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買い出しが終わって帰ろうと思っていた。 一緒についてきた神崎のテンションも異様にダダ下がりしてしまったし。
「もう帰るんですか?」
「え? スーパーにも寄ったし他になんか行くところあるか?」
「ない…… ですけど」
あれ? この反応やっぱまだどっか行きたいとこでもあんのかな? というよりめちゃくちゃ考えてるような顔をしてるぞ。 言い辛い場所なのか?
「まぁなんか知らねぇけどもう一見先のスーパーにでも行ってみるか?」
「は、はい! 是非ッ」
「そんなスーパーに行きたかったのか?」
「ガソリン代など掛かると思って……」
「なんだそりゃ? 今更だろ、それにそんなん気にしねぇよ」
「すみません。 ま、麻里がですね、私と彩奈の化粧品使っているのでその分買うのを忘れておりました」
「あいつそんな化粧しないだろ?」
「あうぅ…… そ、それでも化粧水や美容液などは毎日お風呂上がりなどに使っているので」
「だったらスーパーじゃなくて薬局じゃないか?」
「………… それもそうですね」
なんか微妙におかしい、おかしいぞ神崎、何がしたいんだ!?
「さっきの薬局に行くか?」
「いえ、お手数お掛けして申し訳ありませんが別のところでお願いします」
うわぁ、なんか今度は急にしらけた感じになってるよ。 俺がつっこんだのがいけなかったのか?
神崎は店に着くまで外の風景を眺めていた。
「んじゃ大したもんもなさそうだし待ってるよ」
「あの…… 一緒に来て下さい」
「え? いいけど」
なんか重い物でも買うつもりか? スーパーでジュースはケースで買っておいたしこれ以上何を?
「じゃあ行きましょう!」
「? ああ」
なんか行くとなったら急に明るくなったな。 こいつって一見クールそうに気取ってるけど真逆な性格してるからなぁ。
「お菓子買いましょう、食材しか買ってなかったので柳瀬さんも選んで下さい」
「お前節約とか言ってなかったか?」
「明日から頑張ります!」
「それってやらない奴が言う言葉だぞ」
「柳瀬さんっぽくていいじゃないですか」
神崎はいつの間にか俺の服の袖を掴んでいた。 それに神崎は自然でやっているのか機嫌が良くなったからかなのか知らんが未だに気付いてない。 つっこんだらまた変な空気になりそうだし……
「あ、カゴ…… ッ!?」
神崎は今頃気付き手をパッと離し、俺をキッと睨んだので知らないフリをした。 こうするのが正解なんだろ多分……
「柳瀬さん食べたいの選んで下さい」
「俺はチョコレートで良いかな」
「本当に甘い物好きですねぇ、しかも板チョコとは…… 何も入ってない方が好みなんですか?」
「ん? まぁな」
「それは失礼しました」
へ? なんで少し怒り気味? あ! そうか、いつぞや貰ったバレンタインデーの時こいつはクッキーにチョコ挟んだ奴作ってたもんな。
「いやでも神崎が作ったのは美味しかったよ」
「そ、それは光栄です」
神崎はその他日向や篠原の好きそうなお菓子をカゴに入れていく。 この3人と生活しているうちになんか3人の構成図みたいなのが見えてきた。
神崎は日向に甘く、日向は篠原によく絡む、喧嘩しそうにはよくなっているが…… そしてその篠原は神崎をおちょくるみたいに回っている。 こんな感じでやっていたのだろう、基本的に3人はなんだかんだで仲良いが。
そのうち2人から告白されちまっていつか公になりみんなの関係をぶち壊す、なんて事にならなきゃいいが。
会計を済ませて店から出る時俺と話しながら店を出ていた神崎が人にぶつかった。
「すみません、私の不注意でした」
「あーん?」
なんだこのDQNっぽいコンビは?
「おやおやおや!? めっちゃ可愛いじゃん!」
「え?」
「うわッ! 激マブじゃん! 俺らとバイク乗らねぇ? ついでに俺にも。 あれの方もここで買ってくからバッチリだぜ!」
「へ? 何? え?」
なんでこんなバカそうな奴らが薬局なんかに来てんだよと思ったらゴムでも買いに来たのかよ? コンビニに行けっての!
「あのーすいません。 俺ら帰るんで遠慮してもらえますか?」
「ああん? は? こいつ君の彼氏?」
「え? うそマジ?」
「か、彼氏では…… 」
「彼氏です。 俺はこいつの彼氏ですけど?」
「え?」
悪いな神崎、こう言った方がこの場は良さそうだと思ったんだ、だから話を合わせてくれ。
「嘘だろー? だってめっちゃ動揺してるもん」
「こ、この方は私の彼氏です!!」
「うはぁー、可愛い! このウブな感じ。 付き合って間もなさそうだから俺らとも遊んでみない?」
「え? ちょっ…… 柳瀬さん!」
神崎は腕を掴まれ連れて行かれそうになった。 やっぱこいつらDQNだわ。
「離してくれませんか?」
「ああ!?」
「警察呼びますよ?」
「「げ……」」
神崎を掴んだ手がパッと離したのを見て俺が神崎の腕を掴んで足早に車に戻りエンジンを掛けて退散した。
「はぁ、まさかあんなのに絡まれるなんてなぁ。 怖かったろ?」
結構ショックだったのか下を向いてコクコクと頷いた。 そりゃ神崎ってこういうの慣れてないだろうしなぁ。
タバコが吸いたくなったのでコンビニに寄る事にした。 神崎もそのうちに落ち着くだろうし。
車から降りてコンビニの灰皿の前でタバコを吸っていると神崎も降りてきた。 トイレにでも行ってくるのかなぁと思ったら俺の隣に来てしまう。 なんで?
神崎が隣に居るのでタバコを消した。 そして戻ろうとした時俺の服をギュッと両腕で掴んで下を向いてる神崎の姿。
「大丈夫か?」
「…………」
「よっぽど怖かったんだな。 でももう大丈夫だからさ」
そう言うと俺の肩にそっと顔を埋めた。
「大丈夫、大丈夫だから」
落ち着かせるために頭を撫でると少し反応した。 嫌がってはないよな? というかまたこんな目立つ場所で俺らは何してんだ……
少しすると神崎は無言で離れ車に戻っていった。 俺はすぐに戻っていくのはちょっと気が引けたのでもう一本タバコを吸った。
車に戻り神崎はまだ落ち込んでいるのかなと思っていると……
「柳瀬さん……」
「うん?」
「ごめんなさい」
「何が?」
「助けてもらったのに私何も言えなくて」
「いいよ、神崎は怖かったろうし」
「怖かったです、でもそれよりも嬉しいのと恥ずかしいので」
「え?」
「…… 私の好きな人もそんな人なんです」
「そんな人? 俺みたいな人って事?」
それはマズくないか? 俺みたいな奴だと苦労しそうだ。
「俺のような奴はやめといた方がいいって言ったろ? 自分で言ってて悲しくなってくるけど」
「私はそんな事………… 私の、私のす、好きな」
その時俺の携帯が鳴ったので見ると日向からだった。
「…… 麻里ですか?」
「ああ」
「なら出て下さい、私達が遅いので心配してると思います」
出るとやはり遅いという事で電話を入れたようだ。
「神崎の言う通りだったわ、じゃあ帰るか」
「…… はい」
だが帰り道また神崎は静かになってしまった。




