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「神崎、夕飯出来たって言ってるけど来れるか?」

「はい、行くしかないでしょう」

「大丈夫か?」

「麻里は…… まだ怒ってますよね?」

「うーん…… 今は俺とも口聞いてくれないし多分」

「ですよね」



日向はあの後部屋に閉じこもってしまった、そうなって当然だ。



「ほら、まだ脚がおぼつかないぞ? 無理しないでおけよ、ここに持って来てやるからさ」

「そんなわけには……」



産まれたての小鹿みたいにフラフラしてるのでやっぱりやめさせておいた。



「じゃあ持ってくるから寝てろよ?」

「はい、すみません」

「食ったら薬飲めよ」

「はい。 ってそこまで子供じゃありません!」



神崎の部屋を後にし日向の部屋に向かった。 さっきの事を考えるとノックするのも気が引ける。



日向って普段あんなんだけど喧嘩っ早い一面あるからなぁ……



「おーい日向」

「…………」



返事がない、けど来てもらはないと。 意を決してドアを開けた。 あれ? 居ないぞ? そう思って部屋をよく見ると布団が少し盛り上がっていた。



そっと布団をめくってみると身体を縮こませて日向は寝ていた。 寝ていたというか泣き疲れて寝てしまったみたいだ、鼻が少し赤いし頬も泣いた後が。



傷付かせたよなぁ、こんな俺がプレイボーイ紛いみたいな事してたんだし。



「日向起きろ」

「…… んんッ」



肩に軽く触れて起こそうとしたら振り払われた。 



「日向」

「嫌ッ!!」

「いでッ」



日向の裏拳が顎にヒットしたところで日向は目が覚めたようだ。



「清人?」

「お、おはよう」

「あたし…… 寝てた?」

「うん」

「そう」



身を起こして行くのかと思いきや日向の目にはまた涙がじんわりと溢れてきた。



「ひ、日向?」

「やっと…… やっと清人があたしの事見てくれたと思ったのにッ」

「ごめんな」

「あの人とは仕方ないって思ってた。 でも彩と莉亜の事まで黙ってるなんて」

「神崎は今日だから」

「同じ。 彩の事黙ってたんでしょ」

「そ、それは……」



ぐうの音も出ない、まったくそうでございます。 



「ほらぁー、あんたらまだやってんの? ご飯冷めちゃうから早く来いっつーの!」

「ごめん、今行くよ。 な? 日向」

「睨むな睨むな! 怖いなぁ麻里は。 そんなんじゃ清っちは逃げてくぞ〜?」

「ふん」



キッチンへ着くと篠原は日向に神崎の分のご飯を渡した。 篠原の奴容赦ねぇな。



「なんであたしが?」

「麻里から渡された方が莉亜も喜ぶからに決まってんじゃん、頼んだよ!」

「はぁ……」



日向は重たい足取りで神崎の部屋に向かって行った。



「大変だなぁ清っちは悩みが多くて」

「お前を見習いたいよ」

「私も悩んでないわけじゃあないんだけどね、清っちの事は麻里にも弥生さんにもましてや莉亜にも渡したくないし」

「し、篠原は比較的平和主義者だよな? さっきも揉めそうになった時も止めようとしてくれたしさ」

「あはッ! でしょ〜?」

「お前ッ!? 今この状況でよくそんな事出来るな?」



篠原は褒めてと言わんばかりに俺に擦り付いてきた。 こいつ普段からタッチが多いから今の俺には刺激が強過ぎる。



「うーん! 今の清っち前にも増して可愛いなぁ、すっかり赤くなっちゃって」

「日向が来たらどうすんだよ!? って、あ……」



時既に遅し。 日向は俺と篠原を死んだ目で見ていた。



「あたしを追い出して2人でイチャつく算段?」

「魔が刺しただけだよぉ〜?」

「そうだ日向、別に何も……」



してないわけには見えないよなぁ……



日向はスタスタと俺の隣に来て篠原から引き離した。



「ふふーん! 対抗心メラメラって感じだね。 で? どうだった莉亜とは」

「別に。 話す事なんてないし」

「あははッ、想像つく!」



その後篠原が一方的にトークし日向は終始ムスッとしていた。 この気不味い雰囲気どうにかしたい。



「なあ、神崎の風邪が治ったらみんなで動物園とかに行かないか?」

「動物園?」

「あ、私行ってみたい! 大昔にしか行った記憶ないし」

「だろ? 日向はどうだ?」

「…… 行く!」

「じゃあ決定だな」

「あらぁー、麻里ったらちょっと目がキラキラしてるよ」

「うるさい」



適当に言ったけどここら辺に動物園なんてあったっけ!?



夕飯を食べ終わり検索してみるとあった。 だがショボそう…… 想像してたのとちょっと違う。 



日向も楽しみにしているようだし心配だ。 でもまぁいいか、少しでも和んでくれれば。



「という事になったけどいいか?」

「動物園!? 私初めてです! ゴリラ居るしょうか?」



何故ピンポイントでゴリラ? 好きなのか?



「調べたら居たけど。 でも大した事なさそうだしそんなに期待したい方がいいかもよ?」

「いえ! みんなで行けるのですね? 素敵な思い出になりそうです!」

「日向とは大丈夫だったか?」

「はい、先程来た時はご飯と呟いて少し見つめ合って出て行きました」



見つめ合ってってなんだよ? それって殺気でも飛ばされてたんじゃねぇの?



なんにしろ神崎も楽しみにしてるようだし行くしかないな。




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