いつもの日常
「恭一は、前世の記憶があるんでしょ?」
彩音に言われ、恭一は驚いてしまった。
「気づいてたんだ……」
彩音は、恭一に前世の記憶があることを薄々感じていた。恭一は2年前に脳振とうを起こし、気付いた後に前世の記憶があった。彩音は、その頃から恭一の様子が少し変わったと思っていた。
恭一は元々物静かであったが、2年前あたりから妙に落ち着いた雰囲気になったと彩音は言った。確かに、両親や姉との会話が減っていたかもしれない。両親は、そんな恭一を親と話すのを面倒がる思春期だと解釈していた。
それに、オーラが赤色だったのに、赤の周りに紫色が重なって見えるようになったそうだ。恭一に何か変化があったのだろうか?彩音は不思議に思い、気になっていたようだ。
「もしかしたら、悠ちゃんもなのかな?」
「悠も前世の記憶がある」
「嘘。すごーい! 2人ともオーラの感じが一緒なのよね」
彩音は目をキラキラさせている。完全に楽しんでいるようだ。
「悠と俺って似てるってことなのかな?」
「そうね。赤いオーラの人って、責任感があってリーダーシップがある人って気がする」
「そうなのかな?」
「それに行動力もあるよね」
恭一は、姉を「独特の感性がある不思議系」と認識している。とはいっても、姉のことは好きである。姉がいると、家が明るくなるし家族との会話がスムーズになる。
明日、彩音は下宿先に帰ってしまうが、週末に畑近くの祠に一緒に行くことにした。その時は、悠も誘おうと恭一と彩音は相談した。そして、前世での恭一が死んでしまってからのことを悠に聞きたいと思っている。
次の日の朝、彩音は父親の車で下宿先まで送ってもらったようだ。車で1時間半はかかるだろう。父親というのは、娘には甘いものだなと恭一は思った。
数日が過ぎ、麻人はすっかり具合が良くなった。
「麻人、体調は良くなったようだな」
「うん。お陰様でね」
「無理するなよ」
「ありがとう」
恭一は、麻人の笑顔を見ると心が穏やかになり、いつも通りの日常が戻ったと安心した。教室では、男女問わず麻人には気軽にみんなが話しかける。麻人がいるとクラスの空気が和やかになる。凄い奴だなと、恭一は素直に関心してしまう。
恭一は、普段通り放課後は部活に行った。練習は厳しいが、恭一にとっては気が引き締まり、精神的にも落ち着くことができる。
先輩達は、インターハイに向け内心はピリピリしているのだろう。恭一も、気持ちを集中させ練習に励んだ。
ふと、週末に彩音と祠に行く時、ビハクも連れて行くべきだろうかと恭一は考えた。前回のように、勝手に付いてくるかもなと思いニヤリとしてしまった。




