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「さあどうぞ!」
「気合い入れ過ぎじゃない? 道理で遅いわけだ」
「あはは…… 確かにちょっと作り過ぎちゃいました、残ったら明日の朝も食べればいいので問題ありません!」
グラタンやパエリア、ハンバーグ…… 確かに作り過ぎだ。 はぁ、だけど先ほどの篠原のせいでこの料理より篠原に視線が行ってしまう。
チラチラと見ているせいか篠原に気付かれるとウインクされる、どういうつもりなんだ? それだけで特に何もしてこない、いつもだったら何かしら言ったりするんだけど。
「まぁそうだね。 良かったじゃん麻里、明日は朝ご飯作らなくても良さそうだし」
「そこで良かったというのはやめてもらいたいです、結構頑張って作ったので全部食べてもらってもよろしいですよ。 さぁ、柳瀬さんも遠慮せずにどうぞ!」
「ははッ、今更遠慮する気はないけどな……」
パクリと一口食べる。 なんだろう? 機嫌が良いせいか神崎はにこやかに俺を見て感想を求めているような顔だ。 それどころじゃないってのに。
「お、美味しいな神崎」
「はい! そう言ってもらえてとても嬉しいです」
「麻里も彩奈もどんどん食べて下さい」
「莉亜のテンション学校の時から気持ち悪い」
「ガーンッ! 酷いです麻里」
「まぁまぁ、ある意味毒気が抜けて賢者モードみたいな事になってるのよ莉亜は」
「賢者モードって何? 清人」
そ、それを俺に聞くか!? 本当の意味言ったらこの場は凍り付くだろう。
「ゴホン! 今の莉亜みたいな事を言うんだ」
「へぇ、あたしも賢者モードになったら嬉しい?」
なんて事言うんだ日向…… それはお前には相応しくないぞ!
「小島君に聞いてみなよ? 詳しいよきっと」
「そうなんだ。 うん」
おい! 知らないからってなんて恥ずかしい事聞かせようとしてんだ篠原は。 後でやめとけって日向に言おう。
「ふむふむ、私も後で調べてみましょう」
あ、絶対後で調べて後悔するパターンだなこれ。
「ふー! お腹いっぱい」
「あたしも」
「やっぱり多過ぎましたね、でも柳瀬さんはいっぱい食べてくれましたね!」
うーん、この神崎いつもと違うから慣れないな…… 悪くはないけど。
夕飯を食べた後日向が風呂に入った頃篠原が俺の部屋に訪れた。 なんとなく来る気はしてた。
「待ってた?」
「待っちゃいねぇよ」
「あーん、いけずぅ」
「それで? 何か用かよ?」
「えー? 告られた相手にそんな態度取っちゃう?」
「お前は胡散臭いんだよ? 何企んでんだ?」
「企む? ふふッ、そうだなぁ。 企むと言えば麻里や弥生さんから清っちをとっちゃおうっていう企みならあるかな。 でもそれは好きな相手を自分のものにするための当たり前の行為だから企みって言うのは違うよね? てことで何もありませーん!」
「はぁ、例えそうだったとしても俺はお前をそんな風に見てないってわかるよな?」
そう言うと篠原はテーブルに置いてあった車のキーを取り俺の手に握らせた。
「は?」
「ドライブ行こう?」
「なんで?」
「麻里はよく連れてくでしょ? 私も清っちとドライブしたくなっちゃった」
「行くかよ」
「行かないなら面倒くさい事になっちゃうけどいいのかなぁ?」
こいつ…… 告った相手を脅す気か? ほんと何考えてるのかいまいち読めない奴だな。 そうまで言われたら仕方ない、今の状況でこれ以上面倒なのはごめん被るので篠原とドライブに行く事にした。 こいつの思う壺だ。
車を走らせ篠原と2人きりでドライブをする。 妙に落ち着かないな。
「清っち喉渇いた」
「はいはい」
コンビニに寄りジュースを買う。 外に出るとバイクに乗った奴らが篠原に話し掛けてきた。
知り合いか? 相変わらず篠原の知り合いはガラが悪いなぁ。
「彩奈ー! 今暇か?」
「見てわからない? 暇じゃないよ」
「んだよぉ、最近付き合い悪いぞ」
「ごめんねぇ、彼に男遊びやめろって言われてるからさ」
「彼ってそいつ?」
「んー、この人は私の親戚のおにぃ!」
篠原はそう言って俺の腕に抱きついて見せ付けた。 親戚のお兄ちゃん相手にこんな事するなよ……
車に戻りしばらく走っていると篠原は口を開いた。
「さっきのは同級生ね」
「お前ってああいうのと仲良いよな」
「そりゃあ上手く行けば私とヤれるかもって思ってるお猿さんだからね。 1番可愛い私とヤれたら箔が付いて自信も付くし」
「すげぇ自信だな」
「だって私だし」
ニカッと笑って俺の肩に頭を置いた。
「でも清っちは私の事迷惑掛ける面倒な奴としか思ってないよねぇ圧倒的な美少女の私に」
「自分で言うなよな」
「前に言ったよね? 私が好きな人にフラれた事」
「ああ、そんな事あったな」
「あれ嘘じゃないよ」
「そうだろうな」
「ありゃ? わかってた?」
「そりゃ嘘には見えなかったし」
「私が弱ってた頃に清っちに優しくされたからかなぁ」
篠原は持っていたペットボトルを見つめてそう言った。
「ううん、そんなのがなくてもそのうち好きになってたかもね。 モテモテだね清っち!」
「はぁ……」
「溜め息つくな! 清っちって女子高生キラーだったりして」
「いろいろ危ないなそれ」
前に先輩達と来たパーキングで一旦車を停めて帰ろうとすると篠原に止められた。
「ねえ、私と気持ちいい事してみたくない? 清っちならいいよ、麻里には出来ない事してあげる」
篠原はシートベルトを外し俺の席に跨り座席のシートを降ろす。
「はぁ!? こんな所で? バカかよ、俺はそんなのする気ないんだって!」
篠原の肩を押して俺に近付くのを制する。
「私達と居て我慢するのも辛いでしょ? だったら私を使っていいんだよ?」
「だからそんな風に見てないって」
「んふふッ、じゃあ私が我慢出来なかったって事で」
「篠原!」
篠原の両肩を掴んで俺は起き上がった。
「お前が俺を好きだろうと俺をお前の知り合いみたいな奴らと一緒にするなよ? 俺は自分の好きでもない奴とそんな事したって全然嬉しくない」
「清っち…… うん、だから私は清っちが好き。 そんな清っちだもん、私はいいんだよ?」
「よくない、例えお前がよくたってな。 好きなら俺は大切にしたい、こんな勢いとかみたいな感じじゃなくてさ」
「…… 私がお預けくらってるみたい。 でもキュンとした、清っちだから。 わかったよ、今日は帰ろう」
帰ると日向がムスッとしていて宥めるためにまたドライブに行く羽目になった。




