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少し時間が過ぎてテストが終わり結果が発表された時だった。



神崎が珍しくテンション高め? なのだ。 きっと順位が上がったのだろう。



「柳瀬さん!」



ノックもなしにバンとドアを開け結果の用紙を持っていた。 神崎は嬉々として俺にその用紙を見せる。



「凄いじゃないか5位になってるじゃん。 相変わらずテスト前の勉強は頑張ってた甲斐があったんじゃないか?」

「はい! 気負い過ぎずに取り組んだのが功を奏したのでしょうか?」



本当に嬉しそうに神崎はクルッと一回転して喜んでいた。 なんかこんなに嬉しそうにしている神崎は初めて見るな。



「なぁに? うるさいんだけど?」

「ああッ、ごめんなさい!」

「良かったね、順位が上がって。 まだ5位だけど」

「つ、次はもっと上を目指して頑張ります!」

「清っち〜、これじゃあまたこの子勉強漬けになりそうじゃない?」

「まぁ大丈夫じゃないかな、オンオフ忘れなければ」

「彩奈、今日の晩ご飯私が代わりに作っちゃいます!」

「え、マジ? やったぁ」



ピューンと俺の部屋から軽い足取りで神崎は出て行った。 



「単純だなぁ」

「本人はあんなに喜んでるしいいんじゃないか?」

「清っちが入れ知恵したお陰だもんね」

「入れ知恵ってほどじゃないさ、追い詰められてんなら逆に開き直っちまえ程度だし」

「真面目バカな莉亜には効果あったじゃん」

「そういうのはお前が言ってやれよ?」

「ええ〜? 私が言っても嫌味になるだけだよ、それにそんな莉亜見てるのもある意味楽しかったし」

「お前…… 家族みたいに思ってる莉亜が苦しんでるところ見ていて楽しいって」

「あれはあの子が勝手にそう思ってるだけ、いつかはそんなのありえないって打ちのめされるくらいなら早めに気付かせてあげた方が優しいじゃない?」



篠原…… こいつの楽しいは人を巻き込んで困らせるタイプの楽しいだからなぁ。 そんな時俺に見せた用紙をそのまま神崎は置いて行ってるのに気付いた俺はまた用紙に目を通す。



余程嬉しいんだろうなとさっきの神崎を思い返すとフッと笑みが溢れた。 その時篠原から溜め息が聞こえた。



「ねぇ清っち私はね、清っちが来てくれて本当良かったよ。 麻里が清っちの事好きになって莉亜も清っちの影響受けてさ。 迷惑ばっかり掛ける私の事もよく助けてくれたよね?」

「え? いきなりなんだ?」

「3人で居た時もまぁまぁ楽しかったけど女の子だけ住んでる所に男が1人入るってなったら絶対もっと楽しくなりそうって思ったよ」



篠原はクスッと笑ってベッドに座っていた俺の上に跨る。 だけど篠原の目を見ているとなぜか動けないでいた。



「例え莉亜と麻里が私の事を家族とかそういう風に思ってたとしてもあの子達に必要以上に優しくしようとか思わない。 前にも増してね」

「そりゃ3人居れば考えも違うしな」

「本当はもうわかってるでしょ? 私の言いたい事」



だから動けなかったんだ、ニヤついて小馬鹿にするように話している篠原でも目だけは真剣だったから。 



「私が清っちの事好きって事」

「…………」



はい…… はい!? はいはいはい! なんで俺は告白されてるんでしょう? 日向からも好きと言われ肝心の先輩には想いも伝えていないこの状況で。



「お前ってよく人を揶揄ってるし今回もそうだろ?」

「そう見える? 現実逃避してるでしょ?」



ダメだ、日向でさえ手に余るというのに篠原だと?



「お前知ってるだろ? 日向に好きって言われても俺は先輩の事が好きだから」

「それで? それなんの意味もないよ、それよりなんで私が今清っちにこんな事言ってるかわかる?」

「いきなりだなとは思ってたけどなんでだ?」

「さぁ、なんでだろうね?」



言わないのかよ! どこまで本気なんだよこいつは? 全部嘘でしたとか言ってまた締め括る気じゃないだろうな?



「疑ってるね? まぁ今までの私を見てればそっかぁ。 でもそんな私に本気にさせてみたらもっと面白そう」

「面白そうって……」

「どこまで行っても私はそうだから軽く聞こえると思うけど好きって気持ちは嘘じゃないよ、証拠が見たい?」

「い、いや! やめとく、俺はそんなにメンタル強くない」

「どうかなぁ? こんな可愛い子達に囲まれて今の今まで間違い犯してない時点で十分だよ。 まぁまた私が他に好きな人が居る人を好きになっちゃったなんてお笑いだけどね」



その時ドアに誰かが手を掛ける音がした。 ヤバい! と思い篠原を退けようとして押すと篠原は力を入れてなかったのか後ろの壁にドカッと当たる、違う意味でヤバい……



そしてその光景を見たのは日向だった。 俺が突き飛ばしたところ見てたか?



「清人…… ?」

「こ、これは…… 」



どう言ったって俺は女の子を突き飛ばしてしまった事実は変わりない。 何も知らない奴から見たら今までだってここにお触りさんがいますとお巡りさんに通報されててもおかしくない。



というか日向もこの俺に失望しただろう、まぁこれまでがおかしかったからな、身の丈に合わないのにこいつらみたいな奴らに好きって言われた事が…… という考えが頭を巡っていた。



「大丈夫? 清人」



あれ? 日向が心配そうに俺を見つめる。 いやいや逆だろ普通は。



「え? 篠原は?」

「どうせ彩が変な事して清人を困らせたんでしょ?」

「ちぇ〜ッ! ちょっとは私の事心配しても良いのに。 まぁその通りだけどさ」

「清人、莉亜は凄いと思うけどあたしもちょっと順位上がった」

「へ? お、おう。 そうか、凄いな」



日向はウズウズしながら頭を近付けて来た。 撫でて欲しいのだろうか? と思い撫でるとグリグリと押し付けてくるので正解のようだ。



「清っち、私も順位少し上がったの」

「お前はやろうと思えばもっとやれるだろ……」

「あら、知ってるの?」



そしてなんでもなかったかのように篠原は俺の部屋を出て行く時、篠原をチラッと見ると篠原もこっちを見ていて意味深に笑った。


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