不自然な笑み
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「……」
フォンセに命令されるがまま、リリィ達の元へ進んでいるナズナは何を思っているのだろうか……フォンセの魔法が強力である事は先の魔法から容易に想像が出来るが、あのナズナの心がそんなに簡単に支配できるとは思えない。そんな風に思っていたからか、操られているはずのナズナの口元が一瞬だけ緩んだのは気のせいだったのだろうか。
「ナズナ!!」
いつの間にかシオンを追い抜いて一番初めにこの部屋に辿り着いたのはリリィだった。生きているという事にほっとした半面、虚ろな眼をしたナズナを見て徐々にリリィの表情が青ざめていくのが分かった。
「……どうした? あれは……」
少し遅れて来たシオンもナズナの姿を眼で確認したようで、何処か少し安堵したような表情をしていた。
「あれは……」
更に遅れて来たジニアもナズナの姿を確認して直ぐに、ナズナがフォンセの魔法を掛けられている事に気が付いたようだった。
「……奴を倒さなければあの堕天使の元には辿り着けないという訳か……良いだろう、俺が殺る」
ナズナを倒さなければ先には進めない事を察したのか、シオンは青ざめているリリィを押しのけナズナの前へと進んだ。
「シオン先輩!! ナズナは操られているだけです……分かっているとは思いますが殺さないで下さいよ?」
ナズナがいる位置から一番遠い所にいたジニアはシオンに釘をさす為、わざと大きな声でそう叫んだ。
「……ダメ……シオン……ナズナと戦っちゃダメ……」
ジニアの叫んだ声によってようやく現実に引き戻されたようで、目の前にいたシオンにしがみ付きながらリリィはそう言った。
「……何の真似だ? まさか俺があいつに負けるとでも? それとも何か? どちらかが死ぬとでも?」
しがみ付いたリリィを上から見下すようにシオンはそう言うと、リリィを振り払い一歩また一歩とナズナの元へと足を進めて行った。
「……」
それ以上どうする事も出来ないリリィはせめて、二人共大きな怪我をしない事を只々祈る事しか出来ないようだった。
いつの間にかリリィの隣に立っていたジニアはそっとリリィの肩に手を置いた。
「大丈夫だよ……リリィ。いざとなったら俺が命を掛けてでも二人を止めるから……」
ジニアはもしかしたらこうなる事を予想していたのかも知れない……自分の父親が招いた事は自分がケリを付けるという覚悟をしていたのだろう、リリィの肩に手を乗せたままそう呟くとこれから始まる兄弟喧嘩を見守る為に視線を移した。




