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召使いの私  作者: 村上泉
9/9

ずっとその先も続いていく 

 それから季節は移り変わっていって、生徒会役員全員に恋人が出来た。

 なんでも、全員彼女さんはまいるの紹介らしい。

 ちなみにまいるとは、あれから名前で呼び合うくらいには仲良くなった。



「尚人に飽きたら俺のところおいで」


 とか言ってた祐先輩も、


「困ったら、なんでも行ってくれ。どこへでも駆けつけるから」


 とヒーローっぽいことを言っていた会長様も、


「尚人じゃなくて、俺にしなよ」


 と言っていた隼人くんも、そんな冗談を言わなくなった。


 その言葉を聞く度に不機嫌になる尚人くんに困っていたので私はとても助かっている。



 会長様と、祐先輩と、隼人くんの彼女さんとは私も知り合いだ。

 全員同じ高校の生徒だったから。

 しかも同じ高2。

 まいるちゃんの紹介で私も仲良くなった。


 会長様と祐先輩は卒業し、私、尚人くん隼人くんの順に別々の進路へ進んで行った。



 しかし、縁というのは不思議なもので、生徒会のみんなとも、その彼女さん達とも連絡は切れなかった。


 まいるちゃんとは週一でランチをする仲になった。


 私は大学卒業後、小さな会社の事務職に就いた。

 尚人くんはその一年後卒業し、仕事が落ち着いてからとかなんやかんやで、私が就職して三年後、本当に私は尚人くんの「お嫁さん」になった。


 それから、私は子供を授かり、尚人くん似の男の子を産んだ。

 雅樹まさきと名付けた。

 まいるは、いつか聞いたゲームの通り、高校卒業後すぐに、子供を授かった。

 それだけで驚きなのに、実は16才で結婚していました、というのだ。

 驚いて腰が抜けるかと思った。


 それから、雅樹が1歳になり、生徒会のみんなの奥さん(隼人くんの彼女さん以外はみんな結婚した)とまいると、私で食事会をした時のこと。

 お腹を大きくしたまいるが現れた。


「え?妊娠してるの!?ちょっと!無理しないで家で寝ててよ!」

とみんな口々に言うと


「もう、二人目だと少しだけ心に余裕が出来るから大丈夫だよ」


 と、なんでもないように言った。


 しばらくすれば話は盛り上がって来た。


「子育てってやっぱり大変なんですか?」


 そこで、唯一まだ未婚の隼人くんの彼女さんがそう聞いてきた。


「うーん。そうだね、体力勝負なところもあるけど、メンタルも強くないと、ね」


 まいるの言葉に私は深く頷く。

 確かにそれもあるけど、


「でも子どもより、旦那さんの方が手が掛かる」


 と私は横から言うと、隼人くんの彼女さんは大爆笑した。

 しかし、他の三人は深くで頷いて、


「わかるー」


 といった。

 隼人くんの彼女さんはよく分からないといった顔をした。

 

 隼人くんも色々大変そうだな、と思った。



……

…………



 尚人くんは雅樹がマザコンにならないようにと、小学校の頃から「早く彼女作れよ!」というようになった。

 もちろん小学校の頃はそんなものはあってないようなものだから、尚人くんの言葉は意味がなかった。

 しかし、中学校になると、変わってくる。

 雅樹に彼女がいたようだが、尚人くんは「彼女作れよ」と言うのをやめなかったし、方針は変わらなかった。

 そうして、高校生になった雅樹。

 これが困った子になった。

 尚人くんの方針がよくなかったのか、私の育て方が悪かったのか、雅樹には常に4、5人彼女がいるような子になってしまった。

 尚人くん似で、とても整った顔立ちのせいで大変モテるようで、私はそれが心配でならない。


 一度、


「二股なんてやめなさい」


 と言ったことがあったが、


「今日会ったのが彼女で、他は全員友だち」


 と雅樹に返されて、私がキレたことがあった。

 

 お前は友だちと手を繋いで、頬にキスをするのか!?と。

 それから数日はしょんぼりして、女の子とも会っていないようだったが、今ではすっかりもとに戻っている。


 最近は女の子が雅樹を迎えに家に来る。

 

 家のインターホンが鳴り、画面で確認すると、昨日とは違う女の子が雅樹を迎えに来ていた。


「母さん、行ってくるよ」

 

 雅樹はそう言って家を出た。


 私は頭を抱え、玄関に座り込む。

 これも、ゲームの世界を知っているまいるなら何か知っているかもと、まいるに電話をかけるようと立ち上がった所で、会社へ行く支度が出来た様子の尚人くんがリビングから出てきた。


「雅樹はもう行ったんだ」


 出会った頃は同じ位の目線だったはずの尚人くんが、今では見上げると首が痛くなるくらいになり、貧血で倒れたりすることもなくなった。

 

