2人の破壊神
「っく…!」
泉美に弱点を握られ、更にはパワー負けしていて、禍々しき呪いの眼も、元の出力差が大きくてかなわなかった。
「鉄雄…。今まで仲良くしてたのは、私に悟られないようにするため?」
唐突に、そんな質問をする。
「確かに悟られたくなかったが、決して計画してたわけじゃない…」
泉美は何を言いたいのか分からなかったようだが、鉄雄は続ける。
「俺は泉美に“平和”を授けたかった…。だから、荒れている裏世界を全て壊して、俺らの超能力を戦闘に使わなくて済むようにしたかった…」
「それは間違ってるよ、鉄雄…」
泉美は訂正を求めた。
「破壊してまで世界を変える必要は無い…。私たちが最初から裏世界に関与しなければ、ただ超能力ってだけで終わったかもしれない…」
ここにきて、成し得ることのできない理想を語る。
「でも、こうなった以上は…破壊する鉄雄を、ここで止めるしかない…」
構えて、鉄雄に対しての闘争心をむき出しにする。
---…一方で、バルミ側。
「バーミー…そんなに破壊活動したい理由は何?」
唐突に、彩夏は質問を投げかける。
「言っただろ? こんな錆びた世界を好きになれないから、壊して作り変える…って」
「……」
それを聞いた綾巻は、
「わざわざ壊して作り変える意味は?」
と、壊すことに疑問を抱いた。
その疑問に、バルミは、こう答えた。
「一度制圧して世界を壊さないと、どこかで必ずアンチ派の反乱が起きて、また同じように繰り返す…。それなら、アタシが全て壊して、1から作り直せばいいと思ったまでのこと」
そう言いバルミは、2人に向けて光速射撃を連射する。
それを受けてかわしながら、彩夏は言う。
「壊さなくてもいい方法がある…!」
続いて綾巻が言う。同じように受けてかわしながら。
「壊すくらいなら、自分がそういった破壊活動や犯罪を取り締まればいい…」
つまりは移次元警官になれ、と言う意見。
「移次元警官なんて…割に合わない…」
バルミは俯いた。移次元警官に関しては、何かトラウマがあるように見えた。
「それに…」
ここで、驚愕の真実が話される。
「エフティルシパが壊されたのは、元移次元警官だったアイツの陰謀だった…! そんな移次元警官に、アタシは入る気は無い…!!」
「元移次元警官…?」
綾巻には心当たりは見あたらなかった。だが…
「元…移次元警官…!?」
どうやら彩夏には、心当たりが居るようだ。
「でも、それって…つまりは“復讐”よね?」
と綾巻は恐る恐る聞いてみる。すると、縦にうなずくバルミ。
「アタシは絶対に、この復讐を果たす。それが使命…!」
そう言った直後、バルミは綾巻を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた先には……
---…鉄雄サイド。
「くっ…。泉美……」
あまりの強さに屈伏する鉄雄。
「分かったら、もう二度と破壊活動は…」
『しないで』と言おうとしたが、そこに鉄雄が割り込む。
「今は破壊活動してないから安心しろ。昨日、生徒会長や副会長にもバレちまったし、悉く倒されたからな…」
そうして破壊神の衣装を破棄し、誠意を見せた。
「…そう。なら良かった…」
ホッと、ひと安心。そう思った矢先に、思わぬ出会いが訪れる。
鉄雄に向かって何かが飛んできた。それを受け止めようとする鉄雄。
だがしかし、その何かは2つあり、片方は明らかに倍速。つまりは追いかけてきているように見えた。
……飛んできたのは、2つとも人間だった。
飛ばされてるのは綾巻、追っているのはバルミ。
「き、霧龍くん!? それに高良さん…」
飛ばされた先を見て、綾巻は少し慌てた。だがしかし、冷静に判断し、軌道を逸らして激突を避けた。
「さすがは“超分析”だ…」
そう発言したのは、意外にも終矢だった。
「っ!? そこにいるのは、倉井くん?」
「そうです。久しぶりですね、師匠」
どうやら終矢と綾巻は、師弟関係のようだ。
「まさか、こんなとこで会うとはね…」
その時、綾巻は同時に奈那が居ることも確認した。
「っ…! 生徒会長…」
その奈那を突然背後から首締めにかかる彩夏。
「うぐっ!?」
「刺神さん…よく来たね。精神構造を疑うよ…」
左腕で確実に仕留めにいっている彩夏に、奈那は全く対抗できなかった。
そして奈那は気を失い、そこに倒れ込んだ。
そんなとき、バルミが鉄雄に突然こう問う。
「霧龍…鉄雄…。貴様も破壊神で間違いないな?」
と質問した。それに対して鉄雄は、縦に頷いた。
「…そういうオマエも破壊神なんだな?」
「あぁ、そうだ!」
2人の破壊神が揃った時、何かイヤな予感が全員の脳裏に走った…-----




