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「神崎いいか?」

「はい、どうぞ」



その後日向と一緒に神崎の様子を伺いに行くと神崎は机に座って参考書を見ていた。



「柳瀬さん、麻里、どうしました?」

「清人が莉亜の様子見に行くって」

「え? ああ」



嘘つくなよ…… お前が神崎の様子見たいからって俺を誘ったんだろ。



「心配してくれてありがとうございます、ですが私はもう大丈夫ですよ?」

「そうか。 そういえば神崎の父さんってさ、もしかしてあの神崎製薬の?」

「はい、そうです。 父は祖父、祖母の跡を継いで……」



てことは神崎の父さんが元締めってわけか。 俺の中で製薬会社って良いイメージないんだよなぁ。 映画とか陰謀論的な観点からすると。 つーか実際脅されたし。



「柳瀬さん、父の言った事は気になさる必要ありません。 本当にやるなら相手に告げずにやりますから」

「どっちにしろ怖ぇな…… まぁそれは置いといて。 なんでゴミ箱にテスト捨ててんだ?」

「うッ…… こ、これは」

「あ、本当だ。 莉亜あんなに喜んでたのに」

「お前って本当水臭いよなぁ、これ以上心配掛けたくないってのはわかるけどさ」

「お2人が来ると思わなくて……」



日向は神崎のテストをゴミ箱から取り出した。 



「うわ、点数良すぎてドン引きする」

「ひ、酷いッ」

「そこかよ…… 神崎も捨てる事ないだろ? ここまで頑張ったのに」

「今思うと本当にバカな考えでした、1番になって認めてもらうなどと…… 父にとっては常に首席で優秀な人物なら誰でも良かったんです、私自身の事なんてどうでも」

「でもさ、目には止まったろ?」

「え?」

「神崎が一位になったから見込みがあるかもしれないって認めさせてやったろ?」

「ああ、そういう考えもあるのですね。 柳瀬さんらしいです、でもそうですね。 もうそんな事には拘らないと決めてたんですが私もバカですね」

「うん、バカだな」

「莉亜はバカ」

「お2人でバカって言わなくてもいいじゃないですか!」

「まったくうるさいなぁ! あんたの声は近所迷惑なのよバカ!」

「あ、彩奈まで……」



篠原まで来ちゃったので俺は自分の部屋に退散した。 でもまぁ神崎は空元気かもしれないけどもう大丈夫だよな? 日向も篠原も居るし。



「清人」

「ん?」

「お尻のポケットの中見て」

「え?」



ポケットに手を突っ込むと紙が入っていたと思ったら神崎のテストの答案用紙じゃねぇか。



「お前いつの間にこんなの俺のポケットに入れたんだ? 全然気付かなかったぞ」

「彩が来た時捨てるのもなんだし目の前に居た清人のポケットに入れちゃった」

「なんかもう折り目ついてるどころかくしゃくしゃになってるけど後で返しとくか。 これでも記念みたいなもんだからな」

「清っち!! これどういう事!?」



その時篠原が部屋に入ってきた。 なんか少し…… いや怒ってる。



「なんなんだよ?」

「見てよこれ!!」



そう言って俺に携帯を見せてきた。 LINEがどうかしたのか? って滝沢じゃん。



「滝沢がどうかしたのか? お前にブチられたって言ってたけど」

「それがターキーったら……」



チキンみたいなあだ名付けるなよな。 詳しく見てみるととんでもない頼み事が書かれてあった。



彼女のふりをしてくれと…… あいつバカなのか? 



「これは…… 酷いな」

「そうなのよ、めちゃくちゃ可愛い彼女出来たって友達に見栄張って言っちゃったみたいなの、それからしつこくてしつこくて。 テメーのせいだろっつの。 それにもう私には清っちが居るからって言っちゃおうかなって」

「それ以前に彩のものじゃないし」

「待て待て!! それはマズい、やめてくれ。 お前は先輩の知り合いって事になってるんだぞ?」

「別にそれなら言っても問題ないよね?」



こいつ…… わかってて言ってるよな!? そうしたら俺と先輩の関係が。 滝沢の事だから何か会社でも言うかもしれない、そうなったら火消しが俺がする羽目になってそもそも間違いだって否定しても篠原が俺の事好きだって言ったら滝沢のヘイトを確実に買う事になって何かと面倒に。



「どうしよぉ? ターキーは今回だけ協力してくれればいいって頼み込んできてるけど私にとっちゃ清っち以外の男の子ともう遊ばないって事にしてるし清っちにも言われたし健気に守ってるんだけどなぁ」

「ぐうッ…… 何が目的なんだ?」

「私が頑張って体裁を整えてあげる。 でも清っちの会社の人だし清っちの後輩みたいなもんでしょ? 私がそこまでするのに何もないなんて寂しいよねぇ」

「ならあたしが褒めてあげる。 偉い彩」

「なんであんたに褒められなきゃいけないのよ? 私は清っちに言ってるんだからね」

「何をして欲しいんだ?」

「じゃあチューッ!」

「んなッ!?」



篠原は顔を突き出すがハッとして後退した。



「おえー、あっぶな! 麻里とチューしちゃうところだったじゃない、なんであんたがそこに来るわけ?」

「ちッ……」



日向がバレたかという感じに舌打ちをした。



「でもまぁそうだなぁ、私からってなんか違う気がするから清っちからしてよ? そうすればなんにも面倒な事にならないで穏便に済むよ?」

「彩卑怯」

「あはは、卑怯で結構! さあどうする?」



ジトッと見つめる日向の目が怖い、だけど後を考えると篠原も怖い。 2人から脅迫されているみたいだ…… テメー後で覚えとけよ的なオーラが出ている。



滝沢の奴、バカな嘘なんてつきやがって嘘つきはろくなのがいねぇ!! と自分にブーメランしている事にまったく気付いていない。



「さあ!」

「清人……」



うぐぐぐッ!! すまん日向、こうするしかないんだッ!



「わッ! きゃーッ!」

「むぅーッ!!」

「これでいいか?」

「清っちから来たのはいいけどほっぺにチューじゃ少し物足りないなぁ。 でも麻里の悔しそうな顔見られて面白かったからいいって事にしてあげる」

「バカ清人!」

「いってぇ!!」



思い切り日向に背中を叩かれた。 そんなの無視して篠原は滝沢に返事を返した。



「早ッ! 既読した瞬間にもう返事が来た。 ターキーったら乙女みたい」

「で? なんて?」

「とりあえず弥生さんに会社でお願いするみたい。 私を借りたいって」

「あ、そうか。 そうだよな」



はぁ、なんか休む暇ない……



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