「うん、あの、ね!今日帰って来たら聞いて欲しいことがあるんだけど」


 尚人くんにもちゃんと話そうと思いそう言うと、昔から変わらない綺麗な笑顔で、


「うん、分かった」


 と言った。


 しかし、次には、ネクタイを取りだして、私に差し出す。


「ねぇ、麻耶。ネクタイ結んで」


 これは毎朝のことだ。

 高校三年間、ネクタイだったのだから結べないことはないだろうし、私がどうしても手を離せない時は自分で結ぶのだ。


「もう仕方ないなぁー」


 それを分かっていても、私は尚人くんネクタイを結ぶ。


 やはり、私の旦那さんは手がかかる。


 私がネクタイを結び終わると、尚人くんは靴を履いた。


「じゃあ行くね」


 尚人くんはそう言ったのに、ドアに手をかけない。

 これは待ちの体制だ。


 よく分かっていることなので、尚人くんの頬にキスをした。


「うん!」


 満足そうに笑う尚人くん。

 それから続けざまに言う。


「行ってきます。愛してるよ、麻耶」

「私も、愛してるよ、尚人くん」


 私もいつのまにやら、本当に言わされるようになってしまった。

 いや、自分の意志で言っているんだけど、なんだか尚人くんに言わされてる気がする。


 尚人くんの唇を、自分の唇に触れたのを感じた。


 玄関から出て行く尚人くんを見送って、私は一人微笑んだ。

 


 まいるが言っていた。

 ここはゲームの世界。

 でも、私は一人の大切な人を選んでここにいる。

 雅樹にもそう思える子が出来ればいいな。


 そんなことを考えていると、外が騒がしいことに気がついた。

 何事かと思い、外に出てみると、


 雅樹と、今日の朝雅樹を迎えに来た女の子と、何故かまいるの娘さん、みおちゃんがその中心にいた。

 そして、次の瞬間には、澪ちゃんが、雅樹の頬を思いっきり叩いていた。


 修羅場?



 …私はそっと静かにドアをしめた。


 息子よ!頑張れ。

 もう高校生なんだから、自分のことは自分で!

 お母さんは忙しいの。多分。

 それに、毎日違う女の子と歩いてるんだから、自業自得だよね。 

 むしろ、澪ちゃんナイスとすら思う。




 それにしても、さっき玄関から出て行った尚人くんがあの場にいなかったということは、あの修羅場を尚人くんも通り過ぎて行ったということだ。


 私がいうのも何だけど、何かすることがあったんじゃないの!?





 夕方、いつもより早く帰宅した雅樹はぐったりとしていて、なんだか少しだけ罪悪感が湧いてきた。

 

 久しぶりに小さい頃したように雅樹をぎゅっと抱きしめると、いつもなら「キモイ、離せ」と言うだろうところだが、今日は何も言わなかった。


 帰ってきた尚人くんにそれを目撃され、顔を真っ赤にする雅樹は最高に可愛いかった。

 流石私の息子!


 反対に、尚人くんはにっこりと笑い、雅樹の方へ両手を広げた。

 凄く綺麗な笑顔だが、それは怒っている時の笑顔だと分かった。

 それは雅樹も一緒のようで、雅樹の顔が一瞬引きつる。


「雅樹!お父さんもぎゅっとしてあげよう!ほーらー、おいでー」


 高い調子で尚人くんは言った。

 

「やめろ、キモイ」


 といつもの調子で、しかし逃げながら、雅樹が言ったが、そんなのお構いなしというように尚人くんは雅樹を抱きしめる。

 というより、締め上げてる?


「よしよし!大きくなったなー」


 尚人くんは腕の中でもがく雅樹を押さえ込みながら言う。


「ちょ、マジ。ギブギブ!」


 と、雅樹は叫びながら、なんとか腕から逃れて出た。


「母さん、どうにかしろよ。本当、母さんのどこがそんなにいいのやら…」


 ポツリと言った雅樹の言葉。

 

「俺の大事なお嫁さんに何か文句でも?」


 私は同意する言葉なのだが、尚人くんはこの言葉を言うと怒る。

 もう、何度も体験済みだ。

 

 じりじりと雅樹を追い込んで行く尚人くん。


「ちょっと待って。父さんのお嫁さんでもあるが、俺の母さんでもあるんだけど!」


 必死にそう言いながら逃げる雅樹を尚人くんは捕まえた。


「そうだね、でも、何年も前から麻耶は俺だけのものだよ」


 それ子どもの前で言うセリフじゃないだろうと、思い、かなり恥ずかしかったので、聞かなかったことにした。


 すると、雅樹も顔を真っ赤にさせ、


「やめてくれ。親がいちゃこらしてるとこなんて見たくない。ごめんなさい」


 と素直に謝る。

 そんな雅樹が面白くて、私は堪えきれず笑った。

 それから尚人くんが笑って、雅樹も笑い出した。




 今日も我が家は平和だ。

 

 私は、幸せだ。


最後までお付き合いしていただきありがとうございました。


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