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「清人ちょっといい?」
「なんだ?」
「思い出したの清人が大人だって事」
思い出したってなんだ!? 俺は日向から大人だって思われてなかったのか? いくら威厳がないとはいえそこまで俺は……
「何落ち込んでるの?」
「あ、いやぁ俺ってそんなにガキっぽいか?」
「え? ああ、ううん。 そうじゃなくて」
日向は俺の手を取って自分の部屋に俺を連れて来た。
「えっとね、そういう意味じゃないの。 清人はいろいろわかるでしょ? 一応大人だし」
「ん??」
「座って」
ま、まさか!? 性に対しての事か? いやまぁそれは人並みにわかるっちゃわかるけどダメだ、日向相手にそれはダメだ!
「ひ、日向落ち着け! 何も今じゃなくていいだろ、それに俺に教えてもらわなくても……」
「あたし清人がいい。 清人じゃなくちゃ嫌」
そんな縋るような目で見られても……
ズイズイとにじり寄る日向に後退りしていると股の間の床をバンと叩かれてビクッとする。
なんの前触れもなくいきなり過ぎるだろ…… いや、前触りされたら逃げるから敢えてか? 日向の父ちゃん怒ったら怖そうなんだよなぁ寡黙っていうかなんていうか。 なんて事は今はどうでもいい!
「あたしとするの嫌?」
「いいとか嫌とかそういう問題じゃなくて」
「じゃあ何…… 」
シュンとしてしまった。 だけどこれはデリケートな問題だしこんな事日向に言われたなんて神崎や篠原には言えないし。
「そんな早まる事でもないだろ?」
「そうだけど…… だって」
「それに両者合意の上でそういう事はするもんだ、俺と日向の間にはそれだけじゃないけど」
「そんなに条件があるの?」
あー、いやこじ付けみたいな所もあるけど俺に最後まで責任取れるのかと……
「…… わかった、もう1人でする」
「は!? 1人? 日向って1人でしてるの?」
「たまにだけど」
ついつい聞いてしまった、失礼だけど篠原ならなんとなく想像出来るがたまにでも日向が1人で自分を慰めているとは……
「なんか日向の部屋に入り辛くなったな」
「え? なんで?」
「あ…… だって邪魔しちゃ悪いじゃなくてそういう場面に出くわしたらお互い気不味くなるだろ?」
「?? あたしは全然平気」
ま、マジかぁー! 日向って変なとこオープンなとこあるけど1人でしてるのを見られるのもOKなのか…… なるほど見掛けによらないな。
「日向が平気でも俺が良くないわ、つーか神崎や篠原はよくそんなとこにうっかり入ったとか今までなかったな」
「あるけど?」
やっぱあるのかよ…… 神崎はすげぇ騒いだだろうな、篠原はなんか喜びそうだけど。
「そ、そっか。 なんか聞いちゃいけないような事まで聞いたみたいで悪かったな」
「いいよ別に。 気にしないし」
流石だ日向、そりゃあ大抵の事は気にしないわけだ。 だけどもっと自分を大切にしろよ? お前可愛いんだし。
「でも清人にそこまで拒否られるなんて思わなかった……」
「そこは…… もう少し日向が大人になればわかるよ」
「大人になったらなんていつの話してるの? みんなはもっと早いうちからしてる。 あたしなんか遅い方。 やる気がなかなか出なかったからだけど」
まぁ高校生にもなればそういう事も体験する奴もチラホラいるだろうが。 学生同士でやってくれよって日向に言っても無駄か。
「日向は日向のペースでいいんだよ、早ければいいってもんじゃない」
「だからあたしは今したいって言ってるのに清人がやりたがらないんだもん」
「俺だってそんな事頼まれて嬉しくないわけないじゃねぇか? だけど日向の親だって心配するぞ」
「なんで? 寧ろ喜ぶと思うけど」
「喜ぶのかよ!?」
日向の親って日向と同じであまりそういうのは気にしないタイプなのか? いや、でも俺は先輩の事が好きなんだし……
「でもダメだ! もう一度よく考えろ」
「…… 1人でするもんバカ」
いや、1人でするって宣言されても困るけどな。
見てはいけない事が始まる前に俺は日向の部屋からそそくさと出て行こうとした時日向が何やらガサゴソ漁りだす。 まさか道具を使うのか!?
筆記用具に教科書………… え?
「もしかして日向が一緒にしたいっていうのは勉強?」
「そうだよ?」
な、なんてこった…… 俺はエロガキか!? そうだった、テストが近いって神崎も言ってたわ。
「やっぱ教えてやるよ」
「? なんで急に? 渋ってたのに」
「いや…… 俺も考え直したんだ、ごめん日向」
「え? 改まってどうしたの?」
俺だけ頭の中ピンク色になって変な勘違いをしてしまってごめんなさいという意味なんて言えるはずがない。
「そ、それより勉強するんだろ? 俺がわかるとこなら教えてやるから」
「うん」




