朝顔柄の浴衣
「お待たせ」
恭一と麻人と景山は、茶の間に入ってきた彩音を見た。
「わぁ、彩音さん、すごく綺麗」
「ありがとう、麻人君」
彩音は、濃い藍色に花火柄の浴衣である。白い帯を合わせ、すっきりした佇まいだ。
「麻人君も景山君も素敵ね。恭一は、なんだか渋いわ。けど似合ってる」
照れた恭一を見て、麻人と景山はくすくす笑っている。
「悠ちゃん、早く早く」
奈穂に手を引っ張られながら、悠が部屋に入ってきた。悠は、白地に淡い紫と水色の朝顔柄の浴衣だ。黄色の帯を合わせ、溌溂とした悠にとても似合っている。
恭一と麻人は、しばらく悠を見ていた。
「どうかな?」
悠は、恥ずかしそうに恭一達を見た。
「すごく、可愛いです」
「ありがとう。景山君」
恭一と麻人は、慌てて
「可愛い、可愛い」
と褒め、わざとらしい称賛になってしまった。
「恭君も麻人さんも、何だか変」
奈穂が、怪訝な顔をしている。奈穂は、白地にぼたんの花や黒い蝶の柄があしらわれた、華やかな浴衣だ。鶯色の帯を合わせ派手さが和らぎ、むしろ可憐に見える。
「奈穂ちゃん、新しい浴衣だな。似合ってる」
「うん。ママに選んでもらった。ありがとう」
恭一に褒められ、奈穂は嬉しそうに笑った。
「彩音さんも奈穂ちゃんも、すごく似合ってて。私なんて……」
「悠、とっても可愛いよ。お母さんが見たら喜ぶよ」
麻人はスマホを手に取り、悠を撮影しだした。なぜか景山も、悠の姿をスマホで撮っている。奈穂も撮り出し、ちょっとした撮影会が始まった。
「みんな。写真は現地でも撮れるしそろそろ出掛けないか? いい場所を取れなくなる」
みなが恭一を見ると、いそいそと出掛ける用意をしだした。
最寄り駅まで、恭一の祖父と母親が車で送ってくれることになり、男性陣は祖父の車、女性陣は母親の車へと乗り込んだ。
「麻人君も景山君も、なかなかだな。恭一、うまく着せてあげたな」
「ああ、結構難しかった」
「この浴衣、懐かしいな。栄一も気に入ってよく着てたな」
「俺も、これは好きだ。いい浴衣だ」
「おぉ、お目が高いな。これは、昔ながらの職人の生地だからな」
助手席に座った恭一は、駅まで祖父とたわいもない会話をしていた。
恭一は、ふとルームミラーに映る麻人と景山を見た。二人とも背筋が伸び、静かに前を見ている。ルームミラー越しに麻人と目が合った気がして、恭一は視線をはずした。
恭一は、悠の浴衣姿には本当に驚いた。朝顔柄の浴衣……過去がよみがえり、胸が詰まる思いだった。麻人もまた、同じ気持ちだったのだろうか。
もうすぐ、駅に着く。昨年までとは違い、高揚感を覚える恭一だった。




