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万年Fランクの荷持ち、ハズレ枠『解体』スキルでダンジョンの壁を崩したらSSS級素材が出た〜誤配信で世界中が震えている件〜  作者: 月神世一


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EP 8

チートバリア vs 100均スプレー。神の予算が「ホコリ」として消える時

「あぁ? なんだテメェ、便所掃除のオッサンか?」

 ポポロ村の裏路地に現れた、エプロン姿にゴム手袋の九条湊を見て、偽勇者ゲイルは鼻で笑った。

 全身を神のバリア(チート装甲)で覆われ、無敵を確信しているゲイルにとって、丸腰の清掃員など路傍の石以下の存在でしかない。

 だが、その背後でボロボロになっていた龍魔呂だけは、湊の姿を見た瞬間に目を見開いた。

(あ、アニキ……! 死すらも無に還す『究極のゼロ』……!)

 湊はゲイルの嘲笑を完全に無視し、龍魔呂の前にツカツカと歩み寄った。

「お前なぁ。こないだ『風呂に入って温かいモン食え』って言ったばっかりなのに、またこんなにホコリ(闘気)まみれになりやがって。子供の前で、なんて不衛生な格好してんだ」

「す、すまねェ……」

 闇社会の頂点に立つ最強の処刑人が、エプロン姿のオカンに怒られてシュンと項垂れている。

 その異様な光景に、ゲイルは苛立ちを募らせた。

「おい! 俺を無視すんじゃねぇ! この無敵の勇者様が、まとめて串刺しにしてやるよ!」

 ゲイルが剣を大上段に構え、湊の背中めがけて勢いよく振り下ろした。

 しかし、湊は振り返りもせず、まるで「床に落ちたゴミをまたぐ」かのような自然なサイドステップで、その凶刃をヒラリと躱した。

「なっ!?」

 バランスを崩したゲイルの顔面に、湊は容赦なく『100均の静電気防止スプレー』のノズルを向けた。

「あのなぁ。お前みたいに、静電気バグを帯びたままウロチョロされると、周りのホコリが全部くっついて汚くなるんだよ。冬場のテレビの裏側と同じだ。最悪の場合、トラッキング現象ショートで火事になるんだぞ」

 シュッシュッ!

 湊がトリガーを引き、ゲイルの全身に細かいミストが吹きかけられた。

「あ? なんだこの水……。ハハッ、バカか! 俺の装甲は神の奇跡だ! 物理も魔法も完全に――え?」

 ゲイルの嘲笑が、途中で凍りついた。

 スプレーのミストを浴びた瞬間、彼を覆っていた『絶対防御のポリゴン装甲』が、まるでただの綿ボコリのように、シュワシュワと音を立ててほどけ始めたのだ。

 対象:神の権限によって付与された、世界の法則を無視する『デジタルバグ装甲』。

 処理:100均の静電気防止スプレー(界面活性剤)により、バグの結合(静電気)を中和。湊の『解体スキル』が、複雑な神の暗号コードを「ただのホコリの塊」として物理的に分解する。

「お、おい! なんだこれ!? 俺の無敵バリアが……溶けてる!?」

「溶けてるんじゃない。静電気が抜けて、ホコリが浮き上がっただけだ。……仕上げだ、飛んでけ」

 湊はエプロンのポケットから、見慣れたスプレー缶――『パソコン用エアダスター(強力エア噴射)』を取り出し、ゲイルに向けて思い切りトリガーを引いた。

 プシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!

「ぎゃあああああああっ!?」

 凄まじい圧縮空気の直撃を受け、浮き上がっていた数億円相当のチートバリア(ホコリ)が、文字通り跡形もなく四散した。

 ゲイルの身を守るものは、ただの薄汚れた革鎧だけになった。

 ◇ ◇ ◇

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 天界のオフィス。

 モニターを見ていた炎上神ワイズは、椅子から転げ落ちんばかりの勢いで立ち上がった。

「消えた!? 俺の無限予算ブラックカードで構築した最強のグリッチが、100円の静電気防止スプレーとエアダスターで吹き飛んだァ!?」

 ワイズはPCのキーボードを狂ったように叩きまくったが、画面には無慈悲な『ERROR:対象データの完全消去』の文字が表示されるだけだ。

「ありえない! 神のコードだぞ!? それを『ただのホコリ』として物理的に処理するなんて……あいつ、何者だ!? 人間モブの枠を超えてるじゃないか!!」

 ワイズの背筋に、初めて『得体の知れない恐怖』が走った。

 ◇ ◇ ◇

「あ……あ……」

 ポポロ村の裏路地。

 チートバリアを剥がされたゲイルは、へたり込み、ガタガタと震えながら後ずさった。

 その視線の先には、再び静かに立ち上がり、赤黒い闘気を立ち上らせる龍魔呂の姿があった。

「アニキ……。アンタの掃除、いつも完璧だな」

「ホコリを払っただけだ。……あとは任せるぞ。あんまり汚すなよ」

 湊がバケツを持って一歩下がると、龍魔呂の死神のような瞳が、完全に無防備となったゲイルを捉えた。

「ひぃぃぃっ! た、助け――」

 ゲイルの悲鳴は、龍魔呂の拳が放つ凄まじい風圧によって掻き消された。

 今度こそ、神の庇護は無い。

「……ッ、よし。これで少しは綺麗になったな」

 湊は、ゲイルがどうなったかには一切興味を示さず、ふと空を見上げた。

 ゲイルのバリアは消えたが、周囲の空間にはまだ、赤いノイズ(バグの残滓)がチカチカと点滅していた。ワイズが無理やり空間をこじ開けた『監視カメラ(モニター越しの裂け目)』が残っているのだ。

「まだ大元の熱暴走(排気ファンの詰まり)が直ってないな」

 湊はバケツの中から、オカンの最終兵器を取り出した。

 重曹水をたっぷり含ませた『激落ちくん(メラミンスポンジ)』と、高純度の『無水エタノール』である。

「こういう精密機器の裏側は、無水エタノールで基盤ごと拭き上げるのが一番なんだよ」

 最強のオカン清掃員が、ついに天界の『神のPC』そのものを物理的に掃除(破壊)するための準備を整えた。

お読みいただきありがとうございます!


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