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「遅い……」

「ごめん、買い忘れた物があってさ。 また引き返してたら遅くなっちまった」

「莉亜が居て買い忘れ?」



日向は神崎を睨んだ。



「すみません麻里、私が悪いのです、テストの成績が良かったから浮かれていました」

「そっか、なら仕方ないね」

「麻里?」

「莉亜頑張ったんだもんね。 凄いやって思ってる」



珍しい…… 日向が神崎を褒めてるなんて。 一方的な神崎に対し少しウザそうにしているのが日向なのに。



「ま…… 麻里〜〜ッ!!」

「わッ」

「とっても嬉しいです! 次も頑張るぞという気持ちが十割増しに増えました!」



神崎は日向に抱き付くと日向の顔がこちら側なのでよく見える。 一瞬でしらけた顔になった。 どうやらそこまでは望んでいないようだ、篠原みたく程々に接しとけばいいのにな。



「麻里のお菓子いっぱい買って来たんです! これとこれとそれと」

「清人あたしの部屋に行こう」

「無視!? な、なぜ? あーん……」



あんなに落ち込んでいたと思ったらこれだもんな。 チラッと神崎に振り返ると神崎もこちらを見ていたのか凄い勢いで目を逸らされた。



「清人、ん……」



ん…… ? ん…… と無表情で言われましても。 



「あ、忘れてた」



日向はベッドから何やらゴソゴソと取り出す。  



「これ…… 渡したかった」

「これは……」



それはゲームのキャラクターのストラップだった。



「えーと?」

「あの人のストラップだけじゃなくてあたしのも付けて…… くれる?」

「ああ、うん。 これでいいか?」

「うん」



正直携帯に色々付けるのは煩わしいんだけど俺にくれるために日向が買ってくれたんなら付けないわけにはいかないしな。



「あたしどれ買えばいいかとか分からなくてそれで良いのかもよくわかんなくて」

「いいや、ありがとな」



そう言うと日向は俺に近付いてきた。 撫でてくれって事なんだよなと思い頭を撫でると喜んでいるようだった。



お、俺はこんな事してていいのか? ますます泥沼に嵌まっていきそうな気がする……



篠原が言っていた事が頭を過ぎる。



『麻里や私からしてみたらそんなに私の事想ってたのね! ってなっちゃうわ』



そして先程出掛けてた時の神崎の言葉……



『でも人を好きになるって事は年齢とか事情などという縛りは些細な事になってしまうのですね。 ダメとわかっているのにその人の事を好きって思うと歯止めが効かなくなるんですね』



という言葉が……



俺はこいつらに恋愛感情なんて抱かない、抱いちゃダメだし俺には先輩が好きという信念めいたものがあった。 なのに日向の今の行為も嬉しいと感じたし篠原との事だってそうだ、神崎の事も変な奴らに絡まれた時真剣に守ってやりたいとも思った、これはもう遅いんじゃないか?



俺の感情はこいつらの事を家族というよりかは異性として好きだと無意識に思ってるんじゃ? だとしたらとっくに泥沼?



「清人手が止まってる」

「うえッ!? あ、ああ、よーしよし!」



動揺していた俺はムツゴロウかってくらい日向の頭を撫でてやった。



「超雑……」

「わ、悪い」



爆発頭にしてしまった。 



お、俺は先輩の事がずっと好きだったんだ、なのにポッと出のこいつらの事を同じくらいに? ありえないだろ。



だけどここで神崎の言葉をまた思い出した。 付き合いの長さより深さだという事を。



俺にとってこいつらとの生活は先輩をずっと想ってきた時間に匹敵するほどなのか!?



日向を見ると爆発頭を手で直していた。 ガキンチョとしてではなく異性として意識をして見るとなんて…… なんて美少女なんだと思う、俺のガキンチョフィルターはこんな感情を押し殺すほど高性能だったのか恐ろしい。



それが下も履かずにデカいパーカー1枚とはけしからんしありえないだろ!



「清人顔赤いよ? 大丈夫? 熱ある?」

「え!? ね、熱? あるかもしんねぇ……」

「寒気は?」

「冷や汗が止まんない気がする」



日向は俺の服の中に手を入れて背中を触った。 つ、冷てぇ……



「ほんとだ。 凄い汗、こっち来て」



日向は俺を自分のベッドに誘導して寝かせた。



「さっきまであたしが寝てたからまだ少し暖かいと思う。 あたしも隣で暖めるから」



はい? 添い寝? 



「や、やめろよ!」

「え?」

「こんな事軽々しくするな!」

「清人?」

「お前わかってんのか? 俺がその気になったらお前ただじゃ済まねぇぞ?」

「さっきから何言ってるの?」

「だから…… こんな事誰かれ構わずにしてるとそのうちッ」



俺が捲し立てて言おうとしたら日向は泣いていた。



「ううッ、ひぐッ…… 誰にでもするはずない、清人にしか、清人だけだもん」



あー、しまった。 言い過ぎた、ていうか俺がテンパってたわtempertemper…………



「ごめん、熱があるせいなのかな? そんなつもりじゃなかったんだ」

「じゃあ…… どんなつもりで言ったの?」

「ひ、日向が……」

「グスッ…… あたしが?」

「なんか凄く…… 可愛く思えて、つい」

「え?」



日向は俺にキスをしていた。 そしてゆっくり唇を離して俺を見るともう一度、今度は深いキスを…… いくらなんでもここまでされたら俺もヤバいと思って日向を退かそうと思ったら日向はスッと離れた。



「ひ、日向?」

「清人真っ赤…… 恥ずかしかった?」

「お前何したか」

「あたしは凄く恥ずかしかった…… でも初めては清人がいいから。 それにやっと、やっと清人があたしの事見てくれた気がする」



なんでいきなり俺はこんな事になってしまったんだ? だけど紅潮した日向の顔を見ていると改めて認識する、めちゃくちゃ美少女だと。 そんな日向に俺は頭が空になりそうだった。



俺はこんな奴らと今まで生活してたのか。 1度外れたフィルターはまた付け直せるのか? 






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