↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/19

第六話 狡猾

どのくらい歩いただろうか。三十分以上は歩いた気がする。


何が、ここから近いだよ。

めちゃくちゃ遠いだろ。


ユイのすぐ後ろには、サホリがピタリと付いてきている。

その少し後方に三人が見える。


これ五人で来てる意味なくね?


角を曲がると、前方にトンネルらしきものが見えてきた。


さっきまで遠くに見えていた街灯の明かりや、住宅街の生活音が、曲がり角を一つ曲がっただけで、完全に遮断される。


「……あれか」


トンネルの入り口近くで、後ろの三人を待つ間、ユイはトンネルの中を見渡す。


……いるわ、いるわ、わんさかいる。

姿は見えないけど、そこらじゅうから気配をビンビン感じる。


サホリが、ユイの二の腕を抱え込み、離そうとしない。


「お待たせー」


三人が合流する。


トンネルからは、じっとりとした湿気を含んだ、氷のように冷たい風が吹き抜けてくる。


「……じゃあ、安倍さん先頭よろしくね」


女子生徒の声が心なしか強張っている。


ユイを先頭に、後ろの四人はスマホの光を頼りに、トンネルの中を進み始める。


五人は自然と肩が触れ合うほど身を寄せ合い、お互いの存在を確かめるように固まって歩く。先頭を歩くユイだけが、鼻歌を口ずさんでいた。


しばらく歩いているのに、出口が一向に見えてこない。


……おかしい。


気配はビンビン感じるのに、霊の姿はまったくない。むしろ、静かすぎる。


「……何も起きないね」


「なんか……普通のトンネルって感じ」


そんなわけない。これだけはっきり気配がするのに、何もしてこないどころか、姿すら現さないなんて。


ユイは後ろをピタリと付いてきているサホリに目を向ける。


……そういやこいつ、前に霊に足掴まれてたっけ。

異常なくらい臆病だし……もしかして、霊を引き寄せる体質だったりして。


……まさかね。


「あのさ、ちょっとお願いなんだけど、サホリ……前変わってくんない?」


サホリは首を横にブンブン激しく振っている。


「ちょっと確認したいことがあるんだよね」


そう言って、ユイは後ろに数歩下がる。


――その瞬間。


ザザザザッ……。


「キャァッ!!!」


誰かの悲鳴を合図に、弾かれたように、後ろの三人の足が動いた。


「何……今何か聞こえた!?」


「無理! 無理! 無理!」


後ろの三人は、スマホの光を振り回しながら、出口の闇へと全速力で駆け出す。


逃げる足音がトンネル内に反響し、その音がさらに、彼女たちの恐怖心を煽る。


「ちょ、おい! 待てよ!」


なんなんだよ。行きたいって言ったの、お前らだろ……。


前を向くと、さっきまでいたはずのサホリがいない。


「…………は? え、サホリは?」


視界の中央が、陽炎のように揺らいでいる。

よく見ると、裂け目のようなものが浮かび上がっている。


その奥から不気味な青白い光がブワッと吹き出した。


――次の瞬間。


裂け目の奥から現世の闇を押し出すようにして、無数の霊が這い出てくる。

天井、壁、地面。あたり一面を埋め尽くしていく。


「……くそっ! やられた!!」


空間の歪みが現実の闇と同化していく。

裂け目は縦に細い一本の線に絞られていき、瞬く間に消滅した。


……こいつらせこい真似しやがって――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。