第十三話 違和感
――六月。
爽やかな初夏の朝の空気が、まだ少し眠気の残る肌を優しく撫でる。
学校が近づくにつれ、ユイの視界の先には見慣れた制服を着た生徒たちの姿が増えてくる。
「…………」
なんか最近、この辺の浮遊霊が減った気がする。まぁウチにとっちゃどーでもいいけど。
――教室。
席に着くと同時にサホリが駆け寄ってくる。
「ユイちゃんおはよう!」
「……サホリ」
「お前、肩に憑いてんぞ」
「えっ?なに?」
ユイは右手の二本指をサホリの肩にかざすと、サッと指を動かす。
スーッ……。
サホリの肩に憑いていた浮遊霊が一瞬にして浄化していく。
やっぱ、引き寄せ体質っての、間違いなさそうだな。
「え、ゴミ付いてた?ありがとう」
霊が視えるようになったと言っても、常に視えてるわけじゃないのか?
それとも上級霊だけ視えるのか。
「ユイちゃん、今日、数学の佐藤先生休みだって。自習かなぁ?」
「……ワッツ!?」
ユイはガバッと席を立ち上がると、感動を全身で体現するかのように、両手を広げて天に突き上げている。
「あぁ、神様。もうこのままいっそ成仏してもいい……」
「もうー、ユイちゃん不謹慎だよ」
サホリは呆れながらも、ユイのあまりの喜びようにこらえきれず、吹き出して笑う。
――そんな時。
「ここはなんとも退屈なところでありんすね」
二人の背後には花魁が立っていた。
「……!」
「……っくりした!!」
「いたのかよ!てかオマエどっから出てきたんだよ」
「あまりに退屈ゆえ、このまま果ててしまいそうでありんす」
「聞けよ!」
「てか、もう死んでるわ!」
ユイは顎を突き出すようにして、花魁に中指を立てる。
「喚くでない。小娘。わっちはサホリ嬢に憑いていくと申したでありんす」
ほんとコイツめんどくせぇな。このままサホリに付きまとわれてもなぁ。
ユイは頭をくしゃくしゃと掻きむしっている。
「なぁ、この前言ってた望月の血がどうとかって――」
「って、もういねーし!」
花魁は音もなく消えていた。
「なんかね、いつも出てきたと思ったら、いつの間にか消えちゃうの」
なんだそれ。スマホのバナー通知かよ。
――チャイムが鳴る。
先生が教室に入ってくる。
「全員、席着いたかー」
「ホームルームの前に、今日は転校生を紹介するぞー」
……転校生?随分急だな。
教室に一人の少女が入ってくる。
真っ青なショートヘアー。
両耳に勾玉の耳飾り。
手首には大量の数珠。
なんだこの、いかにもアニメに出てきそうなビジュアルは。
周囲がざわついている。
ユイを除いて。
「……っ」
ユイは転校生から何かを感じ取っていた。
あいつ、こっち側だ――




