禍々しい魔力
「ふふふ……どうやら少しは楽しめそうですね……」
ナズナとジニアがそれぞれ別々の場所から迫って来ている事に気が付いたのだろう。フォンセは不敵な笑みを浮かべながらそう呟いた。
「はっ!」
ナズナは不敵に笑っているフォンセに向かって刀を振り下ろした。
「!?」
油断している訳では無かったのだろうが、フォンセの予想よりもナズナのスピードが若干上回っていたのかナズナの刀はフォンセに届いた。
「……思ったよりもたいした事ないんじゃないか?」
ナズナもまさか振り下ろした刀がフォンセに届くとは思っていなかったようで、少し驚いた表情を浮かべていたが、直ぐにフォンセを挑発をするようにそう言った。
「……はぁーー仕方がありません……私に傷を付けた事を称えて、少しだけ本気でお相手をして差し上げましょう!」
フォンセはナズナから一歩引くと、眼を閉じ深い溜息を吐いた。眼を開けたフォンセの辺りには禍々しい程の魔力が集まって来るのを感じた。
「ようやく本性を現しやがったか……」
ナズナはこんな状況であるにも関わらず、口元には笑みを浮かべていた。普通に考えてみれば絶望的な状況である事に変わりが無いはずなのだが、ナズナは強者を相手であればあるほど、その真価を発揮する。
「……」
その様子をいつでも攻撃を仕掛けられる位置から見ていたジニアは、その圧倒的なまでの魔力に対して恐怖を抱いている様子だった。よく見るとシオンに回復魔法を掛けていたリリィも身体を震わせている様子だった。
「……ジニアやリリィがそこまでの恐怖を感じるほどの魔力を俺には感じる事は出来ないが……これだけは分かる。今、俺は最高に楽しい!」
ほんの一瞬だけだったが、ジニアとリリィに視線を向けた後、ナズナはまるで狂人にでなったかのように笑いながらフォンセに斬り掛かった。
「ふふふ……貴方も私と同じだったんですね……それでは存分に楽しみましょう……殺し合いを」
フォンセの手にはいつの間にか杖のような物で握られていた。その杖でナズナの刀をいとも簡単に受け止めながらそう口にした。
「ちっ……ならこれでどうだ?」
ナズナは左手に持った短剣をがら空きとなっていたフォンセの腹目掛けて突き刺そうとした。
「……まだまだですね……」
ナズナの短剣を止めたのはいつの間にかフォンセの手に握られていた盾だった。
「……」
「……」
一瞬何が起こったのか分からなかったようで、ナズナはフォンセから一歩後退った。
「……それは何だ?」
今の一瞬の攻防で杖から盾へと形状を変えたようにしか見えなかった。その事にナズナも気が付いたのだろう。フォンセの持つ盾を指差しながらそう訊いた。




