然と固まった。

「あの、Boss。……ゴミ屋敷って、もしかして、三丁目のはずれの……?」

「そうそう。最近、変な奴らが住み着いて、腐った匂いが酷いらしいんだよ。だから、明日は朝から徹底的に『分別』して、綺麗に片付けてこようと思ってな」

「「「…………」」」

 SP軍団の脳内で、とてつもない雷鳴が轟いた。

 (Bossは、気づいている……! あの『特級魔境の奈落』が開きかけていることに!)

 (しかも、あそこから溢れ出す数億の魔物の大軍勢や、世界を終わらせる堕神のことを……『変な奴らが住み着いたゴミ屋敷』と表現したぞ!?)

 (あの大厄災を……ただの『町内会の清掃活動』で片付けるつもりだというのか……!!)

「……というわけで、汚れてもいい服と、動きやすい靴を準備しといてくれよな。じゃ!」

 俺がパタンと扉を閉めた後。

 静まり返った監視ルームで、ジャックが震える声で呟いた。

「……聞いたか。Bossは明日、たった数人のボランティアで、世界を救う『神の聖戦』を行うつもりだ……」

「しかも……『軍手』で……」

 カレンが通信機を握りしめ、世界各国の首脳陣に向けて、緊急かつ絶望的なメッセージを送信した。

『――世界連合各局へ。これより、我らが王(Boss)による、人類存亡を懸けた究極の大清掃作戦が実行される。……直ちに、各国のトップエリートは【軍手】と【ゴミ袋】を持参し、極秘裏に日本へ集結せよ!』

 こうして、ただの「町内会のゴミ拾い」は、本人(湊とタエさん)が全く知らない裏側で、人類の総力を結集した『SSS級・神の清掃儀式』へと、盛大にスケールアップしていくのであった。

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