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4つの交錯  作者: 幡賀 吉紗
~覇魔歌 編~
30/67

Beginning

 

ーーーー……これは、2年ほど前の話。


魔源域ダークオリジンの最果ての地。


絶世森海エンゾバース”と呼ばれる、海の中に木々が存在する森林地帯。


「うわぁぁああぁ!!」

突然“破壊神ダークマター”に襲撃され、たくさんの人々が殺されていく。

中には妖精も居たが、その襲撃で巻き添えをくらう。


木の精、水の精、空の精、魚の精、鳥の精…。そういった妖精族がいたおかげで成り立っていた森も、妖精たちが巻き添えを喰らって死んでいったために、少しずつ景観を失っていった。


だが、そんなときに、1人の若い女がそこに立っていた。


特徴としては、カチューシャでオールバックにしている金髪に、肩ヒモが無く胸元で締め付けるタイプの薄紫色ワンピース、四分音符の形したイヤリング、黒いニーソックスを穿いていて、少しかかと低めのブーツを履いている。


その女は、思いがけない行動に出る。


「5つの精鋭ここにあれ 集いし魂 ぶつかる戦意 弾丸となりて 蘇生し憤怒 集中放火のかがりび 我らのチカラで 守り抜け♪」


と、いきなり歌い始める。


すると…

巻き添え喰らって死んだハズの妖精たちがよみがえり、その女の手の上で集い、超巨大な弾丸となり、破壊神ダークマターを巻き込んで大ダメージを与えた。


「っく…!!?」

さすがの破壊神ダークマターも、これには驚き、絶世森海エンゾバースに近づく事は二度と無かった。



……ーーーー


この過去を思い出しながら、その女は言う。


「羅生…アンタが作った“能力マイト”は、それを付与した人間によって発動され、呪文詠唱も何も使わずに発動できる。けど、それは属性や強度が限られていて、人によって限界値が違うんだ…


 …でも、アタシのは違う。


 歌のチカラを利用して、歌った通りにワザを繰り出したりできる…! だからアタシぁ、自分の能力をこう呼んでる。



 “覇魔歌唱アナイヒレイト” と…」



覇魔歌唱アナイヒレイト

無限のチカラを秘めた能力で、声に出して歌に乗せるだけで、そのチカラを発揮できる、能力マイトとは別次元の何か。


「…覇魔歌唱アナイヒレイト…」

それを聞いたことがある天世あまよ


だが、話す余地なく歌い始める。


「6もの民 能力マイト使い 歌に溺れて 消え失せ ひれ伏せ 神速のはどうの前に」


こう歌った時、気づいたら終矢、バルミ、天世の3人は、いつの間にか攻撃を喰らい、地面に向かってひれ伏し、立てなくなっていた。


そして、4人目に泉美が狙われた時、異変が起きた。



キィィィィン……ッッッ



受けきっている泉美。そして、彼女の前で動きが止まる女。


「…な、何…!? このチカラ…ッ」


このとき泉美は、覇力アトモス禍々しき呪いの眼エンシェントブラックアイを混ぜ込んで、神速で動くその女を捕らえた。


「…私には、神速も見える…。どうやら倉井くんとバルミ、そして母さんには見えなかったみたいだけど…速い動きを見るのは得意よ」


と、受けきりながら語った。


止められた女は、いったん攻撃を止め、話し始める。

「アタシの攻撃を受けきられたのは初めてよ…」

そして女は、自己紹介をする。



「アタシは『羽多浜うたはま 智歌ちか』、この名前…聞いた事あるんじゃない?」



その名前は、泉美は聞き覚えがあった。

「羽多浜…って、まさか…



 表世界の“トップアイドル兼歌手”の…!!?」



そう。神聖なる歌姫ホーリーシンガーだったのだ。


「…えぇぇぇえええぇッッ!!?」

とても驚く彩夏。そして、

「そ、そんな…ッ! …この色紙にサイン下さい!!」

なんと、彩夏は羽多浜の大ファンだったのだ!


「ん゛ぇえ゛っ!!?」

いきなり来た彩夏の希望に驚くが、その時はアイドル魂が発動し、サインする。

「…はいっ! これでいい?」

と、ややツンデレ気味に、そっぽ向いて頬を赤らめながらサインした色紙を返す。


「サインするのかよっ!!」

と、思わずツッコミを入れる泉美。


ハッ、と気づき、智歌は正気に戻る。


「調子狂うなぁ…。…でも、アンタらの敗北に変わりは無いのよ♪」

歌唱を始め、戦闘態勢になる。


「私たちで止めるわ! 高良さん、行くよ!」

彩夏も、能力解放して戦闘態勢に。


「はい! 彩夏さん!」

泉美も、戦闘態勢に。

しかしこの時、異変に気付いた彩夏は、すかさずツッコむ。

「…ん? 今、“彩夏さん”って…」


そう。呼び方が自然と変わっていた。

「…んぅ!? あ、えっと…」

それに気付いて慌てる泉美。

「…この呼び方の方が…呼びやすくて…」


「…いいわ。その呼び方でお願いね? 泉美ちゃん!」

と、合わせて彩夏も呼び方を変えた。


「…さて。私も動くとするか…」

その様子を見ていた羅生も、戦闘態勢になる。




…歌姫と、能力者マイターの戦いが…今、始まる!!


 

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