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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 4

妹(ハンドルネーム:ATM)が兄の配信を発見する

 地上、ボロアパートの一室。

 九条未緒くじょうみおは、煎餅をかじりながら不機嫌そうにスマホをスワイプしていた。

「お兄ちゃん、遅いなぁ……。今日中に10万振り込まないと、推しの限定グッズ予約できないのに」

 彼女は重度のダンジョン配信オタクだ。

 兄が必死に稼いだ生活費の大半は、彼女の「推し活」――主に人気探索者への高額スパチャ(投げ銭)とグッズ購入に消えていた。

 もちろん、兄には「治療費」と嘘をついている。

「はぁ……Fランクの稼ぎじゃ限界かなぁ。そろそろ別のATM探さないと」

 そんな独り言を呟きながら、Dチューブのランキングを眺めていた時だ。

 異様なサムネイルが目に飛び込んできた。

 タイトル:『遺言。誰か聞いて』

 サムネ画像:大量のマンティスの死体と、見覚えのある薄汚れたシャツ。

「……は?」

 未緒の手が止まる。

 タップして開く。

 そこに映っていたのは、洞窟の中を歩く兄――九条湊の姿だった。

『えー、とりあえず壁を掘って進んでます。なんかキラキラした石ばっかりで、土がなくて歩きにくいです』

 兄がブツブツ言いながら、足元の「石」を蹴飛ばしている。

 コメント欄は阿鼻叫喚の嵐だ。

『蹴るな蹴るな! それミスリル!』

『1グラム100万円の石をサッカーすなwww』

『ここどこだよ、宝物庫か?』

『主の装備、初期装備以下じゃね? なんで生きてるの?』

「え……お兄ちゃん?」

 未緒は画面を二度見、三度見した。

 間違いない。あのヨレヨレのシャツは、先週自分が「ダサいから雑巾にしなよ」と言い捨てたやつだ。

 しかし、背景が異常すぎる。

 壁一面に露出した銀色の鉱脈。

 そして、兄のポケットからこぼれ落ちそうになっている、拳大の宝石。

「ちょ、ちょっと待って! あれ『深淵のアビス・ティア』じゃない!? オークションで5億で落札されたやつ!」

 未緒の脳内で、電卓が高速回転を始めた。

 兄が今、雑にポケットに突っ込んだ石ころ一つで、借金どころか一生遊んで暮らせる。

『あー、重いなぁ。これ捨てていいかな? 食料入らないし』

 画面の中で、兄がとんでもないことを口走った。

 宝石を取り出し、ポイ捨てしようとしている。

「ふざけんなああああああ!!」

 未緒は絶叫した。

 今すぐ止めなければならない。電話? いや、深層じゃ繋がらない。

 繋がっているのは、この謎の配信だけだ。

「コメント……いや、流れて読まれない! なら!」

 彼女は迷わず「赤スパ(最高額の投げ銭)」を選択した。

 金額は上限の5万円。

 兄のクレジットカードで。

 ピロンッ♪

 ダンジョン内に、軽快な電子音が響く。

『ん? なんだ今の音』

 湊が足を止めた。

 目の前の空中に、真紅の帯と共に巨大な文字が浮かび上がる。

【¥50,000 ATM(妹):】

【捨てんなバカ兄貴!!!! それ国宝!! あと後ろからなんか来てる逃げてええええええ!!】

『……え? ATM?』

 湊は首を傾げた。

 「ATM」というハンドルネームには見覚えがあるような気がするが、思い出せない。

 それより、5万円という数字に目が釘付けになった。

『ご、5万!? え、これ俺に? ミスってないですか?』

 湊は慌てふためいている。

 視聴者たちは、そのやり取りに即座に反応した。

『妹wwwww』

『ハンドルネームATMってwww』

『身内降臨キタコレ』

『てか後ろ! 主、後ろ!』

 妹のコメントの後半部分。

 『後ろからなんか来てる』。

 ズシン、ズシン……。

 配信画面の端、湊の背後の暗闇から、巨大な影がヌッと現れた。

 二本の角。全身を覆う漆黒の鱗。

 吐息だけで岩を溶かす、第十階層の絶対王者。

 フロアボス『深淵の魔龍アビス・ドラゴン』だ。

『うわあああああ! ボスだあああ!』

『逃げろ主! ……って言っても無理か』

『オワタ』

 画面の向こうで視聴者が絶望する中、湊は振り返り――

「あ、トカゲだ」

 ――きょとんとした顔でそう言った。

「でかいな。……あれ、肉たくさん取れそうじゃない?」

 未緒はスマホを握りしめながら呟いた。

「……お兄ちゃん、バカなの?」

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