Power of words
「希望の歌力の前には、能力は無意味…。掻き消すことも可能だから」
そう言い放ち、智歌は歌う。
「想像されたチカラ消して
新天地へと誘う
それがアタシの歌唱力
そこに問われる殲滅
全ての能力打ち消して
表現詠唱は勝利を導き
全てを無に帰す挽回
この手に宿れ 神秘の覇拳♪」
そう歌った時、泉美や彩夏、羅生のオーラ値が減少し、チカラが激減し始めた。
「な、何…コレッ…!?」
と、真っ先に泉美が気づいたが、遅かった。
「ふふ♪ アタシの表現詠唱は、歌詞に乗っていれば“上限なく”表現してくれる。そんな詠唱に“上限のある”能力が勝てるわけ無いでしょう? 諦めなさい…」
泉美は太刀打ちできず、岩壁に勢いよくぶつかり、立ち上がれなくなった。
それを見た父親の羅生。親の本能が動き出す。
「貴様…私の娘を、よくも…」
そうして怒りに身を任せた時、信じられない速度で攻撃を繰り出す。両手の掌に気を込めた仙球気体を宿らせ、それを神速で繰り出し、智歌に向けた。
その攻撃があまりにも速く、さすがの智歌も神速以上の速度は捉えられずに喰らった。
「うぐ…ッ! な、何…いまの速さ…ッッ」
バルミの“神速蹴撃”という技の速度が、970km/s (秒速970km)…それでも相当速いのだが、今のは軽く2,000km/s (秒速2,000km)を超えていたという。
あまりに速すぎる数値だが、それを普通に繰り出す能力者は限られている。
実は、神速の技を繰り出せるのは…
表現詠唱のチカラを持つ智歌と、
智歌の攻撃を受けきった泉美、
能力を作り上げた人造人間の羅生、
そして、羅生が造り出した人造人間の彩夏。
その中で最速の技を繰り出す人物は、まだ決まっていない。
なぜなら、測定する機器は無いのだから。
「…やるわね、羅生…。いや、この世界の創成主であり人造人間の…
ラウ・ビェッキバンク・ヴェルシフ」
ーーーーー………
数年前、ラウは、人造人間界で最強を誇る“ヴェルシフ一族”の総長。
だが、忽然と姿を消し、総長の座を退いたラウは、いろんな国へ、超長髪の銀髪と黒衣をまとって変装し、暗くなったときに移動し、見られないように闇へ消えた。
しかし、その暗がりの中、ラウは天世と出会ってしまう。
「…貴方、能力者ね?」
黒き闇の中、目が良くて暗がりも明るく見える天世がいて、見つかってしまったのだ。
「…なぜ分かった? 初めて気づかれたぞ…」
戦闘態勢になるラウ。だがしかし、そんなラウの拳に優しく手を添え、平和を試みる。
「前から怪しいと思ってたのよ。なぜか夜しか移動しないし、わざわざ黒い衣服にして移動してたから、見られたらマズいのかと思って、気づいてみたのよ…」
するとラウは、その優しさに溺れ始め、戦闘態勢を解き、話し始める。
「…私は、人造人間界から抜け出し、エフティルシパ王国と結んだ“条約”を裏切った。それで行き場を無くし、ここへたどり着いたんだ…」
聖都ジアッポーヌ(元・日本)へと迷い込み、誰にもバレずに身を潜めていたラウは、いつの間にか天世に惚れ、いつしか一緒に遊びに行く仲へと進展し、相互告白したために相思相愛が発覚し、結婚した。
ーーーーー………
そんなヴェルシフ家の末裔が、羅生なのだ。
「…私は確かに人造人間だが、お前は人間だよな? 負けるハズがない…」
と自信満々に言うが、智歌は驚愕の発言をする。
「アタシ、人間でも人造人間でもなければ、混在人間でもない…
歌聖神 よ♪」




